義理の弟を溺愛したら結婚を迫られています!〜嬉しいけど他の人と幸せになってほしい姉心〜

ちろこ

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4.愛しのワイアットと共に

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「さぁ、ワイアット!あなたの好きな女性を選びなさいっ!」
「またですか…姉様」
今年中等部へと上がったワイアットは私の差し出す6枚の写真を見てため息を吐いた。
「端から端まで私には見劣るけれど、素敵な女性を探してきたわ!!最有力候補はこのご令嬢よ!」
私はにこりと笑みを深くしてワイアットの目の前にその写真を差し出した。
「どう?ワイアット。とうとう好きな女性が現れたんじゃなくって?」
写真をぺらぺらと揺らしながらそう問いかけるも、ワイアットは昔の様な笑みを浮かべてくれることはなく、また深いため息を吐いた。
「いつになったら姉様はコレをお辞めになるのですか」
「一生やめないわ」
私の言葉にワイアットは顔を歪める。
「何故これほど時間が経ったのに、貴女は未だに変わらないままなんだ」
「あのね、ワイアット、私は貴方のためを思ってしているの。貴方に幸せになって欲しくて──」
私はワイアットに手を伸ばした。
けれどそれがワイアットに触れず、私の手はワイアットによって触れることが叶わなかった。
「ワイアット…、どうしたの?最近の貴方は…、…ワイアット、姉様は貴方の幸せだけを思っているわ」
「違う…僕の幸せは貴方の力じゃ叶えられない」
そう言われ、私は大きく目を見開いた。
「私に叶えられない?いいえ、叶えられるわ。さぁ、言ってごらんなさい。貴方のためなら私は」
「違うんだ、姉様、もう辞めてください。貴方にこうされるたび僕は苦しくて仕方がないのです」
涙ながらにそう言われ私は戸惑いを見せた。
「ワイアット、貴方もしかして好意を持っている方がいるの?だからこれほど私が勧める方達を嫌がるの?」
「…貴女にはやはり伝わってしまうのでしょうか。…えぇ、姉様。…僕には好きな方がいます、だからお願いいたします。僕の恋を見守ってはくれませんか?」
私はその言葉にまた戸惑った。
「見守る?」
「はい。姉様が本当に僕の幸せを考えて下さるなら、僕の手伝いをするのではなく、ただ…見守っていて欲しいのです」
「どうして?私が手を貸したなら、婚約者の座を射止めることができるのに」
「言ったでしょう。これは貴女の力では叶えられないと。」
「なら父様に頼みなさい、父様の権力があればどんなご令嬢も断れないわ」
「僕は父様に頼むつもりは一切ありません。自身の力だけで彼女を振り向かせてみせます」
そう言いながら力強い目で私を見るワイアットについ体を固まらせる。
「…あぁ、ワイアット。そんな顔をしないで」
私は泣きそうになる顔を歪め、ワイアットを強く抱きしめた。
「…お願い、昔の様に私と共にいて」
私の言葉にワイアットはピクリと反応し、私よりも更に強く抱きしめ返した。
「僕は姉様と共にいます」
胸に顔を埋めるワイアットは昔のようでつい小さな粒が目からこぼれてしまう。
「愛しているわ、ワイアット」
(あぁ、私のワイアット。
いつか貴方が私から離れてしまうまでこうして強く抱きしめさせて。昔の様にこうしていつまでも…)
そう心の中でワイアットへ言葉を紡ぎながら、与えられる温もりに身を委ねた。
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