上 下
12 / 15

12

しおりを挟む
「ジュリー・ローゼ!」
俺が教室の扉を開けるとマリー・アルゼット令嬢の席に座っている覆面に話しかけた。
「………」
「いつまで無視しているつもりだ。」
俺は思っていたより低い声を出していた。
「………わ、、わわわわ私ジュリー・ローゼではございませんわよ…!?」
「ジュリー・ローゼか」
俺はふぅ…と息を吐くと少ししゃがんで覆面と目を合わした。
「いつまで逃げ回るつもりだ?」
「べ、別に逃げてなど…」
「逃げていないならどういうつもりだ?」
「そ、その…」
珍しくジュリー・ローゼが本当に焦っている…。
「それと、そろそろその覆面を取ったらどうだ?」
そう言い俺は覆面を手で握り上に上げた。
「だ、だめっ!」
ジュリー・ローゼの顔はりんごのように真っ赤になっていた。
「な、なんだ?!熱か!?!」
「…も、もう!!!アラン様って本当にあざといですわ!!」
「あ、、あざとい?だと??」
「だ、だって普段なら私に目線を合わせるなど…!あざといですわ!!」
俺は何故か恥ずかしくなって急いで立ち上がる。
「そ…そんなことより何故俺から逃げた…!」
そうだ!今はこのことが重要だ。
「本当に逃げてたわけではありませんわ……」
「いや…あれは逃げ回っていただろう。マリー・アルゼット令嬢にも手伝ってもらっていたし…」
「マリーの名前を覚えましたの!?!!な、何故こんなに早く!!!」
「ジュリー・ローゼの友人は一応覚えている。」
別に何かの役に立つってわけでもないがな。
「そ、、、、、、そんな………す………」
「す?」
俺が首を傾げるとジュリー・ローゼはより顔を赤らめる。
「も、、もう!やめて下さいな!顔が暑すぎですわ!!」
そう言うと自分の顔をぱたぱたと手で扇ぐ。
「そ、それとそんな純粋そうなキョトンとした顔をしないで下さい!いや!やっぱりやめないで!」
久しぶりのジュリー・ローゼに俺はつい頬を緩めた。
「……ぇ」
「ははっ…」
「わ、、笑っ…………!!きゃ…キャパオーバーですわ……」

そう言うとジュリー・ローゼが後ろに倒れた。
「危ないだろう」
俺がジュリー・ローゼの体を支えると彼女の鼻から鼻血が垂れていた。
「や、、、やっぱり体調不良だったのか…!」
俺はポケットに入れていたティッシュを出す。
「これを鼻に詰めろ」
そう言うと彼女は嫌そうな顔をする。
「早くしろ。これは命令だ」
「………わ、分かりましたわ…」
渋々彼女は鼻にティッシュを詰める。
「ま、まさか好きな方にこんな…こんな姿を……。けれどアラン様もひどいですわ…!こんなに素敵な姿を…いけないわ…また鼻血が…」
俺は無言でティッシュを渡した。
「…ん?これはなんですの?」
ティッシュを持ったジュリー・ローゼが床に落ちていた袋を見る。
「…あ」
俺はポケットに手を突っ込んで確認する。


……最悪だ……

「?誰かの落とし物でしょうか?」
「……違う」
「え?」
「君へのプレゼントだ…」
彼女の息の飲む音が聞こえる。
「あ、アラン様から…」
「俺から…」
「私への…………」
「ジュリー・ローゼへの…」
「…プレゼント!?!!!!」
「そうだ…」
俺は赤くなる顔を手で隠した。
彼女は袋を開けると嬉しそうに笑った。
「よ…喜んでもらえたみたいでよかった」
「ほ………本当に嬉しいですわ……!」
そう言うと彼女は目から歓喜の涙を流した。
「本当に本当に!!!嬉しいですわぁあああ!!!」
そう言うとジュリー・ローゼは俺に抱きついた。
「お、おい!」
「本当にありがとうございます!アラン様…!」
俺はつい手を…彼女の背中に…


「待て」
「え?」
「忘れるところだったが貴様…………何故俺から逃げ回っていた?」
「ふふ…アラン様ったらーーー!今は抱き締める雰囲気でしょうーーーー?」
「何故逃げ回っていた?」
「…それは……その」
「何故逃げ回っていた?」
「引いてみようかと…」
「なんだって?」
「いつも押してばかりだったので引いてみたんです!!」
「そ、そんなくだらないことのために!?!」
「くだらない!?!くだらなくなんかありませんわ!!きちんとアラン様の将来の花嫁になりたいからです!!」
「くだらないだろう!!未来の俺の為に今の俺を無視するなど!」
「だっていつも押してばかりで…!意識して欲しかったんですもの!私だってしんどかったんですのよ!!!アラン様のこと無視するなんて!!!そんなの!!!」
「なっ!」
「それにリリー様と何をおしゃべりされてたの!?!」
「そ、そんなとこも見てたのか!」
「だって!浮気されてたら困りますもの!!!」
「浮気!?!しないし!まず婚約していない!」
「しますの!私と!」
「しない!」
「します!!」
そのあとは俺とジュリー・ローゼの言い合いになりその日は終わった。
しおりを挟む

処理中です...