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1巻
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しおりを挟む第一章 選ばれし者たち
1.最悪のスキル
「ユーリ、忘れ物はない? 神父様の言うことを聞いて、ちゃんと行儀良くするのよ。神様に失礼がないようにね」
「分かってるって母さん! それじゃ行ってくるよ」
僕、ユーリ・ヒロナダは両親譲りである焦げ茶色の髪を整えたあと、母さんに出掛けの挨拶をして、本日の目的地――街の教会へと向かう。
今日は教会で『神授の儀』を行う日だ。この世界イストリアでは、十五歳になった者は通過儀礼としてこの儀式を受け、神様からの恩寵を賜る。
まあ平たく言うと、神様の力の一部――いわゆるスキルを授かれるのだ。
もちろん僕の住む国エーアストでも、ほかの国と同様この儀式に参加する。
スキルには個人差があって、なんてことない通常スキルを授かる人もいれば、非常に有用な特殊スキルを授かる人もいる。
どのスキルを授かれるかについては、ほとんど運だ。いや、生まれついての才能が関係するのかな?
とにかく、誰もが優秀なスキルを授かることを祈ってこの儀式に臨んでいる。
母さんは今朝、腕によりをかけて朝食を作ってくれた。
父さんも母さんも授かったのは平凡なスキルだったから、息子である僕には優秀なスキルが発現してほしいと願っているんだろう。
その期待に応えてあげられればいいんだけどね。しかし、こればっかりは僕の努力でどうにかできるものではないからなあ……
神様、どうかいいスキルをお願いします。
教会に着くと、すでにかなりの数の子供たちが集まっていた。
『神授の儀』には今年十五歳を迎えた子供たちがいっせいに参加する。当然、教会の中は見知った顔でいっぱいだ。
人生において一番重要とも言えるほどの儀式なのだが、みんな緊張感はなく、あちこちでたわいもない日常会話が交わされている。その賑やかさは、まるで学校生活の延長のようだ。
しかし、礼拝堂に神父様が現れ、開式の言葉が始まると、喧噪は収まり厳かな雰囲気へと変わった。
「それでは『神授の儀』を始めます。最初の信徒……ダドランは祭壇の前へ」
僕の家の近所に住んでいるダドランが呼ばれ、まず最初に儀式を受けることになった。
神父様に促されてダドランが祭壇に上がると、天井から光が降りてきて、ダドランを包む。
「信徒ダドランに神の祝福を」
神父様がそう告げると、ダドランの身体が一瞬明るく光り、そのあと光の粒子がパラパラと周りに散った。
これで儀式は終了。ダドランはもう何かしらのスキルを授かっているはず。
授かるスキルは多種多様だけど、基本的には、通常の訓練では習得困難なものであることが多い。
たとえば、『腕力』や『剣術』などのスキルは、日々の鍛錬によって自力で習得できるけど、『魔眼』や『未来予知』などは、そう簡単には覚えられない。
もちろん本人の努力で習得できることもあるけど、そういうレアスキルは神様から授かることがほとんどだ。
そのほか、ごく稀ではあるけれど『疾き剣闘士』とか『魔道覚醒者』なんていう、『称号』と呼ばれるものを授かる人もいるらしい。
これはスキルよりも遥かに希少で、称号を授かれば簡単にその道の一流になれる。たとえば『魔道覚醒者』は、他人よりも圧倒的に速く魔法を習得することができ、修業していく中でレアなスキルも覚えられるのだ。
ちなみに、スキルや称号にはランクが存在する。F~SSSまであって、SSSランクのものを授かることはまずない。エーアストでは十年に一人いるかいないかというレベルだ。
ただ、スキルはレベルを上げることによって上位のスキルに進化したりするらしいので、最初は低ランクだったのに最終的にSSSランクに到達することはある。
そこまで上げるのは、並大抵の努力や才能では無理だけどね。
この儀式で強力なスキルを授かれば、その後は悠々自適に暮らせるだろう。だが、ハズレを引いてしまうと、厳しい人生が待っている。
平凡な『料理』というスキルを授かる人も珍しくないけど、これがまた馬鹿にしたものでもなく、一流の料理人になるには必須であるため、決して評価は低くない。
自力で『料理』スキルを習得するのは思いのほか大変なこともあり、このスキルを授かった人は一生食いっぱぐれないのだ。
本当に酷いスキルはそんなものではない。最低のFランクスキルともなると、なんの役にも立たないものばかりとなる。
噂では『早起き』とか『木登り』とか『大食い』なんてのもあるらしいけど、そんなものを授かったらどうすればいいというのか。
まあそれはそれで活躍する場面があるのかもしれないが……
とにかくいろんなスキルはあるけど、基本的には授かったスキルに見合った職に就く人が多いようだ。
そうこうするうちに、儀式はスムーズに執り行われていく。
「信徒リノに神の祝福を」
薄桃色の髪をした少女リノが祭壇に立ち、神様からスキルを授かった。
リノは身長が百五十五センチくらいで、細身の割にはなかなかスタイルが良く、同級生の間でも評判の美少女だ。
彼女は何故か昔から僕と仲良くしてくれている。まあ、ずっと同じ学校に通っているし、一応僕たちの関係は幼馴染みということになるのかな?
儀式を終えたあと、サラリとしたセミロングの髪をなびかせながら、リノは笑顔で僕のもとに駆け寄ってきた。
「私、凄いスキルを授かっちゃった!」
「え? どんなのだい?」
「『魔力上昇』だって!」
リノが僕の耳元に近付き、授かったスキルを教えてくれた。
『魔力上昇』はBランクのスキルで、魔法の威力が高まるというかなりの優れものだ。スキルのレベルを上げていくと、魔法の威力が数倍にもなる。
基本的には、授かったスキルについては本人しか分からず、内緒にする人も多い。場合によっては、酷い差別を受ける可能性もあるからだ。
また、スキルはその人の奥の手になることもあるので、安易に明かすのは得策とは言えない。
中にはリノのように、いいスキルを授かるとそれほど気にしないでバラしちゃう人もいるけどね。
「凄いねリノ! じゃあ将来は魔道士だね」
「うーん神官と迷っちゃうけど、『魔力上昇』を活かすなら、魔道士のほうがいいのかしら? ユーリはどっちがいい?」
「僕はどっちでもいいと思うけど。リノがなりたい職業に就けばいいんじゃないかな」
「分かった! 冒険者になったら一緒にパーティーを組もうね。約束だよ!」
この世界には冒険者という人々が存在する。
その名の通り冒険を生業にする人たちで、依頼を受けて魔物を討伐したり、ダンジョンを攻略したりして生計を立てるのだ。リノみたいに戦闘系のスキルを授かったら、冒険者になるのが一般的だ。
僕は今のところ冒険者の道に進むかどうかも未定なので、その約束をするのはちょっとためらうけど、まあリノとパーティーを組むのも悪くないかな。
ちなみに、魔道士や神官とは職業の名称である。どちらも魔法を扱うが、魔道士は攻撃主体、神官はサポート主体だ。『魔力上昇』を積極的に活かすなら、攻撃主体の魔道士のほうがいいだろう。
『魔力上昇』のスキルを持つ魔道士なんて引く手数多だから、仮に僕とパーティーを組まなくてもリノの将来は安泰だ。
僕もリノに負けず、いいスキルを授かりたいところだ。最低でもCランクくらいは欲しいかな。
Cランク以上のスキルを授かれれば、その道では生涯苦労しないことが約束される。
Dランク以下だと、多少厳しい現実が待っているかも。努力次第でなんとかなるけど、それでも他人よりは困難な道を歩むことになる。
万が一Fランクだったら……生きていくだけでも大変かもしれない。幸いFランクを授かる人は、一万人に一人とかそういうレベルらしいけどね。
まあでも、僕の両親はなんの変哲もない平凡なスキルを授かったけど、今まで幸せに暮らしてきた。結局のところ、どう生きるかだ。
「次、信徒ゴーグ……どうしたのですか? ゴーグよ、祭壇の前へ……いないのですか?」
次に儀式を受ける信徒が来ないので、神父様が困っていた。
集まっている子供たちを見回しながら、どうして出てこないのか、いったいどの子がゴーグなのか探している。
ゴーグ……そういえばまだ見かけていなかったな。
神父様とて、さすがに子供全員の顔を把握しているわけではないから、知らなくても無理はない。だが、僕らの同世代の中でゴーグを知らないヤツはいない。
アイツめ、ここでも問題を起こす気じゃないだろうな……
ちょうどそのとき、入り口の扉を開けて、十五歳とは思えないような大柄な黒い短髪の少年――ゴーグが教会の中に入ってきた。
「おう、もう始まってたか。まったくいい迷惑だぜ。こんな朝早くから儀式をするなんてよ。とても起きられねーよ」
しんと静かな礼拝堂内に、ゴーグの野太い声が響き渡る。それと同時に、教会にいる子供たちの目がいっせいに彼を捉え、少し怯えた表情になった。
そう、みんなゴーグを怖がっているのだ。
僕らの中でも群を抜いて乱暴な……いや、凶暴なゴーグほどのヤツは、世界にもそうはいないんじゃないかと思っている。
とにかく野蛮でわがままで、そしてめちゃくちゃケンカが強い!
十五歳にしてゴーグの身長は百九十センチもあり、筋骨隆々の身体は、鍛え抜かれた冒険者たちよりも迫力があるほどだ。
巨体で怪力なだけではなく、運動神経も非常にいい。図体がでかいだけの鈍いヤツとは全然違う。
まさに手に負えない存在で、気に入らないことがあると乱暴の限りを尽くす超問題児だ。
コイツに犯罪者以外の未来があるのかと心底訝しむような存在だが、今のところ決定的な罪を犯したことはない。
神父様がゴーグに苦言を呈する。
「君がゴーグですね。この神聖な儀式の日に何をしていたのですか。君の番ですよ、早く祭壇の前へ来なさい」
「あーそりゃスマなかったな、神父さんよ」
ゴーグは悪びれもせずにそう言い、そのまま歩いて祭壇に立つ。こんな重要な儀式でも、アイツは自分勝手なままなんだな。
正直なところ、ゴーグにはあまりいいスキルを授かってほしくない。
他人の不幸を願うなんて我ながら最低だけど、そう思いたくなるほどゴーグは嫌な男だ。
同じことを思っている人は、この中にもきっといるんじゃないかと思う。
「信徒ゴーグに神の祝福を」
ゴーグの身体に光が集まる。あんな凶悪なヤツには、ひょっとして神様も力を分け与えないんじゃないかと思ったけど、そんなことはなく無事にスキルを授かったようだ。
それも、僕の願いとは裏腹にどうやらいいスキルを授かったらしく、かなり上機嫌で祭壇を下りる。
そしてたまたまだろうけど、ゴーグは僕の目の前で足を止めた。僕の身長が百六十八センチなので、近くに来られると完全に見上げる姿勢になる。
よほど誰かに自慢したかったのか、ゴーグは僕を含めた周りの人間に、授かったスキルを打ち明ける。
「クックックッ、やっぱオレは選ばれし人間だぜ。なんとSSSランクの超レア称号『覇王闘者』をもらっちまった!」
なんだってーっ!
『覇王闘者』の称号を持つ人間は、通常の十倍の経験値をもらえるようになる。要するに、他人より十倍早く成長できる最強クラスの称号だ。
前回確認されたのは確か百年以上前だったはず。現在この称号を持っている人なんて存在しないだろう。
ゴーグみたいな問題児が、どうしてそんな優秀な称号を授かれるんだ? 神様、いったい何を考えているんですか!?
この凄い称号を授かったゴーグがどんな風に成長するのか……考えると、ちょっとゾッとする。
神様に感謝して、これを機に真人間になってくれればいいけど。そうなることを祈りたい。
「次、ユーリ・ヒロナダ、祭壇の前へ」
いよいよ僕の名前が呼ばれた。かなり緊張する。
僕は祭壇に上がって、神様を模した像の前に跪く。
どうかいいスキルを授かりますように……
「信徒ユーリに神の祝福を」
上から射してきた光を浴び、全身の力を抜いて大きな力に身を任せる。
すると、身体の中心に聖なる力が奔流してくるのが分かった。指先までじんわりと流れが行き届き、自分の細胞が組み変わっていくような変化を感じる。
なんか力が漲ってきた……これ、ひょっとしてとんでもないスキルを授かっているんじゃ?
全身から聖なるパワーが溢れる感覚までしてきた。絶対にコレ、凄いスキルだよ。
儀式が終わったあと、自分が与えられたスキルを確認してみる。
どれどれ……SSSランクだ! やっぱりね!
これで僕の人生はバラ色確定だ! スキルバンザイ!
神様ありがとうございます! ホントにホントにありがとう~!
…………………………と思ったんだけど……
ウソ……だろ? 授かったスキルは……
『生命譲渡』!
これは自分の命と引き替えに誰かを生き返らせるスキルで、死者を復活させる魔法もアイテムも存在しないこの世界では、まさに神に等しい奇跡の技。
SSSランクに相応しいスキルなんだけど……
前回――確か数十年前にこのスキルを授かった人は、王様に捕らえられ、王族の命を救うために犠牲になったとか。
逃げられないように幽閉されたあと、念のため『支配化』という術までかけられて生かされ続け、最期にはスキルを使わされて死んだらしい。
前回のは僕が住んでいるこのエーアスト国の話ではないけど、もしこのスキルがバレたら、やはり王様や権力者に捕らえられてしまうかもしれない。
当然、僕に先に死なれては困るから、何かの事故に遭ったり病気になったりしないように軟禁されるだろう。いや、それどころか魔法で洗脳され、幽閉されることまで充分考えられる。
とにかく、権力者が喉から手が出るほど欲しいものが僕のスキル――つまり予備の命だ。
知られてしまえば、必ず僕は捕まって一生飼い殺しにされる。そして、誰かを救うために殺されるのだ。
なんという最悪なスキルを授かってしまったんだ……もう僕に自由はない。
スキルを隠して生きると言ったって、一生隠し通すことなんて到底無理だ。いや、早々にバレてしまう可能性のほうが高い。
何がSSSランクスキルだよ……
もう僕は終わりだ。こんなことになってしまうなんて。
あの野蛮なゴーグには『覇王闘者』の称号で、僕にはコレか。ホントに神様なんているのか?
それとも、他人の不幸なんて願ったから、僕にバチが当たったのか?
今までずっと神様を敬愛してきたけど、今はただひたすら憎い。
こんなスキル、神様に突っ返したい……
「ねえ、どうしたのユーリ? どんなスキルをもらったの? もし良かったら私にも教えて?」
僕の様子がおかしいことに気付いて、リノが近寄ってきた。
無邪気に尋ねてくるけど、たとえリノといえども、これを教えることはできない。
彼女が他人にバラすとは思わないけど、どこから情報が洩れるか分からないんだ。絶対にこの秘密は守っていかないと。
でも……果たしていつまでバレずにいられるか……
「ごめんリノ、スキルがあまりに酷くて教えることができないんだ」
「そ、そんなに酷いの? でも気を落とさないでね。スキルに頼らなくったって、きっといい人生送れるわよ」
普通のハズレスキルなら、どんなに酷くても死ぬことはないだろうけど、『生命譲渡』だけは違う。死ぬためだけにあるスキルだからな。
寿命をまっとうすることなんてまず不可能だろう。
僕は呆然としながら、儀式後の祝いの会にも参加せずに家に帰った。
◇◇◇
家に帰ってから、両親にもスキルのことは訊かれた。もちろん、親といえども教えることはできなかった。
一人部屋に戻り、ベッドの上でこれからの人生を考える。
無理だ……僕にはもう絶望しか浮かばない。
捕らわれ、殺されるためだけに生かされるくらいなら、悔いがないよう好きなことをやりまくってから死にたい。
好きなこと? 今僕がやりたいことってなんだ?
あまりの衝撃で、何も冷静に考えられない。すでに生きる気力がないのかもしれない。
ベッドでただ横になっていることすらつらくなり、僕は起き上がって外に出た。
夕暮れも過ぎ、そろそろ暗くなり始めた頃。僕は山道をひたすら歩いていた。
街の中を歩く気が起きず、ただ静かな場所へ行きたくて、足は自然と山頂に向かっていた。
どうにでもなれという、やけっぱちな思いだけで歩いている。
スキルがバレたら、もう人間扱いはしてもらえない。そんなプレッシャーに耐えながら生きていくのはつらすぎる。
このまま山でのたれ死んでしまおうか……後ろ向きな思いばかりが頭を埋め尽くす。
自暴自棄になっていると、ふとある音に気付いて空を見上げた。
遠方から何かがこっちに近付いてくる。
人が空を飛んでいる――『飛翔』のスキルではなく、翼を使って羽ばたいているように見える。しかも、その飛んでいる人は光り輝いていた。
僕は幻でも見ているのか?
その光る有翼人の後ろから、あとを追うように、黒い塊が徐々に大きな姿を現した。
遠目ながら推測するに、体長は四十メートルを超えるだろう。ゆったりと上下に揺れながら空を飛ぶその巨体は……ドラゴンだ!
それもノーマルドラゴンではなく、上位個体である邪黒竜じゃないかと思う。通常のドラゴンは、あんなに大きくないからだ。
なんでこんなところに? いや、あの空飛ぶ人間をずっと追ってここまで来たってことか。
光る有翼人は必死に逃げているようだけど、ドラゴンはすぐ後ろまで迫っていた。そしてその人物は竜の息吹で焼かれてしまい、光を失って下へと落ちていく。
それを見届けて、ドラゴンは去っていった……
大変だ、すぐにあの人のもとに向かおう!
すっかり日が暮れて森は真っ暗だったけど、何故かその人がどこに落ちたのかが分かった。
何か聖なる力に引き寄せられるように、その人のもとへ向かう。
どういうわけか、駆け付けている途中、暗く見通しの悪いこの山中を僕は少しも怖いと感じなかった。
草木が生い茂り手探りで進む場所も、傾斜のきつい岩場や足元が悪い湿地も、今の僕にはまるで問題じゃない。
普段なら到底歩けないような険しい山道を、僕は自分の身体じゃないように力強く進んでいく。
辿り着いてみて驚いた。落ちたのは、やはり人間ではなかった。
翼を持った女性――これは天使? いや、伝え聞く天使とも少し違うような……
すでに事切れているらしく、輝きも失われているはずなのに、何故か仄暗く光っているように見える。
綺麗な長い金髪で、背中には四枚の翼。服は黒く煤けているけど、あの強烈なブレスでも焼け尽きない丈夫な素材でできている。丈夫というか、神秘の素材って感じだけど。
きっと神様の一族だ。どういう理由か分からないけど、ドラゴンに追われて逃げていたんだ。
さっきまで憎くてたまらなかった神様に連なる存在が、僕の前で死んでいる。
……そうか、僕のスキルって、このために授かったんだな。
無意味と思えた僕の能力の存在意義が分かって、僕のすべきことを理解した。
どうか生き返ってください。
僕は授かったばかりの『生命譲渡』を使った。
そして僕は死んだ……
◇◇◇
「ユーリよ……ユーリ・ヒロナダよ」
僕を呼ぶ声が聞こえて目が覚める。
そこは真っ白な世界……あれ、僕死んだよね? なんだこれ?
「ユーリ・ヒロナダよ、我が娘を救ってくれて感謝する」
そこにいたのは、輝くおじいちゃん……あ、この人は神様か! 失礼なこと思ってスミマセン。
でも、教会にある神様の像とは外見が全然違うぞ!? 教会って意外と適当なのかな?
とりあえず神様が目の前にいるってことは、やっぱり僕は死んだんだな。まあいいけど。
あの女性は神様の娘だったのか。感謝されているってことは、助かったようだ。良かった……
「娘はふとした弾みで天界から落ちてしまい、たまたまそこに邪黒竜がおったのじゃ。ヤツらは神を天敵と思っておるので、ワシの力を引き継ぐ娘に襲いかかってしまった。娘はまだ見習いゆえ、邪黒竜を倒すほどの力がなくてのう。さらに、ワシも下界で無闇に力を使うわけにはいかず、どうすることもできなかったのじゃ」
なるほど、それで追われていたんだな。
「おぬしが犠牲になってくれたおかげで、我が娘は生き返ることができた。このワシとて、命を戻すのにはとてつもない力が必要で、ましてや女神の命ともなると、数百年を必要とするところじゃった」
あの女性は天使じゃなくて女神だったんだね。あれ? でも待てよ……
「僕のスキルは、このために授けていただいたのではないのですか?」
「いやいや、スキルは全て人間のためにある。おぬしの『生命譲渡』は、今後の大いなる使命のために授けた。今回の娘のことは完全に偶然じゃよ。おぬしの死はイレギュラーじゃ。よって、神の権限にておぬしを復活させてつかわす」
「ええっ、いいんですか!?」
「娘を復活させることに比べれば遥かに簡単じゃ。それくらいの奇跡は、おぬしに与えて当然じゃわい」
やった! もう一度生きることができる!
あ、でも、あのスキルを持ったままじゃ、生き返る意味なんて……
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