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2巻
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2.アマゾネスの戦士
「ユーリ、何か感じる……多分人よ! それも大勢いるわ!」
「ホントか、リノ!?」
ひたすら歩き続けてすでに三週間。リノの『超五感上昇』が、ついに人の気配を捉えたようだ。
辺りに都市や街は見えないので、小さな村とかだろう。
それでも、人がいる場所に辿り着いたのは大きな前進だ。
僕は『飛翔』で飛び上がり、リノが感知したという方角を『遠見』スキルで確認する。
すると、前方の森の中に村らしき集落を見つけたのだった。リノの感知がなければ、そのまま通り過ごしてしまったかもしれない。
「村があった! お手柄だぞ、リノ!」
「ホント!? じゃあユーリ、ご褒美にキスして!」
「リノさん、それはズルいですわ!」
フィーリアが即座に抗議した。うーん、さすがにキスはちょっと……
「いや、ご褒美は別のモノで……」
「じゃあナデナデして!」
とりあえず、ムフーと得意満面な顔をしているリノの頭を撫でる。
それを見たフィーリアが黒いオーラを出し始めたので、この旅をよく頑張ったということで、彼女も撫でてあげた。
長く過酷な日々に耐えられたのは、三人で力を合わせたからだ。改めて、本当に頼りになる少女たちである。囚われになっていた僕が助かったのもリノとフィーリアのおかげだし、二人には頭が上がらないな。
僕たちは森の集落に向かって、もう一踏ん張り歩いた。
草木がビッシリと生い茂り、人の通るような道などまるでない森の中を、リノの『超五感上昇』を頼りに僕らは進んでいく。
幸い危険なモンスターとは遭遇せずに、目的の村へと到着した。
村の中には、自然を利用した原始的な作りの家屋があちこちに建ち並んでいる。
村人は少し前に僕たちの接近に気付いたらしく、武器を構えた十数人の衛兵らしき人が、わらわらとこちらへ歩み寄ってきた。
それが……なんと全員女性だ。しかも、ただ適当に武器を持っているという素人ではない。
鍛え上げられたその逞しい肉体から、れっきとした戦士ということが分かる。ただ、全員『ビキニアーマー』という防具を着ていた。
『真理の天眼』で解析してみると、女性たちのほとんどがレベル60を超えていた。戦闘スキルや基礎スキルなどのレベルもなかなか高く、冒険者でいうとAランク相当の実力はあるだろう。
その中に一人、戦士とは違う少々年老いた女性がいた。恐らく村の代表なのだろう。
その老婆を真ん中に据えて、女戦士たちは僕らの前に立ち塞がった。
当たり前だが、だいぶ警戒されているようだ。
どうしたものかなと思案していると、はっと気付いたようにリノとフィーリアが話しかけてきた。
「ユーリ、彼女たちって、多分『アマゾネス』だわ! ホントにいたのね」
「わたくしも聞いたことがあります。女性だけの村が存在すると……」
アマゾネスだって? そういや学校の授業で習ったっけ。
確かアマゾネスは『神授の儀』を行わないので、神様から授かるレアスキルは持っていない。その代わり、幼少の頃から戦ってどんどん経験値を獲得しているので、高レベルを誇る一族なのだとか。
なるほど、確かに目の前の女性たちは、まだ若いのにかなりの高レベルだ。
「お前たち、どうやってこの場所を見つけた?」
老いた女性が、僕たちに質問をしてきた。代表して僕が答える。
「上空から、森の中にこの集落があるのを見つけたんです」
「なんと、空を飛べるということか……しかし、それでもよく村に気付いたな?」
確かにこの村は、たとえ空から見られても、そう簡単には発見できないように隠されている感じだった。リノの感知のおかげで、注意深く探すことができたのである。
「驚かせてしまって申し訳ありません。僕たちは道に迷っているだけなんです。ここで少し休ませてもらったら、すぐにまた出発しますので……」
とにかく、僕たちに敵意がないことをアピールした。
この村の位置が分かれば、その情報を頼りに他国へと向かうことができる。それにやっと人と出会えたんだ、ここで長旅の疲れを癒やしたいところ。
しかし、こちらのそんな思いとは裏腹に、老婆は僕らを敵と判断したのだった。
「このめでたい『戦皇妃』誕生の祝祭に、薄汚い男がやってくるとはな。己を不運と呪うがよい……殺せ!」
そうだ、アマゾネスって、非常に好戦的という話だった。
それにしても、いきなり殺せとは……交渉の余地なしですか?
老婆の命令を聞いて、女戦士たちがまとめて僕に襲いかかってくる。
「ユーリっ、危ないっ!」
「ユーリ様っ!?」
「大丈夫、リノとフィーリアは後ろに下がって」
心配する二人に、そう言って安心させる。
アマゾネスたちが強いといってもAランク程度。何人いても僕の敵じゃない。
とはいえ、長旅の中せっかく出会えた人たちだし、このまま返り討ちにして対立を深めたくない。
そう考えた僕は、攻撃を上手く躱しながら、アマゾネスたちの武器を一つずつ取り上げていった。
彼女たちは剣だけではなく弓矢でも攻撃してきたが、それらも全て手で掴んで止める。
相手の武器が全てなくなったところで、いったん戦闘が終わった。
「こっ、こやつ、ただの小僧ではないな!?」
老婆が驚きの声を上げた。
これでもう一度交渉できるかと思っていると、アマゾネスたちの後ろからもう一人、長い黒髪をポニーテールにした女戦士が現れる。
「婆よ、苦戦しているようだな」
見たところ、その女戦士はまだかなり若い。恐らく僕らと同じ歳かちょっと上くらいだろうに、能力を解析してみたら、なんとレベル83もあった。戦闘スキルのレベルも高く、ほかのアマゾネスたちよりも強さが頭二つ抜けている。
間違いなくSSランク級の力がある。その若さでこの能力の高さは凄い。
老婆はその女性に鋭い口調で言う。
「ソロル、何故ここへ来た!? 今日はお前を祝う日じゃ、大人しく英霊様の加護を受ける儀式を続けておれ!」
「いや、これは新しく『戦皇妃』となったオレの初仕事だ。この男を殺して、先達の英霊たちに捧げよう」
ソロルと呼ばれた女戦士が、僕の前に立って剣を抜く。
身長は僕より気持ち低い程度――百六十五、六センチくらいか?
アマゾネスたちは全員日に焼けた肌をしているが、このソロルという女性はさらに一段と色の濃い小麦色で、そしてもの凄いグラマラスな身体付きをしている。要するに巨乳だ。
「今日はことさら神聖な祭り、お前のような薄汚い男など村には入れぬ。そして弱き男には死あるのみっ!」
ソロルは一瞬で僕との間合いを詰めて、僕の首を剣で斬り落としにきた。
並みの冒険者では、何が起きたかも分からないまま首がなくなっていただろう。けど、今の僕には、少し先の行動が見える『超越者の目』がある。
よって、その鋭い一撃を難なく躱せた。
「な……なんだと!?」
初撃によほど自信があったのか、自らの剣が空を斬ったことにソロルは驚き、慌てて二の太刀、三の太刀を浴びせてきた。
もちろん、それが僕に当たることはない。回避に特化した『幽鬼』スキルも持っているしね。
攻撃の乱舞を、僕は最小の動きで躱し続ける。
「こ、こいつ……大して動いてないのに、何故オレの剣が当たらないんだ!?」
ソロルはムキになって剣を振り続けるが、なんていうかその……いや、見るつもりはないんだけど、動きに合わせて大きな両胸があちこち弾んでいるので、つい目で追ってしまう。
なんか僕のほうが恥ずかしいんですが?
「ユーリ、おっぱい見ちゃダメ! 目を瞑って戦うのよ!」
「そうですわ、あんなモノに惑わされてはなりません! しょせん脂肪の塊、大きさなんて無意味ですわ!」
リノとフィーリアの荒い声が聞こえてくる。目を瞑れだなんて、無茶な……
どうもソロルの巨乳に嫉妬している感じだけど、リノたちも別に小さいわけじゃないからね。気にすることないよ……とか僕までバカなことを考え始めてしまった。
さてこの戦い、どうやって終わらせよう?
「退くがよいソロル、『村守』様をお連れしてきた!」
僕が対応に悩んでいると、老婆が大型の獣を連れてきた。
白とセピア色の長い毛に覆われたそれは……『猫獣』だ。こんなに大きな『猫獣』は見たことないけど、その特徴的な顔から間違いないだろう。
『猫獣』は、よくペットとして飼われている『猫』の大型種で、通常は一メートル五十センチほどの体長だけど、『村守』と呼ばれた個体は三メートル以上の大きさがあった。
これは現在ではまず見かけないサイズ。こんな大型の『猫獣』はとっくに絶滅したはずだ。
この手の大型動物は何種かいて、モンスターとの違いは体内に魔石が存在しないこと。魔石がなければそれほど凶暴にもならないので、ペットとして人間と共存したり、または家畜として飼われたりしている。
ちなみに、獣人種である『猫人』は、祖先が『猫獣』の血を引いていると言われている。
「『村守』様か……分かった、この男の始末は『村守』様にお任せしよう」
老婆の言葉を聞いて、ソロルが後ろに下がる。
それと入れ替わりに、『猫獣』がゆっくり僕の前に歩いてきた。
確かに『猫獣』はそれなりに強いけど、モンスターではないので戦闘に長けた冒険者には到底敵わない。コイツがいくら大型であろうとも、たとえばCランクモンスターであるサーベルタイガーのほうが遙かに強いだろう。
それはアマゾネスたちにも分かっているはずなのに、なんで連れてきたんだ?
「『村守』様、我が村に仇なす者を食い殺してくださいませ」
老婆がけしかけると、なんとただでさえ見たことないほど大型な『猫獣』が、さらに巨大化した!
もりもりと筋肉が盛り上がり、骨格もガッシリと厚みを増して、手足も伸びていく。
長い毛までモッフモッフとボリュームを増し、見た目は体長六メートルにもなった。
こんな獣なんて見たことも聞いたこともないぞ!? 『真理の天眼』で解析したところ、SSSランク冒険者と同等以上の強さはありそうだった。
といっても獣やモンスターにはレベルや戦闘スキルという概念がないので、強さを正確に測るのは難しいのだが。
それにしても、モンスターでもないただの獣がこれほど強くなるなんて!?
なるほど、『村守』と呼ばれるわけだ。とはいえ、僕よりはやはり弱い。
戦いたくはないが、この『猫獣』を叩きのめさなくちゃダメか……?
ブルーの大きな瞳が、じっと僕を見つめ続ける。
僕と『村守』の睨み合いは続き……いつ飛びかかってくるのかと思っていたところ、巨大化していた『村守』がスルスルと縮んで元の大きさになった。
え? ひょっとしてパワー切れ……とか?
よく分からないけど、『村守』は戦意が完全に消えている。そして、僕に近付いて甘えるような仕草をした。
どうなってるんだ?
「ど、どういうことじゃ!? 『村守』様が外の者に懐くなど……はっ、まさかお前は、英霊様が迎えし戦神!?」
なんだ? 戦神……って僕のこと?
老婆の言葉を聞いて、アマゾネスたちもざわめいている。
「そうか、そういうことじゃったか! 戦皇妃の祝祭に、戦神様がいらっしゃるとは……! これはいきなり襲って大変申し訳ないことをした。村をあげてもてなしますゆえ、数々の無礼、平にご容赦願いたい」
アマゾネスたちから殺気が消え、態度も軟化した。
「急に友好的になったわね。どうするユーリ?」
リノが耳打ちしてきた。
うーん、僕たちが敵じゃないと分かってくれたのかな?
「村に入れていただけたら大変助かります。どうかしばらくの間、ここで休ませてください」
「もちろんじゃ、そこの娘っ子たちも遠慮なく来るがよい」
「やった! どうなることかと思ったけど、さすがユーリ!」
「これでゆっくり休めますわ……」
リノとフィーリアも安堵している。
僕たちはアマゾネスたちに促されるまま、村の中に招待された。
3.絶体絶命大ピンチ?
「戦神様には本当にすまないことをした。さぁさ、よりをかけて馳走を用意しましたゆえ、たくさん召し上がってくだされ」
大きな家に案内され、そこでしばらくくつろいでいると、アマゾネス族の代表である老婆――イナニガという女性の指示で、豪華な料理が運ばれ始めた。
実は今日は、村をあげての大きな行事――最強の戦士が誕生した祭りをしていたらしい。
先ほど戦ったソロルという女戦士がその人で、数々の厳しい試練を終えて、部族最強の証である『戦皇妃』の名を継いだのだとか。そのお祝いのため、色々と料理が用意されていたのだ。
それはともかく、僕のことを戦神様って呼んでたけど、アレはなんなのかな?
「美味しいですわ、これほどのご馳走は食べたことありませんわ~♪」
「凄い、いくらでも食べれちゃう! もう一生こんな食事なんてできないかと思ってたよー!」
フィーリアとリノは、手を休めることなく次々と料理を口に入れ、片っ端から平らげていく。かくいう僕も、料理を口に運ぶ手が止まらない。
ずっと苦しい旅だったから、こうして安全な場所で食事をすると、本当に生き返った気がする。
「まだまだたくさんあるで、遠慮せず食いなされ」
空になったお皿が下げられ、また目の前に料理が並べられる。
だいぶお腹も満たされたので、代表であるイナニガさんに、この村のことを少し聞いてみた。
思った通りここは隠れ里で、滅多なことではよその人間が辿り着くことはないらしい。アマゾネスたちも、ここを出てほかの国に行くようなことはないとのこと。
つまり、外部とはほぼ完全に断絶されているということだ。ひょっとしたら、思いもよらない風習とかがあるかもしれないな。
それと、もう一つ気になったことが。
「あの大きな『猫獣』……『村守』様のような獣は初めて見たのですが、ほかにもこの辺りにはいるのですか?」
「いいや、『村守』様以外には棲んでおらぬよ」
「では、あの一頭だけ? どこで捕まえたんですか?」
「ワシも知らぬ。村に伝わる話では、二百年ほど前に村人が狩り場で仔獣が倒れているのを見つけ、それを拾って育てたらあの『村守』様になったということじゃ」
「二百年前!?」
モンスターならいざ知らず、通常の獣がそんなに長生きするわけがない。何かの間違いじゃないかな?
あるいは、この近くには『猫獣』が複数棲息していて、寿命が来る度に別のを捕まえて飼い続けている……とか?
まあ、この辺りは未開の地だから、どんな生態系になっていてもおかしくない。『村守』のような獣は、今もそこそこ生き残っているのだろう。一頭だけじゃ繁殖していけないしね。
アマゾネスたちにはまだまだ聞きたいことはあるんだけど、満腹になった幸福感と、人のいる場所に辿り着いた安堵から、眠くなってしまった。
今日はこのくらいにして、また明日にでも続きを聞くことにするか。
横を見ると、リノとフィーリアも、テーブルに突っ伏して眠っていた。
……? あれ? なんかおかしい気が……
異常に眠い……眠すぎる。身体もだるくて何も動かせない……
だめだ、とても目を開けていられない……
そこで僕の意識は飛んでしまった。
◇◇◇
目を覚ますと、僕は薄暗い部屋の中に寝かされているようだった。一瞬、なぜこんなところにいるのかが分からず、何があったのか思い出そうとする。
……そうだ、アマゾネスの村に入って、料理をご馳走されたんだった。
その後の記憶が……えーと、どうしたんだっけ?
とりあえず、『暗視』スキルで周りを探ってみようとすると――すぐそばに誰かがいる!?
「くくっ、気が付いたようだな」
寝ている僕の顔を覗き込むように、真横でしゃがみ込んでいたのは、あの女戦士ソロルだった。
ほぼ同時に、手足が上手く動かせないことに気付く。ここでようやく、現在の自分の状況が分かった。
なんと、両手両足に縄を結びつけられ、パンツ一丁で大の字に緊縛されている。何コレ、どういうこと!?
拘束を外そうとジタバタしてると、ソロルが服を脱ぎ始めた。
待って待って、いったい何が起こってるんだ!?
「オレの戦皇妃就任の日に戦神が来るなんて、こんな嬉しいことはない」
「あ、あの……戦神ってなんですか?」
「とぼけなくてもいい。お前ほどの男がこのタイミングで村を訪れるなんて、神の導き以外に考えられぬ。我が村に戦神が来てくれたのは数百年ぶりだ」
「いや、僕は戦神というヤツじゃないですよ?」
どうにも話が見えてこない。
それに、『戦神』と崇められているなら、なんで僕は裸で拘束されてるの?
「我が村には男がいない。一族の繁栄のため、たまに村の近くまで迷い込んでくる男を捕らえてそいつから子種を頂戴するが、近頃では弱い男ばかりで衰退の一途を辿っていた」
そういや思い出したぞ!
アマゾネス族は、外部から男を引き込んで子作りをする。
そして、アマゾネスからは女の子しか生まれない。授業でそう習った気がする。
「戦神の種は、我らに大いなる力を授けてくれるという。お前ほどの男となら、素晴らしい子が作れるだろう」
うおおおおようやく分かった、理解しました!
強さを充分すぎるほど見せつけた僕は、アマゾネス族の交配の相手に選ばれちゃったのね。それも、戦神なんていう大げさな存在だと思われているわけだ。
まずいですよコレ!
それと、一つだけ気になってることがあるんですが……
今この村に男はいないって言ったよね? 仮に僕が子作りに協力したあと、どうなるんですか?
ソロルにそれを訊いてみる。
「ふん、子種をもらったあとの男は用済みだ。戦神といえども例外ではない。安心しろ、我らとの子作りが終わる頃には、男はただの抜け殻になる。死ぬ恐怖もなくなっていることだろう」
それって廃人になるってこと? つまり、僕は完全に壊されたのちに、処分されちゃうってわけですか!?
何故なんだ!? フィーリアに襲われたときといい、僕の運命ってこんなのばっかりだ!
そんな目に遭ってたまるか! と力を入れてみたけど、まったく拘束が解けない。というか、まるで力が入らない。
『真理の天眼』で自分を解析してみたら、重度の麻痺状態だった。
「アマゾネスの秘薬を料理に入れたから、当分お前は動けないぜ。今夜は一晩中オレたちの相手をしてもらう。まずはオレからだ!」
絶体絶命! 今頃リノもフィーリアも拘束されているだろうから、僕を助けに来られるとも思えない。
もはやこれまでか……
ゴオオオオオオオッ! ドドーーン!
観念しそうになったその瞬間、村を揺り動かすような大地の震動と、空気を震わす轟音がこの場を襲った。
さらに、何やら悲鳴のような声と、バキバキといった破壊音まで聞こえてきた。
「な、なんだこの騒ぎは!?」
この突然の異常事態に、ソロルも僕を襲うことを忘れて動揺している。
何かが……村に起こっている!
動けない僕を置いて、ソロルは慌てて部屋から飛び出した。
ここからでは外の様子は分からないが、これはただ事じゃない。
『気配感知』と『探知』の融合スキル『領域支配』で様子を探ると、何かとてつもない存在が近くにいることが分かった。
状況的に間違いなく敵だ。今この村はそいつに襲われている!
くっ、非常時だというのに、僕は麻痺状態でどうすることもできない……と思っていたら、いつの間にか新しいスキルが取得画面に出ていた。
ずっと欲しかった、念願の『異常耐性』スキルだ! これが取得可能になっている!
そうか、アマゾネスの秘薬で重度の麻痺状態にされた上、生命の危機も感じたことにより、ようやくスキルが開花したんだ。まさに奇跡のタイミングだ!
当然取得し、経験値1000万ほど使ってレベルを10にする。
すると、麻痺していた身体がたちまち正常に戻った。あとは力ずくで拘束を外すだけ。
僕はベースレベル300だし、『腕力』スキルもレベル10だ。この程度のことは造作もない。
さらに、『異常耐性』スキルをレベル10にしたことにより、持っていた『耐久』、『頑丈』スキルと融合される。
この三つが融合した結果、『竜体進化』という超強力なスキルに進化した。これは、圧倒的な耐久力が付くスキルらしい。あらゆるダメージを軽減し、そして状態異常攻撃もほぼ無効にする。
これで僕の肉体は大幅に強化された。もう状態異常は怖くないし、並大抵の攻撃では致命的なダメージは受けない。
何がこの村を襲っているのかは分からないが、今の僕なら、そう簡単にはやられないぞ!
ソロルを追って、僕も外へと飛び出した。
「ユーリ、何か感じる……多分人よ! それも大勢いるわ!」
「ホントか、リノ!?」
ひたすら歩き続けてすでに三週間。リノの『超五感上昇』が、ついに人の気配を捉えたようだ。
辺りに都市や街は見えないので、小さな村とかだろう。
それでも、人がいる場所に辿り着いたのは大きな前進だ。
僕は『飛翔』で飛び上がり、リノが感知したという方角を『遠見』スキルで確認する。
すると、前方の森の中に村らしき集落を見つけたのだった。リノの感知がなければ、そのまま通り過ごしてしまったかもしれない。
「村があった! お手柄だぞ、リノ!」
「ホント!? じゃあユーリ、ご褒美にキスして!」
「リノさん、それはズルいですわ!」
フィーリアが即座に抗議した。うーん、さすがにキスはちょっと……
「いや、ご褒美は別のモノで……」
「じゃあナデナデして!」
とりあえず、ムフーと得意満面な顔をしているリノの頭を撫でる。
それを見たフィーリアが黒いオーラを出し始めたので、この旅をよく頑張ったということで、彼女も撫でてあげた。
長く過酷な日々に耐えられたのは、三人で力を合わせたからだ。改めて、本当に頼りになる少女たちである。囚われになっていた僕が助かったのもリノとフィーリアのおかげだし、二人には頭が上がらないな。
僕たちは森の集落に向かって、もう一踏ん張り歩いた。
草木がビッシリと生い茂り、人の通るような道などまるでない森の中を、リノの『超五感上昇』を頼りに僕らは進んでいく。
幸い危険なモンスターとは遭遇せずに、目的の村へと到着した。
村の中には、自然を利用した原始的な作りの家屋があちこちに建ち並んでいる。
村人は少し前に僕たちの接近に気付いたらしく、武器を構えた十数人の衛兵らしき人が、わらわらとこちらへ歩み寄ってきた。
それが……なんと全員女性だ。しかも、ただ適当に武器を持っているという素人ではない。
鍛え上げられたその逞しい肉体から、れっきとした戦士ということが分かる。ただ、全員『ビキニアーマー』という防具を着ていた。
『真理の天眼』で解析してみると、女性たちのほとんどがレベル60を超えていた。戦闘スキルや基礎スキルなどのレベルもなかなか高く、冒険者でいうとAランク相当の実力はあるだろう。
その中に一人、戦士とは違う少々年老いた女性がいた。恐らく村の代表なのだろう。
その老婆を真ん中に据えて、女戦士たちは僕らの前に立ち塞がった。
当たり前だが、だいぶ警戒されているようだ。
どうしたものかなと思案していると、はっと気付いたようにリノとフィーリアが話しかけてきた。
「ユーリ、彼女たちって、多分『アマゾネス』だわ! ホントにいたのね」
「わたくしも聞いたことがあります。女性だけの村が存在すると……」
アマゾネスだって? そういや学校の授業で習ったっけ。
確かアマゾネスは『神授の儀』を行わないので、神様から授かるレアスキルは持っていない。その代わり、幼少の頃から戦ってどんどん経験値を獲得しているので、高レベルを誇る一族なのだとか。
なるほど、確かに目の前の女性たちは、まだ若いのにかなりの高レベルだ。
「お前たち、どうやってこの場所を見つけた?」
老いた女性が、僕たちに質問をしてきた。代表して僕が答える。
「上空から、森の中にこの集落があるのを見つけたんです」
「なんと、空を飛べるということか……しかし、それでもよく村に気付いたな?」
確かにこの村は、たとえ空から見られても、そう簡単には発見できないように隠されている感じだった。リノの感知のおかげで、注意深く探すことができたのである。
「驚かせてしまって申し訳ありません。僕たちは道に迷っているだけなんです。ここで少し休ませてもらったら、すぐにまた出発しますので……」
とにかく、僕たちに敵意がないことをアピールした。
この村の位置が分かれば、その情報を頼りに他国へと向かうことができる。それにやっと人と出会えたんだ、ここで長旅の疲れを癒やしたいところ。
しかし、こちらのそんな思いとは裏腹に、老婆は僕らを敵と判断したのだった。
「このめでたい『戦皇妃』誕生の祝祭に、薄汚い男がやってくるとはな。己を不運と呪うがよい……殺せ!」
そうだ、アマゾネスって、非常に好戦的という話だった。
それにしても、いきなり殺せとは……交渉の余地なしですか?
老婆の命令を聞いて、女戦士たちがまとめて僕に襲いかかってくる。
「ユーリっ、危ないっ!」
「ユーリ様っ!?」
「大丈夫、リノとフィーリアは後ろに下がって」
心配する二人に、そう言って安心させる。
アマゾネスたちが強いといってもAランク程度。何人いても僕の敵じゃない。
とはいえ、長旅の中せっかく出会えた人たちだし、このまま返り討ちにして対立を深めたくない。
そう考えた僕は、攻撃を上手く躱しながら、アマゾネスたちの武器を一つずつ取り上げていった。
彼女たちは剣だけではなく弓矢でも攻撃してきたが、それらも全て手で掴んで止める。
相手の武器が全てなくなったところで、いったん戦闘が終わった。
「こっ、こやつ、ただの小僧ではないな!?」
老婆が驚きの声を上げた。
これでもう一度交渉できるかと思っていると、アマゾネスたちの後ろからもう一人、長い黒髪をポニーテールにした女戦士が現れる。
「婆よ、苦戦しているようだな」
見たところ、その女戦士はまだかなり若い。恐らく僕らと同じ歳かちょっと上くらいだろうに、能力を解析してみたら、なんとレベル83もあった。戦闘スキルのレベルも高く、ほかのアマゾネスたちよりも強さが頭二つ抜けている。
間違いなくSSランク級の力がある。その若さでこの能力の高さは凄い。
老婆はその女性に鋭い口調で言う。
「ソロル、何故ここへ来た!? 今日はお前を祝う日じゃ、大人しく英霊様の加護を受ける儀式を続けておれ!」
「いや、これは新しく『戦皇妃』となったオレの初仕事だ。この男を殺して、先達の英霊たちに捧げよう」
ソロルと呼ばれた女戦士が、僕の前に立って剣を抜く。
身長は僕より気持ち低い程度――百六十五、六センチくらいか?
アマゾネスたちは全員日に焼けた肌をしているが、このソロルという女性はさらに一段と色の濃い小麦色で、そしてもの凄いグラマラスな身体付きをしている。要するに巨乳だ。
「今日はことさら神聖な祭り、お前のような薄汚い男など村には入れぬ。そして弱き男には死あるのみっ!」
ソロルは一瞬で僕との間合いを詰めて、僕の首を剣で斬り落としにきた。
並みの冒険者では、何が起きたかも分からないまま首がなくなっていただろう。けど、今の僕には、少し先の行動が見える『超越者の目』がある。
よって、その鋭い一撃を難なく躱せた。
「な……なんだと!?」
初撃によほど自信があったのか、自らの剣が空を斬ったことにソロルは驚き、慌てて二の太刀、三の太刀を浴びせてきた。
もちろん、それが僕に当たることはない。回避に特化した『幽鬼』スキルも持っているしね。
攻撃の乱舞を、僕は最小の動きで躱し続ける。
「こ、こいつ……大して動いてないのに、何故オレの剣が当たらないんだ!?」
ソロルはムキになって剣を振り続けるが、なんていうかその……いや、見るつもりはないんだけど、動きに合わせて大きな両胸があちこち弾んでいるので、つい目で追ってしまう。
なんか僕のほうが恥ずかしいんですが?
「ユーリ、おっぱい見ちゃダメ! 目を瞑って戦うのよ!」
「そうですわ、あんなモノに惑わされてはなりません! しょせん脂肪の塊、大きさなんて無意味ですわ!」
リノとフィーリアの荒い声が聞こえてくる。目を瞑れだなんて、無茶な……
どうもソロルの巨乳に嫉妬している感じだけど、リノたちも別に小さいわけじゃないからね。気にすることないよ……とか僕までバカなことを考え始めてしまった。
さてこの戦い、どうやって終わらせよう?
「退くがよいソロル、『村守』様をお連れしてきた!」
僕が対応に悩んでいると、老婆が大型の獣を連れてきた。
白とセピア色の長い毛に覆われたそれは……『猫獣』だ。こんなに大きな『猫獣』は見たことないけど、その特徴的な顔から間違いないだろう。
『猫獣』は、よくペットとして飼われている『猫』の大型種で、通常は一メートル五十センチほどの体長だけど、『村守』と呼ばれた個体は三メートル以上の大きさがあった。
これは現在ではまず見かけないサイズ。こんな大型の『猫獣』はとっくに絶滅したはずだ。
この手の大型動物は何種かいて、モンスターとの違いは体内に魔石が存在しないこと。魔石がなければそれほど凶暴にもならないので、ペットとして人間と共存したり、または家畜として飼われたりしている。
ちなみに、獣人種である『猫人』は、祖先が『猫獣』の血を引いていると言われている。
「『村守』様か……分かった、この男の始末は『村守』様にお任せしよう」
老婆の言葉を聞いて、ソロルが後ろに下がる。
それと入れ替わりに、『猫獣』がゆっくり僕の前に歩いてきた。
確かに『猫獣』はそれなりに強いけど、モンスターではないので戦闘に長けた冒険者には到底敵わない。コイツがいくら大型であろうとも、たとえばCランクモンスターであるサーベルタイガーのほうが遙かに強いだろう。
それはアマゾネスたちにも分かっているはずなのに、なんで連れてきたんだ?
「『村守』様、我が村に仇なす者を食い殺してくださいませ」
老婆がけしかけると、なんとただでさえ見たことないほど大型な『猫獣』が、さらに巨大化した!
もりもりと筋肉が盛り上がり、骨格もガッシリと厚みを増して、手足も伸びていく。
長い毛までモッフモッフとボリュームを増し、見た目は体長六メートルにもなった。
こんな獣なんて見たことも聞いたこともないぞ!? 『真理の天眼』で解析したところ、SSSランク冒険者と同等以上の強さはありそうだった。
といっても獣やモンスターにはレベルや戦闘スキルという概念がないので、強さを正確に測るのは難しいのだが。
それにしても、モンスターでもないただの獣がこれほど強くなるなんて!?
なるほど、『村守』と呼ばれるわけだ。とはいえ、僕よりはやはり弱い。
戦いたくはないが、この『猫獣』を叩きのめさなくちゃダメか……?
ブルーの大きな瞳が、じっと僕を見つめ続ける。
僕と『村守』の睨み合いは続き……いつ飛びかかってくるのかと思っていたところ、巨大化していた『村守』がスルスルと縮んで元の大きさになった。
え? ひょっとしてパワー切れ……とか?
よく分からないけど、『村守』は戦意が完全に消えている。そして、僕に近付いて甘えるような仕草をした。
どうなってるんだ?
「ど、どういうことじゃ!? 『村守』様が外の者に懐くなど……はっ、まさかお前は、英霊様が迎えし戦神!?」
なんだ? 戦神……って僕のこと?
老婆の言葉を聞いて、アマゾネスたちもざわめいている。
「そうか、そういうことじゃったか! 戦皇妃の祝祭に、戦神様がいらっしゃるとは……! これはいきなり襲って大変申し訳ないことをした。村をあげてもてなしますゆえ、数々の無礼、平にご容赦願いたい」
アマゾネスたちから殺気が消え、態度も軟化した。
「急に友好的になったわね。どうするユーリ?」
リノが耳打ちしてきた。
うーん、僕たちが敵じゃないと分かってくれたのかな?
「村に入れていただけたら大変助かります。どうかしばらくの間、ここで休ませてください」
「もちろんじゃ、そこの娘っ子たちも遠慮なく来るがよい」
「やった! どうなることかと思ったけど、さすがユーリ!」
「これでゆっくり休めますわ……」
リノとフィーリアも安堵している。
僕たちはアマゾネスたちに促されるまま、村の中に招待された。
3.絶体絶命大ピンチ?
「戦神様には本当にすまないことをした。さぁさ、よりをかけて馳走を用意しましたゆえ、たくさん召し上がってくだされ」
大きな家に案内され、そこでしばらくくつろいでいると、アマゾネス族の代表である老婆――イナニガという女性の指示で、豪華な料理が運ばれ始めた。
実は今日は、村をあげての大きな行事――最強の戦士が誕生した祭りをしていたらしい。
先ほど戦ったソロルという女戦士がその人で、数々の厳しい試練を終えて、部族最強の証である『戦皇妃』の名を継いだのだとか。そのお祝いのため、色々と料理が用意されていたのだ。
それはともかく、僕のことを戦神様って呼んでたけど、アレはなんなのかな?
「美味しいですわ、これほどのご馳走は食べたことありませんわ~♪」
「凄い、いくらでも食べれちゃう! もう一生こんな食事なんてできないかと思ってたよー!」
フィーリアとリノは、手を休めることなく次々と料理を口に入れ、片っ端から平らげていく。かくいう僕も、料理を口に運ぶ手が止まらない。
ずっと苦しい旅だったから、こうして安全な場所で食事をすると、本当に生き返った気がする。
「まだまだたくさんあるで、遠慮せず食いなされ」
空になったお皿が下げられ、また目の前に料理が並べられる。
だいぶお腹も満たされたので、代表であるイナニガさんに、この村のことを少し聞いてみた。
思った通りここは隠れ里で、滅多なことではよその人間が辿り着くことはないらしい。アマゾネスたちも、ここを出てほかの国に行くようなことはないとのこと。
つまり、外部とはほぼ完全に断絶されているということだ。ひょっとしたら、思いもよらない風習とかがあるかもしれないな。
それと、もう一つ気になったことが。
「あの大きな『猫獣』……『村守』様のような獣は初めて見たのですが、ほかにもこの辺りにはいるのですか?」
「いいや、『村守』様以外には棲んでおらぬよ」
「では、あの一頭だけ? どこで捕まえたんですか?」
「ワシも知らぬ。村に伝わる話では、二百年ほど前に村人が狩り場で仔獣が倒れているのを見つけ、それを拾って育てたらあの『村守』様になったということじゃ」
「二百年前!?」
モンスターならいざ知らず、通常の獣がそんなに長生きするわけがない。何かの間違いじゃないかな?
あるいは、この近くには『猫獣』が複数棲息していて、寿命が来る度に別のを捕まえて飼い続けている……とか?
まあ、この辺りは未開の地だから、どんな生態系になっていてもおかしくない。『村守』のような獣は、今もそこそこ生き残っているのだろう。一頭だけじゃ繁殖していけないしね。
アマゾネスたちにはまだまだ聞きたいことはあるんだけど、満腹になった幸福感と、人のいる場所に辿り着いた安堵から、眠くなってしまった。
今日はこのくらいにして、また明日にでも続きを聞くことにするか。
横を見ると、リノとフィーリアも、テーブルに突っ伏して眠っていた。
……? あれ? なんかおかしい気が……
異常に眠い……眠すぎる。身体もだるくて何も動かせない……
だめだ、とても目を開けていられない……
そこで僕の意識は飛んでしまった。
◇◇◇
目を覚ますと、僕は薄暗い部屋の中に寝かされているようだった。一瞬、なぜこんなところにいるのかが分からず、何があったのか思い出そうとする。
……そうだ、アマゾネスの村に入って、料理をご馳走されたんだった。
その後の記憶が……えーと、どうしたんだっけ?
とりあえず、『暗視』スキルで周りを探ってみようとすると――すぐそばに誰かがいる!?
「くくっ、気が付いたようだな」
寝ている僕の顔を覗き込むように、真横でしゃがみ込んでいたのは、あの女戦士ソロルだった。
ほぼ同時に、手足が上手く動かせないことに気付く。ここでようやく、現在の自分の状況が分かった。
なんと、両手両足に縄を結びつけられ、パンツ一丁で大の字に緊縛されている。何コレ、どういうこと!?
拘束を外そうとジタバタしてると、ソロルが服を脱ぎ始めた。
待って待って、いったい何が起こってるんだ!?
「オレの戦皇妃就任の日に戦神が来るなんて、こんな嬉しいことはない」
「あ、あの……戦神ってなんですか?」
「とぼけなくてもいい。お前ほどの男がこのタイミングで村を訪れるなんて、神の導き以外に考えられぬ。我が村に戦神が来てくれたのは数百年ぶりだ」
「いや、僕は戦神というヤツじゃないですよ?」
どうにも話が見えてこない。
それに、『戦神』と崇められているなら、なんで僕は裸で拘束されてるの?
「我が村には男がいない。一族の繁栄のため、たまに村の近くまで迷い込んでくる男を捕らえてそいつから子種を頂戴するが、近頃では弱い男ばかりで衰退の一途を辿っていた」
そういや思い出したぞ!
アマゾネス族は、外部から男を引き込んで子作りをする。
そして、アマゾネスからは女の子しか生まれない。授業でそう習った気がする。
「戦神の種は、我らに大いなる力を授けてくれるという。お前ほどの男となら、素晴らしい子が作れるだろう」
うおおおおようやく分かった、理解しました!
強さを充分すぎるほど見せつけた僕は、アマゾネス族の交配の相手に選ばれちゃったのね。それも、戦神なんていう大げさな存在だと思われているわけだ。
まずいですよコレ!
それと、一つだけ気になってることがあるんですが……
今この村に男はいないって言ったよね? 仮に僕が子作りに協力したあと、どうなるんですか?
ソロルにそれを訊いてみる。
「ふん、子種をもらったあとの男は用済みだ。戦神といえども例外ではない。安心しろ、我らとの子作りが終わる頃には、男はただの抜け殻になる。死ぬ恐怖もなくなっていることだろう」
それって廃人になるってこと? つまり、僕は完全に壊されたのちに、処分されちゃうってわけですか!?
何故なんだ!? フィーリアに襲われたときといい、僕の運命ってこんなのばっかりだ!
そんな目に遭ってたまるか! と力を入れてみたけど、まったく拘束が解けない。というか、まるで力が入らない。
『真理の天眼』で自分を解析してみたら、重度の麻痺状態だった。
「アマゾネスの秘薬を料理に入れたから、当分お前は動けないぜ。今夜は一晩中オレたちの相手をしてもらう。まずはオレからだ!」
絶体絶命! 今頃リノもフィーリアも拘束されているだろうから、僕を助けに来られるとも思えない。
もはやこれまでか……
ゴオオオオオオオッ! ドドーーン!
観念しそうになったその瞬間、村を揺り動かすような大地の震動と、空気を震わす轟音がこの場を襲った。
さらに、何やら悲鳴のような声と、バキバキといった破壊音まで聞こえてきた。
「な、なんだこの騒ぎは!?」
この突然の異常事態に、ソロルも僕を襲うことを忘れて動揺している。
何かが……村に起こっている!
動けない僕を置いて、ソロルは慌てて部屋から飛び出した。
ここからでは外の様子は分からないが、これはただ事じゃない。
『気配感知』と『探知』の融合スキル『領域支配』で様子を探ると、何かとてつもない存在が近くにいることが分かった。
状況的に間違いなく敵だ。今この村はそいつに襲われている!
くっ、非常時だというのに、僕は麻痺状態でどうすることもできない……と思っていたら、いつの間にか新しいスキルが取得画面に出ていた。
ずっと欲しかった、念願の『異常耐性』スキルだ! これが取得可能になっている!
そうか、アマゾネスの秘薬で重度の麻痺状態にされた上、生命の危機も感じたことにより、ようやくスキルが開花したんだ。まさに奇跡のタイミングだ!
当然取得し、経験値1000万ほど使ってレベルを10にする。
すると、麻痺していた身体がたちまち正常に戻った。あとは力ずくで拘束を外すだけ。
僕はベースレベル300だし、『腕力』スキルもレベル10だ。この程度のことは造作もない。
さらに、『異常耐性』スキルをレベル10にしたことにより、持っていた『耐久』、『頑丈』スキルと融合される。
この三つが融合した結果、『竜体進化』という超強力なスキルに進化した。これは、圧倒的な耐久力が付くスキルらしい。あらゆるダメージを軽減し、そして状態異常攻撃もほぼ無効にする。
これで僕の肉体は大幅に強化された。もう状態異常は怖くないし、並大抵の攻撃では致命的なダメージは受けない。
何がこの村を襲っているのかは分からないが、今の僕なら、そう簡単にはやられないぞ!
ソロルを追って、僕も外へと飛び出した。
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