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3巻
3-1
しおりを挟む第一章 愚王の国
1.無法者たち
僕、ユーリ・ヒロナダは、女神様を助けたことによって、大きな恩恵を授かった。
毎月とてつもない経験値と、非常にレアなスキルをもらえるようになったのだ。
そのおかげで人生順風満帆に過ごせるかと思っていたところ、なんと魔王軍の罠にハマってしまい、幼馴染みのリノ、フィーリア王女と共に、故郷のエーアスト国を追われることになる。
絶望的な状況の中、豊富な経験値と強力なスキルに助けられ、僕らはなんとか活路を見いだす。
アマゾネスのソロルやエルフのフラウがパーティーに加わり、離ればなれになっていた勇者メジェールとも合流。
そして伝説の幻獣である『キャスパルク』のルクと、地上最強のドラゴン『熾光魔竜』も仲間となった。
頼もしい味方がどんどん増え、反撃の準備は着々と整いつつある。
エーアスト奪還まであともう少しの辛抱だ。
僕は心に闘志を燃やしながら、ドラゴン退治のために訪れていたヴィルカーム山脈をあとにした。
ここまで来るのに巨大ゴーレムを使ったけど、帰りはゼインの背に乗って移動している。
来るときには丸三日以上かかったが、ゼインはなんと一時間ちょっとでその距離を飛行した。
これ、ゼインがその気だったら、あっという間に世界は火の海だったなあ。
まあゼインは別に世界を滅ぼす気なんかないらしいし、大昔に暴れたというのも、人間のほうから仕掛けてきたので、その報復をしただけとか。
ゼインは地中で永らく眠っていたけど、ふと不穏な予兆を感じ取り久しぶりに起きてうろついていたら、ドラゴン退治の現場に遭遇したということだ。
一応、同族であるドラゴンを助けたかったらしい。
改めて、ドラゴンたちを殺して悪いことをしちゃったな。テイムした子も、すぐに僕たちのために犠牲になっちゃったし……
でもそのおかげで、討伐メンバーは無事全員生き残ることができた。亡くなったドラゴンたちの分まで、ゼインを大事にしてあげようと思う。
なお、僕が倒したドラゴン五頭分の経験値は、その場にいた討伐メンバー十一人全員に分配された。結果として一人頭230万ほどを獲得。
これでリノたちもさらに強化ができそうだ。
留守番しているメジェールも喜んでくれるだろう。
……と、僕たちがヴィルカーム山脈から数日ぶりに帰ってみると、なんと予想外のことが発生していた!
「何よアレ!? 何が起こってるの?」
「なんだいったいアイツらは……?」
ゼインの背から地上の様子を見て、リノとソロルが叫んだ。
住処を百名ほどの兵士が取り囲んでいたのだ。
兵士たちの前には、メジェールとストーンゴーレムの姿もある。
僕の不可視結界に惑わされず、準備万全でここへ来ているというのは、つまり住処の場所をあらかじめ知っていたってことだ。
ひょっとして、魔王討伐隊が僕を始末しにやってきたのか!?
アマトーレ国はここら一帯を恐れていたし、危険を冒してまでわざわざ来ないものとタカをくくっていたけど、少し認識が甘かったかもしれない。
とりあえず上空からでは詳細が分からない。すぐに助けに行かないと!
「リノたちはこのままゼインの上で待ってて!」
「了解よ! 気を付けてね」
僕はゼインの背から飛び降りた。
◇◇◇
「だから魔王なんていないって言ってるでしょ!」
「ウソをつくな! やましいことがないなら、その巨大な建物をオレたちに調べさせてみろ!」
「そうだ、ぐひひっ、いったい何を隠してるのかなあ?」
「何も隠してなんか……」
ヒュウウゥゥゥンンン…………ズドーーーン!!
「な、なんだっ!? 何か落ちてきたぞ?」
僕は一刻も早く助けに向かうため、スキルレベル10の『飛翔』を全力で使って下降し、地面に激突する勢いで着地した。
「何よいきなり……って、ユーリじゃないの!? なんで空から降ってきたの?」
メジェールが降りてきた僕を見て、驚きの声を上げた。
「ただいまメジェール。遅くなってゴメンよ、大丈夫だった? この人たちはどうしたの?」
「ああ、なんか知らないけど、住処の中を見せろってしつこくて……詰め寄られてただけだから全然平気だけど、そろそろ我慢の限界で、こいつら全員叩き帰そうと思ってたところよ」
メジェールが暴れる前に間に合って良かった。
メジェールがこんなヤツらに負けるはずないけど、まあ手加減を知らない子だからな。
それこそ、収拾のつかない事態になっていたかもしれない。
「なんだ貴様は!?」
「僕はここの主ですが、何か用ですか?」
「あるじだとぉ? お前のようなガキが?」
メジェールに詰め寄っていた兵士が、僕を見て怪訝な顔をした。
あれ、僕が魔王だという噂を知って討伐しに来たんじゃないのか?
そういや、魔王の情報は一般国民には知られてないってシャルフ王が言っていたけど、この兵士たちも知らないで来たのかな?
その兵士が続けて話す。
「ここに山賊のお宝があることは分かってんだぜ。それに女たちもいるんじゃないのか? 痛い目に遭いたくなかったら、さっさとオレたちを中に入れろ!」
「……どこでその情報を?」
「王から直々の命令を受けたんだ。何者かが魔王のフリしてこのアジトを占拠してるから、宝と女を奪ってこいとな」
王様から直接?
フリーデンのシャルフ王がそんなこと命令するわけないし、アマトーレか?
しかし、あのアマトーレがこんな強引な策に出るなんて、少し違和感がある。
ひょっとして……?
「あなたたちはどこの国の方ですか?」
「ああん? ゼルドナに決まってるだろ!」
やはり! ゼルドナだった!
ゼルドナは、この住処の周りにある国のうちの一国だ。
他国は比較的平和主義として知られている中、ゼルドナは非常に好戦的で、周辺国との問題が絶えない。
武力衝突することも少なくないほどだ。
そしてゼルドナ王の独裁国家でもある。
王様は国民から莫大な税を徴収したり、生産物を強引に取り上げたりとやりたい放題で私腹を肥やして、日々贅沢三昧しているという噂だ。
僕らがアマトーレから逃げたとき、ゼルドナには行きたくなかった理由がコレだ。
「どうしてこの場所が分かったんですか? そう簡単には見つからないはずなのに」
「へへっ、オレたちの王がここらの情報を全て知っていたのさ。お宝と女たちが結界の中に隠れているって」
なるほど……
これは推測だが、『剣聖』イザヤたちが僕らの情報を流し、それを知ったゼルドナ王が、山賊の宝や被害女性の存在に思い当たったんだろう。
魔王の噂については、きっと半信半疑なはずだ。信じていたら、兵士をここに送るなんてことはしないだろうからな。
とりあえず、様子を探りに来たってところか。
あわよくば、そのまま財宝を奪い取ろうという魂胆だったに違いない。
ここのだいたいの場所が分かれば、僕の不可視結界があっても侵入は可能だ。
「おら、そこをどきやがれ! 邪魔するとぶっ殺すぞ!」
怒鳴りつけてくる兵士に、僕は冷静に話しかける。
「魔王のフリではなく、本当に魔王がいるとは思わなかったんですか?」
「なぁにが魔王だ? ヒャハハ、そんなヤツ、このオレたちが退治してやるぜ」
「お宝と女はオレたちがもらっていく」
「確認しますが、皆さん全員が同じ意見ですか? もし無理矢理命令に従っている人は、ここから去ってください」
「ばーか言ってんじゃねえ! オレたちを誰だと思ってんだ!」
「泣く子も黙るゼルドナ強奪隊だぞ。オレたちが各地で金や女を奪って王に献上してるんだ」
「フヒヒヒ、どんな女がいるのかなあ? 王に差し出す前にオレたちが味見してやる」
その言葉を合図に、その場の兵士たちが下品な笑い声を上げた。
「まるで山賊ですね」
「けっ、あんなヤツらと一緒にするんじゃねえぜ。オレたちは王の許可のもとにやってるんだ。何もやましいことはねえっ」
「では、魔王に逆らったことを後悔しませんね?」
「ああ? 魔王なんて少しも怖くねえ。今すぐその魔王ってヤツをここに呼んでこい!」
「僕がその魔王だ!」
僕はイザヤたちを脅した『界域魔法』――『四死神酷虐葬送』を撃ち放つ。
直後、兵士たちの周りに巨大な四人の死神王が浮上し、彼らを結界内に封じ込めた。
「お前たちの命、全て死神王に捧げよう。あの世で悔いるがいい」
「こっ、はっ、ひいいいいいいっ……!?」
「な、な、なんだコレはっ!?」
「し、死神王だとっ? ばかな、そんなばかなああああっ」
兵士たちは、あまりの恐怖状態に失禁する。それどころか、泡を吹いて完全に気絶した者もいた。
充分脅かしたところで、死の攻撃が発動する前に魔法をキャンセルする。
そして死神王たちは地面へと還っていった……
「お前たちはこの魔王の怒りに触れた。次にここへ来たら、ゼルドナを滅ぼすぞ。いいか、分かったらそれを王に伝えろ」
「ひょわっ、わきゃりまひたっ、に、二度ときまひぇんっ」
……というやりとりのあと、何故か兵士たちが誰も逃げない。
なんだ? まだ何か用があるのか?
「どうした、逃げないのか? なら本当に殺すけど?」
「ま、待て、待ってふれ、こ、こ、こひが抜けて一歩も動けんのだ……」
ありゃ、そうでしたか。
でもそのままここにいられても邪魔だな。
「分かった、なら逃げる必要がないように殺してやろう」
「い、行く、行きます、今すぐに去りますうううっ」
もう一度脅したら、みんな四つん這いでヨタヨタと逃げていった。
これだけやれば、もう二度と来ないだろう。
ただ、完全に場所がバレちゃったし、今後のことを少し検討しないとな。
◇◇◇
「ぬぁっ、なんなのよこの怪物はあああぁぁっ!?」
上空から降りてきたゼインを見て、メジェールが絶叫した。
「ヴィルカーム山脈で仲間にしたんだ。彼は伝説のドラゴンなんだよ」
「そ、そりゃそうでしょうよ、こんな巨大なドラゴン見たこともないわよ」
あの強気なメジェールが、ゼインを見て珍しく慌てている。
さすがに驚いたようだ。
「エンペラードラゴンだよ。その中でも史上最強と言われてる『熾光魔竜』さ」
「レッドエンペラー!? って、おとぎ話の?」
「知ってるの?」
僕は『熾光魔竜』ゼインの伝説を知らなかったけど、メジェールは知っているみたいだ。
「子供の頃に聞かされたわよ。普通より百倍も大きい真っ赤なドラゴンがいて、悪い子にしてると世界を滅ぼしちゃうって」
百倍って……ゼインはそこまで大きくないけど、まあおとぎ話だから誇張されているんだろうな。
実際、エンペラードラゴン自体がすでに絶滅したと思われているレベルだし、ましてやゼインのことは、遙か昔すぎて存在すら疑われていたくらいだ。
「ほほう、そこの少女は我のことを知っておるようではないか。なかなか感心な少女だ」
「わわっ、ド、ドラゴンが喋った!? どどどどういうこと!?」
ゼインの念話を受けて、あたふたするメジェール。
「テレパシーだよ。クラスメイトにも使えるヤツがいただろ? ゼイン、このメジェールは今の勇者なんだよ。ちなみに、お前が思ってるほどイイ子じゃないぞ」
「ふむ……なるほど。あるじ殿ほどではないが、強い力を感じるな」
ゼインはメジェールの潜在能力を感じ取ったようだ。
まあメジェールが真に覚醒すれば、ゼインよりも強くなるからね。
「ユーリってば、こんな凄いの仲間にしちゃったの? もう敵なしじゃん!」
「いや、そうでもないよ。魔王のほうが強いし、それにゼインより強いドラゴンが魔王の部下にいるってさ」
「口惜しいがな。確かに我よりもヤツらは強い」
「なぁんだ、こんなにデカイのに意外と見かけ倒しなのね」
外見からゼインを過大評価しすぎたようで、メジェールは落胆したように毒づく。
相変わらず口が悪いなあ……悪気はないんだろうけど。
「あるじ殿、なんだこの少女は! この我を見かけ倒しなどと……!」
「だから思ってるほどイイ子じゃないって言っただろ」
「失礼ね。正直に言っただけじゃない」
「ぬおおおお、ならば我の力を見せて……」
ゼインは少々自尊心を傷付けられたみたいで、大きく翼を広げたあと、空に向かってゴオオと咆哮を上げた。
どうやら凄いところを見せてやりたいらしい。
伝説の竜のクセして意外と可愛いとこがあるな。
「ゼイン、力を見せるのはまた今度にしてくれ。メジェール、僕はこのゼインを連れてエーアスト奪還に行こうと思ってるんだけど、どう思う?」
このあとの計画について、メジェールの意見を聞いてみる。
「いいんじゃない? 多分勝てるわよ。アタシもいるしね」
メジェールの返答を皮切りに、みんなも威勢よく言葉を続ける。
「わたくしたちもいますわ」
「オレに任せろって!」
「ご主人様にワタシの活躍をお見せシマスよ!」
「そうね、全員で戦おう!」
フィーリア、ソロル、フラウ、リノ……みんなの感情が一気に燃え上がる。
だけど、彼女たちを危険に晒すわけにはいかない。
「いや、みんなにはここで留守番していてほしい。エーアスト侵攻は僕一人でやるつもりだ」
「待ってよ、あそこにはクラスメイトたちもいるわよ? アタシほどじゃないにしても、彼らもパワーアップしてると思うし、謎の力もあるんでしょ?」
……確かに、メジェールの言う通りかもしれない。
さすがにメジェールほどではないが、クラスメイトたちもおかしな強さを持っていた。
もし洗脳による成長力が僕の想定以上なら、意外な苦戦も考えられる。
場合によっては手加減できず、クラスメイトたちを皆殺しにしなくちゃならない展開も……
極悪非道な山賊ならいくらでも殺せる。
しかし、操られているクラスメイトを、僕は容赦なく手にかけられるだろうか?
それに、イザヤたちの動向も気になる。
もし彼らも洗脳でパワーアップしていたら、前回のように簡単には勝てないかもしれない。
ヴァクラースたちの力も未知数だし、セクエストロ枢機卿の正体が、あのゼインよりも強いという『始祖の竜』という可能性もある。
その場合は、恐らく一筋縄ではいかないだろう。
まさか『異界無限黒洞』を使って大勢の国民を巻き込むわけにもいかないし……
う~ん……僕一人ではさすがに手に余るのかなあ。
なんとか巻き添えを出さずに、上手いことヴァクラースたちだけ倒せないものだろうか。
ゼインが仲間になったとはいえ、ちょっと短絡すぎたかもしれない。
頭を少し冷やして、もう少し作戦を練ることにしよう。
「とりあえず、みんなが無事帰ってきたお祝いをしましょ。何があったのか、そのときに聞かせてもらうわ」
メジェールの提案で、その夜は全員でパーティーをすることに。
メジェールと一緒に留守番をしてた女性たちが、腕によりをかけて料理を作ってくれる。それをワイワイ食べながら、今回経験した色々な出来事をみんなに話す。
大変なドラゴン退治の旅だったけど、楽しい時間を過ごせて疲れが一気に吹っ飛んだ僕らだった。
◇◇◇
戦略についていい策も見つからないまま、数日が過ぎてしまった。
余計な被害者を出さずに国を奪還するっていうのも、なかなか難しいものだなあ。
メジェールたちも何かの度に集まっては、色々と作戦を検討してくれてるようだ。
ただ、何やら和気あいあいとした雰囲気で盛り上がってるから、ちゃんと真面目に考えてるのかは微妙だけど。
ちなみに、ゼインはそれほど食事を必要としないようで、大型草食獣キングボアーを一頭与えれば数日は大丈夫だった。
あれほどの巨体だから、さぞやたくさん食べるのかと思ったけど、大気中にある魔素を吸収すれば体調は維持できるらしい。
ほかの竜族も、その体格に比べると驚くほど少食なのだとか。
なんにせよ、大食いじゃなくて助かったよ。
そして本日も普段通りみんなでレベリングに出掛けていると、留守番をしていたメジェールから『魔導通信機』で連絡が入った。
『魔導通信機』は『魔道具作製』スキルレベル10で作ったモノで、このアイテムを所持する者同士で連絡が取れるという、大変便利な魔道具だ。
「どうしたのメジェール、何かあったのかい?」
「それがね、またアイツらが来たのよ!」
「なんだって!?」
メジェールからの報告を聞いて、急いで住処まで戻ってきてみれば、なんとまたしてもゼルドナの兵士たちが取り囲んでいた!
いったいどういうことだ!? 先日あれほど脅したのに!
以前同様の状況に、メジェールは怒りで爆発寸前といった様相だ。
まずい、メジェールが暴れる前に、なんとか収めないと!
僕たちは慌てて騒動の元に駆け寄る。
「今度はいったいなんの用ですか?」
「おお、来た来た、お前が噂の魔王なんだって? まったく馬鹿げた話だぜ」
この態度からして、新しくやってきたのは先日とは別の兵士であるようだ。
「この前の兵士たちに僕らのことを伝えるようにお願いしたんですが、何も聞いてないんですか?」
「あ~本物の魔王がいたって泣き叫んでたぜ。笑っちまったよ」
「まったくだ、こんなガキ相手に逃げ帰ってきたとはな」
「それを信じなかったんですね?」
「当たり前だ。オレたちをあんな役立たずな強奪隊と一緒にするなよ。怖いモノなんかねえんだ」
「ヤツらは汚れ仕事を任されていただけのクズだ。だが我らは違う。誉れ高いゼルドナ第一騎士団だからな」
なるほど……わざわざ魔王と偽ってまで脅したのに、全然伝わってなかったってことか。
いや、伝えたのに信じてないのか。どうしようもないヤツらだな。
「一応確認しますが、素直に帰る気はありませんか?」
「バカ言ってんじゃねえ! 早いとこ女と宝を出しやがれ! さもないと、お前らただじゃおかねえぞ」
「後ろにいるお嬢ちゃんたちも可愛いじゃねえか、全員オレたちがもらってやるぜ」
「そうですか……忠告はまるで意味がないようですね。なら、魔王の力を思い知れ!」
僕は『竜笛』を吹いた。
コレは『魔道具作製』スキルで作った魔道具だけど、そんなに大したものじゃない。
竜族のみに聞こえる音を発するだけのアイテムだ。
だが、コレを聞いたゼインがすぐさま飛んできた。
ゼインは普段、近くの山で休んでいて、『竜笛』で呼ぶと駆けつけることになっている。
最初は小さかった影がみるみるうちに大きくなり、ゼインが空から地上へと舞い降りた。
「おがあああっ……な、なんだこの巨大なドラゴンはっ!?」
「でかい……デカすぎるぞ!」
「こ、こ、こんなヤツ、見たことねえっ」
ゼルドナ第一騎士団と名乗った男たちは、目の前のゼインを見上げて真っ青な顔になる。
あまりの恐怖に、その場から逃げることすらできないようだ。
「あるじ殿、何か用か?」
「彼らは怖いもの知らずなんだってさ。ゼイン、ちょっと脅かしてやれ」
「承知した」
僕の命令を受けて、ゼインが『輝炎息吹』を地平線目掛けて吐く。
それは二百メートル以上先まで軽々届き、その余波が男たちの頬を熱く撫でた。
「ひっ……ひぎっ……」
「魔王の力を知ったか? 次は皆殺しにする。今すぐ立ち去れ! そしてお前たちの王に告げろ。魔王がお前を許さないとな」
「ひゃいっ、お、おつたえひまひゅうぅ~」
またしても腰が抜けた兵士――いや、騎士団だったか。
彼らはもがくように必死に後退し、待機させていた馬にしがみつき、ほうほうの体で逃げ去った。
ゼルドナか……懲りない国だ。
まさか、このあともまた来るなんてことは……
怒りと勢いに任せたこともあり、つい自分は魔王だって言っちゃったから、次は本気で討伐しに来ることも考えられる。
うーん、今さらだけど我ながら失言だったか。
しかし、ああでも言わないと、前回も今回も引き下がってくれそうもなかったし。
ひょっとすると面倒なことになっちゃうかもなあ……
「ねえユーリ、戦略についてイイこと思いついちゃった!」
メジェールが最高の作戦を思いついたというような晴れ晴れした顔で、僕に策の提案をしてきた。
こんな上機嫌になるくらいだから、余程いい案を思いついたに違いない。
僕はメジェールの次の言葉を待つ。
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