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第8章 英雄の育成
第406話 アリーシアの秘密 -Another side-
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なんという愚かな男……。
1人家路を歩きながら、アリーシアはヒロ・ゼインのことを見下げ果てる。
何も難しいことを頼んだわけではない。
自分のパートナー冒険者になってくれればそれでよかった。
そもそも頼み事などしなくても、この人気アイドルのそばにいられる権利は世界中の男が欲しがっているくらいなのに。
それを、少しも躊躇することなく断ってくるなんて、到底信じられない思いだ。
あれほどの力を持っていながら、無能な落ちこぼれ3人娘に加担しているのも腑に落ちない。
アリーシアはヒロという人間をまるで掴めず、ひょっとして性的嗜好が狂っているのではないかと疑うほどだ。
あの発育不良なサイファのどこがいいのか? まさか『小児性愛者』なんてことは……凍り付くような恐怖と怒りがアリーシアの全身を駆け巡る。
学院では女王的地位をほしいままにしているアリーシアだが、一部の男がサイファを支持していることを知って、それを鬱陶しいと感じていた。
もちろん、自分の能力『渇望の女帝』の障害にもなるが、それより男の目がほかの女に向いていること自体がアリーシアのプライドに触った。
あのヒロという男も、自分ではなくサイファを選ぶというのか?
まったくあのサイファたち3人は目障りな存在だ。
アリーシアは親指の爪をギリと噛む。
それにしても、あそこまで自分に魅了されない男は初めてだった。
アリーシアは、ヒロという男は強がりなどではなく、本当に自分のことをなんとも思ってないのを感じていた。
しょせん男などバカな生き物だ。自分のような女が弱い姿を見せれば、大抵は心を揺り動かされるモノ。
それでもダメなら、ちょっと甘い誘惑をすれば、鼻息を荒くしてこちらの言いなりになるのが普通だ。
たとえ特殊な性癖をもっていようとも、人気アイドルである自分の手にかかれば、問題なく落とせる自信があった。
それが、まるで相手にされないとは……。
実を言うと、ヒロと初めて会ったときから、アリーシアは何か気にかかっていた。
今までに感じたことのない不思議な感覚――そしてその直感は間違いではなかった。
落ちこぼれ3人組を短期間で鍛え上げたことといい、先ほどの破格の強さといい、是非自分のそばにほしい人材だ。
何がなんでも落とす。アリーシアはそう意気込んでいたが、それがあっさり空振りに終わる。
もしものときのため、ジャヴォル学院長から『聖隷の首飾り』を授かっていたのだが、まさかそれすら効かないとは思わなかった。
手に入らなければ、よけい欲しくなるもの。
先ほどは二度と会うことはないなどと捨て台詞を言ってしまったが、ヒロへの想いが尾を引いているのが自分でも分かる。
そもそも、いつも冷静を心掛けている自分が、どういうわけか心を乱されてしまった。
『魔王ユーリ』について、愛してると教えてしまったのもヒロが初めてだ。
あのとき、ふと自分の心情をバラしたくなってしまったのだ。
何故か気になる男――ヒロ・ゼイン。
いや、自分が愛しているのは『魔王ユーリ』様のみ。
それ以外の人間は、全て自分が利用するだけの存在だ。
しかし、何故アリーシアはここまで歪んだ思想を持ってしまったのか。
元々アリーシアはとてもやさしい子だった。
それどころか、今でも本当は他人を思いやることができる普通の子だ。
なのに、アリーシアはあえて全てを憎んでいる。何故なら……
グランディス帝国にて生まれたアリーシアではあるが、その人生はこれまでただただ不幸な道のりを送ってきた。
その原因は家庭にあった。
母は美しくてやさしい女だったが、夫に選んだ男が最低の人間だったのだ。
外見は良かったがまさにクズの見本のような男で、最初こそアリーシアの母にやさしく接していたものの、結婚してからは日々酷い虐待ばかり行っていた。
わがまま放題で気に入らないことがあればすぐに殴り、そのくせ働きもせずに浮気やギャンブルで散財し、時には犯罪行為すら平気で行う傍若無人ぶり。
そしてそのツケは全てアリーシアの母に返ってきた。
それでも、幼いアリーシアのためにと頑張ってきた母であったが、とうとう別れる決意をする。
だが、それを素直に聞くような男ではなかった。
掴んだ金づるは手放さない。
あらゆる手を使って離婚を阻止しようとした挙げ句、それでも妻の決意が変わらぬと知ると、最悪の裏切り行為をする。
アリーシアの母の秘密を街中にバラしたのだ。
実はアリーシアの母が授かった能力は、『障り巫者』という呪われた称号だった。
それは相手に触れることによって、身体の一部に病を発生させることができた。
能力が上がれば重病にさえすることも可能だったが、アリーシアの母はベースレベルも低く、ちょっとした体調不良にさせる程度の効果しかなかった。
とはいえ、やさしい彼女はこの能力を使ったことは一度もない。
周りを不安にさせたくないので、アリーシアの母はこの能力を隠していたのだが、しかしこのことを知った人たちは、街に禍いをもたらす魔女としてアリーシアの母を迫害し始めた。
折りが悪いことに、そのときたまたま流行病があったため、それもアリーシアの母の仕業ではないかと疑われてしまう。
当然のようにアリーシアもいじめられ、もはや街にはいられないと感じた母は、アリーシアを連れて遠い地へと去っていった。
移住した地でも、何やらワケありの母子だと周りから見られ、苦しい生活は続いていた。
アリーシアもいじめられる日々だったが、母譲りの優しい性格だったため、余計な心配をかけないよう精一杯笑顔を作って母を支えていた。
つらい毎日だったが、しかし、育っていくうちに少しずつ周りが変わり始める。
アリーシアが、見目麗しい絶世の美少女と成長していったからだ。
これまで石を投げてきた男子たちが、1人また1人と自分に告白してきた。
始めこそ、自分をダマして酷いことをするつもりなのではと疑っていたアリーシアだったが、男たちの本気の様子を見て自分の魅力を認識する。
自分をさんざんいじめてきた男たちが、自分の言いなりになっている。この事実に気付いたとき、愉快でたまらなかった。
世界が変わって見えた。もう自分は弱い存在じゃない。
そんな、ようやく苦しい状況から抜け出し始めた頃、アリーシアの母が由緒ある貴族の跡取り息子と結婚することになった。
アリーシアも会ったが、素敵な笑顔のやさしそうな男だった。
母は自分を育てるために身を尽くして頑張ってくれた。今度こそ幸せになってもらいたい。
アリーシアは母の結婚を祝福した。
しかし、ここでさらなる悲劇が起こる。
ある日、母の外出中に、男がアリーシアに襲いかかったのだ。
血は繋がってないが、穏やかでやさしい父だと信頼していたのに。
それが、暴力を振るいながらまだ12歳のアリーシアを陵辱しようとしてきた。
男は『小児性愛者』だったのだ。
男の目的は母ではなく、最初からアリーシアだった。この機会を窺うために、やさしい夫、やさしい父を演じていたのだ。
アリーシアは必死に抵抗するが、大人の力には敵わない。
そのとき、忘れ物に気付いた母親が帰ってきて、この事態を目撃する。
異常な光景に衝撃を受けながらも、我が子を必死に助けるアリーシアの母。
暴れる男を突き飛ばし、からくもアリーシアを助けることができたが、男がよろけた方向が悪く、転倒したときにたまたま強く頭部を打ってしまい、そのまま亡くなってしまった。
アリーシアの母は殺人の罪で逮捕された。
もちろん、完全な正当防衛なのだが、相手は由緒ある貴族。ロクな調査などもされず、不当な裁判で死刑判決を言い渡されてしまう。
アリーシアは母の無実を必死に訴える。
しかし、街の有力者である貴族に逆らえる者などいなかった。
誰も助けてくれず、自分を必死に育ててくれたやさしい母は目の前で処刑されてしまった。
ヒロには両親と一緒に住んでいると言ったが、すでにアリーシアに家族はいなかったのだ。
絶望の底にたたき落とされたあと、孤独の身となったアリーシアは孤児院に入れられた。
殺人者の娘となったアリーシアに対し、周りの者はもはや容赦がなかった。
男たちから襲われそうになったことも何度もあり、アリーシアは日々怯えながら暮らしていた。
自分にはもう生きる場所がない。いっそ死んで母のもとに行きたい……。
だがそんなある日、もう一度アリーシアの人生が変わる瞬間がやってきた。
15歳の通過儀礼『神授の儀』だ。
そこでアリーシアは、『渇望の女帝』という強力な称号を授かることになる。
たまたまそのことを知ったジャヴォル学院長が、色々と手配してアリーシアをファーブラ王都へと呼び寄せた。
アリーシアの身分なども全部作り替えて、アイドルとして売り出したのもジャヴォルだ。
よって、アリーシアにとってはジャヴォルは恩人のような存在だが、もはやアリーシアは誰も信用することはなかった。
全ての人間は、自分が利用するだけの存在だ。
そして母を奪ったこの世界に対する『復讐』の二文字。それしか頭にない。
『渇望の女帝』はそのために授かった力なのだ。
自分の生きる目的を見つけたアリーシア。
そんなとき、『魔王ユーリ』という存在を知る。
今までさんざん騙されてきたアリーシアだ。『英雄』と言われても素直に信じることなんてできない。
他人のために命を懸けて魔王軍と戦うなんて、そんな善人など本当にいるのか?
少なくとも、自分が出会ってきた人間はクズばかりだ。
魔王軍を倒したというのもウソで、実際のところは奴らとグルなのでは?
何が真実かは分からない。しかし、『魔王ユーリ』がとてつもない力を持っていることだけは間違いないようだ。
その『魔王ユーリ』があの憎き帝国に宣戦布告をしたと知ったとき、アリーシアの胸は震えた。
ユーリ様なら、自分から全てを奪ったグランディス帝国を滅ぼしてくれる。
この冷酷な世界を破壊してくれるなら、魔王でも英雄でもなんでもいい。
自分も強くなって、ユーリ様の手伝いをしたい。
そのために日々鍛錬に励み、そして多くの男たちを誘惑しているのだ。
ユーリ様と力を合わせて世界を破壊する――それがアリーシアの願いだった。
自分にもあのクズな男の血が流れているのだ。世界を破滅させて何が悪い。
アリーシアは吐き捨てるような思いで世界を憎む。
あのヒロという男も仲間に引き入れれば、きっとユーリ様も喜んでくれるはず。
ただそれだけ。ヒロという男はそのためだけの存在だ。
だが…………アリーシアは自分を見つめるヒロの目が忘れられないのだった。
1人家路を歩きながら、アリーシアはヒロ・ゼインのことを見下げ果てる。
何も難しいことを頼んだわけではない。
自分のパートナー冒険者になってくれればそれでよかった。
そもそも頼み事などしなくても、この人気アイドルのそばにいられる権利は世界中の男が欲しがっているくらいなのに。
それを、少しも躊躇することなく断ってくるなんて、到底信じられない思いだ。
あれほどの力を持っていながら、無能な落ちこぼれ3人娘に加担しているのも腑に落ちない。
アリーシアはヒロという人間をまるで掴めず、ひょっとして性的嗜好が狂っているのではないかと疑うほどだ。
あの発育不良なサイファのどこがいいのか? まさか『小児性愛者』なんてことは……凍り付くような恐怖と怒りがアリーシアの全身を駆け巡る。
学院では女王的地位をほしいままにしているアリーシアだが、一部の男がサイファを支持していることを知って、それを鬱陶しいと感じていた。
もちろん、自分の能力『渇望の女帝』の障害にもなるが、それより男の目がほかの女に向いていること自体がアリーシアのプライドに触った。
あのヒロという男も、自分ではなくサイファを選ぶというのか?
まったくあのサイファたち3人は目障りな存在だ。
アリーシアは親指の爪をギリと噛む。
それにしても、あそこまで自分に魅了されない男は初めてだった。
アリーシアは、ヒロという男は強がりなどではなく、本当に自分のことをなんとも思ってないのを感じていた。
しょせん男などバカな生き物だ。自分のような女が弱い姿を見せれば、大抵は心を揺り動かされるモノ。
それでもダメなら、ちょっと甘い誘惑をすれば、鼻息を荒くしてこちらの言いなりになるのが普通だ。
たとえ特殊な性癖をもっていようとも、人気アイドルである自分の手にかかれば、問題なく落とせる自信があった。
それが、まるで相手にされないとは……。
実を言うと、ヒロと初めて会ったときから、アリーシアは何か気にかかっていた。
今までに感じたことのない不思議な感覚――そしてその直感は間違いではなかった。
落ちこぼれ3人組を短期間で鍛え上げたことといい、先ほどの破格の強さといい、是非自分のそばにほしい人材だ。
何がなんでも落とす。アリーシアはそう意気込んでいたが、それがあっさり空振りに終わる。
もしものときのため、ジャヴォル学院長から『聖隷の首飾り』を授かっていたのだが、まさかそれすら効かないとは思わなかった。
手に入らなければ、よけい欲しくなるもの。
先ほどは二度と会うことはないなどと捨て台詞を言ってしまったが、ヒロへの想いが尾を引いているのが自分でも分かる。
そもそも、いつも冷静を心掛けている自分が、どういうわけか心を乱されてしまった。
『魔王ユーリ』について、愛してると教えてしまったのもヒロが初めてだ。
あのとき、ふと自分の心情をバラしたくなってしまったのだ。
何故か気になる男――ヒロ・ゼイン。
いや、自分が愛しているのは『魔王ユーリ』様のみ。
それ以外の人間は、全て自分が利用するだけの存在だ。
しかし、何故アリーシアはここまで歪んだ思想を持ってしまったのか。
元々アリーシアはとてもやさしい子だった。
それどころか、今でも本当は他人を思いやることができる普通の子だ。
なのに、アリーシアはあえて全てを憎んでいる。何故なら……
グランディス帝国にて生まれたアリーシアではあるが、その人生はこれまでただただ不幸な道のりを送ってきた。
その原因は家庭にあった。
母は美しくてやさしい女だったが、夫に選んだ男が最低の人間だったのだ。
外見は良かったがまさにクズの見本のような男で、最初こそアリーシアの母にやさしく接していたものの、結婚してからは日々酷い虐待ばかり行っていた。
わがまま放題で気に入らないことがあればすぐに殴り、そのくせ働きもせずに浮気やギャンブルで散財し、時には犯罪行為すら平気で行う傍若無人ぶり。
そしてそのツケは全てアリーシアの母に返ってきた。
それでも、幼いアリーシアのためにと頑張ってきた母であったが、とうとう別れる決意をする。
だが、それを素直に聞くような男ではなかった。
掴んだ金づるは手放さない。
あらゆる手を使って離婚を阻止しようとした挙げ句、それでも妻の決意が変わらぬと知ると、最悪の裏切り行為をする。
アリーシアの母の秘密を街中にバラしたのだ。
実はアリーシアの母が授かった能力は、『障り巫者』という呪われた称号だった。
それは相手に触れることによって、身体の一部に病を発生させることができた。
能力が上がれば重病にさえすることも可能だったが、アリーシアの母はベースレベルも低く、ちょっとした体調不良にさせる程度の効果しかなかった。
とはいえ、やさしい彼女はこの能力を使ったことは一度もない。
周りを不安にさせたくないので、アリーシアの母はこの能力を隠していたのだが、しかしこのことを知った人たちは、街に禍いをもたらす魔女としてアリーシアの母を迫害し始めた。
折りが悪いことに、そのときたまたま流行病があったため、それもアリーシアの母の仕業ではないかと疑われてしまう。
当然のようにアリーシアもいじめられ、もはや街にはいられないと感じた母は、アリーシアを連れて遠い地へと去っていった。
移住した地でも、何やらワケありの母子だと周りから見られ、苦しい生活は続いていた。
アリーシアもいじめられる日々だったが、母譲りの優しい性格だったため、余計な心配をかけないよう精一杯笑顔を作って母を支えていた。
つらい毎日だったが、しかし、育っていくうちに少しずつ周りが変わり始める。
アリーシアが、見目麗しい絶世の美少女と成長していったからだ。
これまで石を投げてきた男子たちが、1人また1人と自分に告白してきた。
始めこそ、自分をダマして酷いことをするつもりなのではと疑っていたアリーシアだったが、男たちの本気の様子を見て自分の魅力を認識する。
自分をさんざんいじめてきた男たちが、自分の言いなりになっている。この事実に気付いたとき、愉快でたまらなかった。
世界が変わって見えた。もう自分は弱い存在じゃない。
そんな、ようやく苦しい状況から抜け出し始めた頃、アリーシアの母が由緒ある貴族の跡取り息子と結婚することになった。
アリーシアも会ったが、素敵な笑顔のやさしそうな男だった。
母は自分を育てるために身を尽くして頑張ってくれた。今度こそ幸せになってもらいたい。
アリーシアは母の結婚を祝福した。
しかし、ここでさらなる悲劇が起こる。
ある日、母の外出中に、男がアリーシアに襲いかかったのだ。
血は繋がってないが、穏やかでやさしい父だと信頼していたのに。
それが、暴力を振るいながらまだ12歳のアリーシアを陵辱しようとしてきた。
男は『小児性愛者』だったのだ。
男の目的は母ではなく、最初からアリーシアだった。この機会を窺うために、やさしい夫、やさしい父を演じていたのだ。
アリーシアは必死に抵抗するが、大人の力には敵わない。
そのとき、忘れ物に気付いた母親が帰ってきて、この事態を目撃する。
異常な光景に衝撃を受けながらも、我が子を必死に助けるアリーシアの母。
暴れる男を突き飛ばし、からくもアリーシアを助けることができたが、男がよろけた方向が悪く、転倒したときにたまたま強く頭部を打ってしまい、そのまま亡くなってしまった。
アリーシアの母は殺人の罪で逮捕された。
もちろん、完全な正当防衛なのだが、相手は由緒ある貴族。ロクな調査などもされず、不当な裁判で死刑判決を言い渡されてしまう。
アリーシアは母の無実を必死に訴える。
しかし、街の有力者である貴族に逆らえる者などいなかった。
誰も助けてくれず、自分を必死に育ててくれたやさしい母は目の前で処刑されてしまった。
ヒロには両親と一緒に住んでいると言ったが、すでにアリーシアに家族はいなかったのだ。
絶望の底にたたき落とされたあと、孤独の身となったアリーシアは孤児院に入れられた。
殺人者の娘となったアリーシアに対し、周りの者はもはや容赦がなかった。
男たちから襲われそうになったことも何度もあり、アリーシアは日々怯えながら暮らしていた。
自分にはもう生きる場所がない。いっそ死んで母のもとに行きたい……。
だがそんなある日、もう一度アリーシアの人生が変わる瞬間がやってきた。
15歳の通過儀礼『神授の儀』だ。
そこでアリーシアは、『渇望の女帝』という強力な称号を授かることになる。
たまたまそのことを知ったジャヴォル学院長が、色々と手配してアリーシアをファーブラ王都へと呼び寄せた。
アリーシアの身分なども全部作り替えて、アイドルとして売り出したのもジャヴォルだ。
よって、アリーシアにとってはジャヴォルは恩人のような存在だが、もはやアリーシアは誰も信用することはなかった。
全ての人間は、自分が利用するだけの存在だ。
そして母を奪ったこの世界に対する『復讐』の二文字。それしか頭にない。
『渇望の女帝』はそのために授かった力なのだ。
自分の生きる目的を見つけたアリーシア。
そんなとき、『魔王ユーリ』という存在を知る。
今までさんざん騙されてきたアリーシアだ。『英雄』と言われても素直に信じることなんてできない。
他人のために命を懸けて魔王軍と戦うなんて、そんな善人など本当にいるのか?
少なくとも、自分が出会ってきた人間はクズばかりだ。
魔王軍を倒したというのもウソで、実際のところは奴らとグルなのでは?
何が真実かは分からない。しかし、『魔王ユーリ』がとてつもない力を持っていることだけは間違いないようだ。
その『魔王ユーリ』があの憎き帝国に宣戦布告をしたと知ったとき、アリーシアの胸は震えた。
ユーリ様なら、自分から全てを奪ったグランディス帝国を滅ぼしてくれる。
この冷酷な世界を破壊してくれるなら、魔王でも英雄でもなんでもいい。
自分も強くなって、ユーリ様の手伝いをしたい。
そのために日々鍛錬に励み、そして多くの男たちを誘惑しているのだ。
ユーリ様と力を合わせて世界を破壊する――それがアリーシアの願いだった。
自分にもあのクズな男の血が流れているのだ。世界を破滅させて何が悪い。
アリーシアは吐き捨てるような思いで世界を憎む。
あのヒロという男も仲間に引き入れれば、きっとユーリ様も喜んでくれるはず。
ただそれだけ。ヒロという男はそのためだけの存在だ。
だが…………アリーシアは自分を見つめるヒロの目が忘れられないのだった。
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