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第8章 英雄の育成
第407話 招かれざる異神 -Another side-
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「バッカやろうっ、ふ、ふざけた命令出しやがって! ジャヴォル、お前このオレを騙しやがったな!?」
ファーブラ王都から少し離れた場所にある、土と岩だけの不毛な土地――およそ誰も近寄らないその荒野の下に、秘密の地下室が存在していた。
正確には地下室ではなく、天然の洞穴なのだが。
そこにジャヴォルと黒影の男――『六影法師』が訪れていた。
怒鳴り声を上げたのは六影法師だ。
「相手はSランク冒険者だとお前は言ったよな? とんでもないウソをつきやがって……危うく死にかけたぞ!」
「いや、あの男はSランク冒険者のはずだ。裏も取ってある、間違いない」
「じゃあその情報がガセなんだろう。くっ……思い出すだけで全身に粟が立つぜ。あんな恐ろしい怪物、今までに見たことねえっ」
「ヤ、ヤツはそれほど強いというのか!?」
「ケタ外れの化け物だ。オレが100人いても倒せる気がしねえ。あんなのに勝てるヤツなんて考えられねえぜ」
「そんなバカな……」
思わぬ真実を知って、ジャヴォルの表情が歪む。
六影法師も、ヒロの強さを思い出して背筋が凍り付く。
六影法師の持つ称号はSSランクの『六連の魂』というモノで、自分とまったく同じ力を持つ分身――ドッペルゲンガーを6体出現させる能力だ。
この力のおかげで、六影法師はおよそピンチらしい状況になったことがなかった。
分身体とは情報が共有できるため、危険な場所には自分が行かずに分身体を送っていた。
他人と会う場合も分身体を使っていたので、本体と直接会った人間はほぼいない。
この場でジャヴォルと会話しているのも分身体だ。本体は別の場所にいる。
もちろん戦闘でも、本体は戦わずに分身体に襲わせる。とはいえ、能力の届く範囲は限られているので、分身体の近くに本体はいるのだが。
ヒロを襲うときに近くにいたのも、分身体を操るためだ。
自分だけは安全圏にいながら、命知らずな分身体を使って相手を襲う。
六影法師は殺し屋組織『嘆きの楽園』にこそ所属してなかったが、この無敵の能力によって、裏の世界では知る人ぞ知る存在であった。
『嘆きの楽園』が壊滅した今、自分こそが最強の暗殺者だと思っていたほどだ。
今回も簡単な仕事だと侮ってヒロを狙ってしまったわけだが、思いもよらない返り討ちに遭って肝を冷やすことに。
あのとき必殺の間合いでヒロに襲いかかったが、反撃など考えられないタイミングで、6体同時に斬り捨てられた。
まるで時間を止められたようだった。
あんなやられ方をしたら、もはやどう襲っていいかすら分からない。
そしてあの男――ヒロは、六影法師本体の気配も掴んでいた。
六影法師は心臓を鷲掴みにされた気分だった。
瞬時に逃げ出さなければ、恐らく自分はやられていただろう。いや、女がそばにいなければ、アイツから逃げることすら不可能だったに違いない。
六影法師の背筋に、もう一度冷たいモノが走った。
「とにかく、この仕事からはオレは降りる。あんなヤツ相手にしてたら命がいくつあっても足りねえ。ジャヴォル、お前も諦めたほうがいいぜ」
分身体は、破壊されても時間が経てば何度でも復活する。
だが、もう一度ヒロを襲う気には到底なれなかった。
一流の殺し屋は何より自分の命を大事にする。賢明な判断だろう。
「待て六影法師、依頼を断るというのなら、お前をこのまま帰すわけにはいかんぞ」
この場を去ろうとする六影法師を見て、ジャヴォルがそれを引き止める。
「なんだ、このオレに脅しか? お前ごときにどうかされるオレじゃねえぜ。何より、オレは分身体だ。本体は別にいるんだぜ?」
「そんなことは知っておる。ワシをナメてもらっては困るな。あのヒロという男を殺すのが無理なら、せめてこの場所まで連れてこい。それくらいはできるだろ?」
「イヤだね。アイツに関わるのは金輪際ごめんだ。アレはお前が考えるよりも遙かに危険な男だぞ。絶対に敵に回しちゃならねえ存在だ」
「……もう一度だけ言う。あやつをここへ連れてこい。断るならお前を殺す」
「お前がこのオレを? 笑わせるぜ、やれるものならやってみろ!」
「仕方ないな。では死ね」
「その前にオレがお前を殺してや……」
ブシャッ……!
ジャヴォルの前にいた黒い男――六影法師の分身体が、巨大な手で両側から叩き潰されたように、ペシャンと薄く伸ばされてそのまま消滅する。
それと同じ瞬間、近くに存在していた本体も叩き潰されて死亡した。
『超能力』スキルの1つである『念動力』に近い能力だった。
ジャヴォルがそんな能力を持っていたのか?
「さすが魔神様、お見事でございます」
ジャヴォルは自分以外誰もいない部屋で、独り言のように何かに話しかける。
――ジャヴォルよ……まだ準備は整わぬのか? 待ちくたびれたぞ――
すると、地の底から思念波ともいえる声が発せられ、その場の空間全体に響き渡った。
いったい何者なのか?
「もう少しでございます。ただ、ここにきて思わぬ邪魔が入りまして……」
――そいつをここに連れてこい。我が跡形もなく消してやる――
「それが……そう簡単にもいかない状況でして……」
――ぐ……我の軍団さえいれば、その程度のことなどどうとでもなろうに。歯痒くてたまらぬ――
「もう少しの辛抱です。あと少しだけお待ちを……」
ジャヴォルが『魔神』と呼んだ存在。
それはまさしく魔神だった。それも異世界から来た闇の神。
そんな存在が、何故この世界イストリアにいるのか?
かつてこの魔神は、自らがいた世界で暴虐の限りを尽くし、全てを破壊しようとしていた。
魔神という名に相応しい、ただひたすら無敵の存在。
しかし、闇が広がれば対抗する力は生まれるもので、その世界にも救世主――いわば『勇者』が現れたのだった。
死闘の末に魔神はその身を封印され、異界へと追放される。
そして辿り着いたのがこの世界イストリアだった。
魔神を追放した勇者は、別の世界で魔神が復活しないよう、封印されているのは危険な存在と分かる印も付けた。
ある程度の文明があれば、その警告も解読できるはず。
解読できない程度の文明なら、封印を解くことも叶わない。
そう思って送り出したのだろうが、運が悪いことに、最初にこの封印を発見したのはこの世界の異端児――悪魔を崇拝する者だった。
人類の敵である悪魔なのに、何故かそれを信仰する者がいつの時代にも存在した。
ジャヴォルたちの教団もその1つで、遙か昔にたまたまこの封印の間を発見したらしい。
そう、ジャヴォルたちは悪魔崇拝者の集団だったのだ。
この場所を発見した悪魔崇拝者たちは、警告を解読するうちに封印されているのが異界の魔神であることを知る。
彼らは大いに喜んだ。
悪魔どころか、魔神の力を手に入れれば、この世界は自分たちの思うがままだ。
その思想は長年受け継がれ、現在のジャヴォルたちに至る。
ところが、あと少しで封印が解けるというときに、この世界の魔王が復活の兆しを見せ始めた。
混乱の世になってしまえば、魔神復活などに構っていられなくなる。
それどころか、魔王に世界を滅ぼされてしまうかもしれない。
悪魔崇拝者の望みは、世界の破滅などではなく、悪魔の力を借りることだ。
悪魔こそ、自身の願いを叶えてくれる存在だと思っている。けっして自滅したいわけではない。
よって、魔王の復活を歓迎するようなことはなかった――魔王が願いを叶えてくれるというのなら別だが。
焦ったジャヴォルたちは、魔王の存在を魔神に伝えると、このような言葉が返ってきた。
「この世界の魔王など、我が簡単に始末してやる」
魔神いわく、この世界の住人は脆弱だと。
自分がいた元の世界は、ここより遙かに強い者たちが多数存在していたと。
自分が復活すれば、この世界を簡単に制圧してやると。
それを聞き、ジャヴォルたちは魔神復活を急ぐことにした。英雄養成学院を作ったのもそのためだ。
若くて純粋な魔力を大量に捧げることによって、異界のゲートが開くらしい。
さすれば、魔神の封印も弱まり、復活することができるというのだ。
アリーシアやデミトフたちを支援しているのもこれが目的で、つまり良質な生け贄を作るために、世界中から優秀な生徒たちを集めて急ピッチで育てていたというわけである。
アリーシアを帝国で見つけたというのも偶然ではなく、最初から素質のある子供たちを探していたからだ。
さて、計画を進める中で、問題となるのは魔神の制御だ。
口では上手いことを言っても、魔神はジャヴォルたちの言うことを聞いてくれない可能性があった。
さすがのジャヴォルたちも、迂闊に復活させることはできない。
こんな危険な存在を復活させるからには、その手綱を握る必要がある。
そこでカギとなるのは『契約』だ。
悪魔召喚でも同様に、悪魔との契約が必要となってくる。
でないと、あっさり裏切られてしまう。
契約の効力は絶対だ。
それは恐らく異世界の魔神相手でも通用するだろう。
しかし、これほどの相手を服従させるには、大いなる力が必要となる。
長い時を重ねて研究した結果、巨大な魔法陣で契約すれば、その力を制御できるだろうとのことだった。
膨大な魔力を魔法陣でかき集め、それを使って魔神と契約をする。
幸いファーブラは信仰のあつい国で、その王都には魔力が溢れている。魔神封印の地からも近く、まさに文句のない場所だった。
この王都の中に巨大魔法陣を作れば、魔神を制御できるはず。
早速その計画を進め、魔法陣の重要なポイントとなる地点を買い占める。
ところがそのうちの1つが、サイファたちがいる孤児院だった。
その場所を手に入れない限り、魔法陣は完成しない。計画は進まず、面倒な行政まで邪魔に入り、ジャヴォルたちは再び焦り始める。
そしてあれこれと画策しているうちに現れたのがヒロ――ユーリだった。
『ナンバーズ』のエンギとも懇意な間柄で、なんとも危険な男だ。
暗殺も失敗に終わり、これ以上モタモタしていると、状況はさらに悪化するだろう。
多少強引にでも計画を進めないと……。
ジャヴォルは次の手を考えながらその場を離れるのだった。
***********************************
本日コミカライズ第7話が更新されました!
今回はメジェールと一度別れるシーンがありますが、互いの絆を意識しながらすれ違っていくような演出に原作者ながら凄いグッときました。
小説版ではサクッと別れちゃってますからね。こういう場面を絵として見ることができるのは、コミカライズ版ならではの醍醐味かと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ファーブラ王都から少し離れた場所にある、土と岩だけの不毛な土地――およそ誰も近寄らないその荒野の下に、秘密の地下室が存在していた。
正確には地下室ではなく、天然の洞穴なのだが。
そこにジャヴォルと黒影の男――『六影法師』が訪れていた。
怒鳴り声を上げたのは六影法師だ。
「相手はSランク冒険者だとお前は言ったよな? とんでもないウソをつきやがって……危うく死にかけたぞ!」
「いや、あの男はSランク冒険者のはずだ。裏も取ってある、間違いない」
「じゃあその情報がガセなんだろう。くっ……思い出すだけで全身に粟が立つぜ。あんな恐ろしい怪物、今までに見たことねえっ」
「ヤ、ヤツはそれほど強いというのか!?」
「ケタ外れの化け物だ。オレが100人いても倒せる気がしねえ。あんなのに勝てるヤツなんて考えられねえぜ」
「そんなバカな……」
思わぬ真実を知って、ジャヴォルの表情が歪む。
六影法師も、ヒロの強さを思い出して背筋が凍り付く。
六影法師の持つ称号はSSランクの『六連の魂』というモノで、自分とまったく同じ力を持つ分身――ドッペルゲンガーを6体出現させる能力だ。
この力のおかげで、六影法師はおよそピンチらしい状況になったことがなかった。
分身体とは情報が共有できるため、危険な場所には自分が行かずに分身体を送っていた。
他人と会う場合も分身体を使っていたので、本体と直接会った人間はほぼいない。
この場でジャヴォルと会話しているのも分身体だ。本体は別の場所にいる。
もちろん戦闘でも、本体は戦わずに分身体に襲わせる。とはいえ、能力の届く範囲は限られているので、分身体の近くに本体はいるのだが。
ヒロを襲うときに近くにいたのも、分身体を操るためだ。
自分だけは安全圏にいながら、命知らずな分身体を使って相手を襲う。
六影法師は殺し屋組織『嘆きの楽園』にこそ所属してなかったが、この無敵の能力によって、裏の世界では知る人ぞ知る存在であった。
『嘆きの楽園』が壊滅した今、自分こそが最強の暗殺者だと思っていたほどだ。
今回も簡単な仕事だと侮ってヒロを狙ってしまったわけだが、思いもよらない返り討ちに遭って肝を冷やすことに。
あのとき必殺の間合いでヒロに襲いかかったが、反撃など考えられないタイミングで、6体同時に斬り捨てられた。
まるで時間を止められたようだった。
あんなやられ方をしたら、もはやどう襲っていいかすら分からない。
そしてあの男――ヒロは、六影法師本体の気配も掴んでいた。
六影法師は心臓を鷲掴みにされた気分だった。
瞬時に逃げ出さなければ、恐らく自分はやられていただろう。いや、女がそばにいなければ、アイツから逃げることすら不可能だったに違いない。
六影法師の背筋に、もう一度冷たいモノが走った。
「とにかく、この仕事からはオレは降りる。あんなヤツ相手にしてたら命がいくつあっても足りねえ。ジャヴォル、お前も諦めたほうがいいぜ」
分身体は、破壊されても時間が経てば何度でも復活する。
だが、もう一度ヒロを襲う気には到底なれなかった。
一流の殺し屋は何より自分の命を大事にする。賢明な判断だろう。
「待て六影法師、依頼を断るというのなら、お前をこのまま帰すわけにはいかんぞ」
この場を去ろうとする六影法師を見て、ジャヴォルがそれを引き止める。
「なんだ、このオレに脅しか? お前ごときにどうかされるオレじゃねえぜ。何より、オレは分身体だ。本体は別にいるんだぜ?」
「そんなことは知っておる。ワシをナメてもらっては困るな。あのヒロという男を殺すのが無理なら、せめてこの場所まで連れてこい。それくらいはできるだろ?」
「イヤだね。アイツに関わるのは金輪際ごめんだ。アレはお前が考えるよりも遙かに危険な男だぞ。絶対に敵に回しちゃならねえ存在だ」
「……もう一度だけ言う。あやつをここへ連れてこい。断るならお前を殺す」
「お前がこのオレを? 笑わせるぜ、やれるものならやってみろ!」
「仕方ないな。では死ね」
「その前にオレがお前を殺してや……」
ブシャッ……!
ジャヴォルの前にいた黒い男――六影法師の分身体が、巨大な手で両側から叩き潰されたように、ペシャンと薄く伸ばされてそのまま消滅する。
それと同じ瞬間、近くに存在していた本体も叩き潰されて死亡した。
『超能力』スキルの1つである『念動力』に近い能力だった。
ジャヴォルがそんな能力を持っていたのか?
「さすが魔神様、お見事でございます」
ジャヴォルは自分以外誰もいない部屋で、独り言のように何かに話しかける。
――ジャヴォルよ……まだ準備は整わぬのか? 待ちくたびれたぞ――
すると、地の底から思念波ともいえる声が発せられ、その場の空間全体に響き渡った。
いったい何者なのか?
「もう少しでございます。ただ、ここにきて思わぬ邪魔が入りまして……」
――そいつをここに連れてこい。我が跡形もなく消してやる――
「それが……そう簡単にもいかない状況でして……」
――ぐ……我の軍団さえいれば、その程度のことなどどうとでもなろうに。歯痒くてたまらぬ――
「もう少しの辛抱です。あと少しだけお待ちを……」
ジャヴォルが『魔神』と呼んだ存在。
それはまさしく魔神だった。それも異世界から来た闇の神。
そんな存在が、何故この世界イストリアにいるのか?
かつてこの魔神は、自らがいた世界で暴虐の限りを尽くし、全てを破壊しようとしていた。
魔神という名に相応しい、ただひたすら無敵の存在。
しかし、闇が広がれば対抗する力は生まれるもので、その世界にも救世主――いわば『勇者』が現れたのだった。
死闘の末に魔神はその身を封印され、異界へと追放される。
そして辿り着いたのがこの世界イストリアだった。
魔神を追放した勇者は、別の世界で魔神が復活しないよう、封印されているのは危険な存在と分かる印も付けた。
ある程度の文明があれば、その警告も解読できるはず。
解読できない程度の文明なら、封印を解くことも叶わない。
そう思って送り出したのだろうが、運が悪いことに、最初にこの封印を発見したのはこの世界の異端児――悪魔を崇拝する者だった。
人類の敵である悪魔なのに、何故かそれを信仰する者がいつの時代にも存在した。
ジャヴォルたちの教団もその1つで、遙か昔にたまたまこの封印の間を発見したらしい。
そう、ジャヴォルたちは悪魔崇拝者の集団だったのだ。
この場所を発見した悪魔崇拝者たちは、警告を解読するうちに封印されているのが異界の魔神であることを知る。
彼らは大いに喜んだ。
悪魔どころか、魔神の力を手に入れれば、この世界は自分たちの思うがままだ。
その思想は長年受け継がれ、現在のジャヴォルたちに至る。
ところが、あと少しで封印が解けるというときに、この世界の魔王が復活の兆しを見せ始めた。
混乱の世になってしまえば、魔神復活などに構っていられなくなる。
それどころか、魔王に世界を滅ぼされてしまうかもしれない。
悪魔崇拝者の望みは、世界の破滅などではなく、悪魔の力を借りることだ。
悪魔こそ、自身の願いを叶えてくれる存在だと思っている。けっして自滅したいわけではない。
よって、魔王の復活を歓迎するようなことはなかった――魔王が願いを叶えてくれるというのなら別だが。
焦ったジャヴォルたちは、魔王の存在を魔神に伝えると、このような言葉が返ってきた。
「この世界の魔王など、我が簡単に始末してやる」
魔神いわく、この世界の住人は脆弱だと。
自分がいた元の世界は、ここより遙かに強い者たちが多数存在していたと。
自分が復活すれば、この世界を簡単に制圧してやると。
それを聞き、ジャヴォルたちは魔神復活を急ぐことにした。英雄養成学院を作ったのもそのためだ。
若くて純粋な魔力を大量に捧げることによって、異界のゲートが開くらしい。
さすれば、魔神の封印も弱まり、復活することができるというのだ。
アリーシアやデミトフたちを支援しているのもこれが目的で、つまり良質な生け贄を作るために、世界中から優秀な生徒たちを集めて急ピッチで育てていたというわけである。
アリーシアを帝国で見つけたというのも偶然ではなく、最初から素質のある子供たちを探していたからだ。
さて、計画を進める中で、問題となるのは魔神の制御だ。
口では上手いことを言っても、魔神はジャヴォルたちの言うことを聞いてくれない可能性があった。
さすがのジャヴォルたちも、迂闊に復活させることはできない。
こんな危険な存在を復活させるからには、その手綱を握る必要がある。
そこでカギとなるのは『契約』だ。
悪魔召喚でも同様に、悪魔との契約が必要となってくる。
でないと、あっさり裏切られてしまう。
契約の効力は絶対だ。
それは恐らく異世界の魔神相手でも通用するだろう。
しかし、これほどの相手を服従させるには、大いなる力が必要となる。
長い時を重ねて研究した結果、巨大な魔法陣で契約すれば、その力を制御できるだろうとのことだった。
膨大な魔力を魔法陣でかき集め、それを使って魔神と契約をする。
幸いファーブラは信仰のあつい国で、その王都には魔力が溢れている。魔神封印の地からも近く、まさに文句のない場所だった。
この王都の中に巨大魔法陣を作れば、魔神を制御できるはず。
早速その計画を進め、魔法陣の重要なポイントとなる地点を買い占める。
ところがそのうちの1つが、サイファたちがいる孤児院だった。
その場所を手に入れない限り、魔法陣は完成しない。計画は進まず、面倒な行政まで邪魔に入り、ジャヴォルたちは再び焦り始める。
そしてあれこれと画策しているうちに現れたのがヒロ――ユーリだった。
『ナンバーズ』のエンギとも懇意な間柄で、なんとも危険な男だ。
暗殺も失敗に終わり、これ以上モタモタしていると、状況はさらに悪化するだろう。
多少強引にでも計画を進めないと……。
ジャヴォルは次の手を考えながらその場を離れるのだった。
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本日コミカライズ第7話が更新されました!
今回はメジェールと一度別れるシーンがありますが、互いの絆を意識しながらすれ違っていくような演出に原作者ながら凄いグッときました。
小説版ではサクッと別れちゃってますからね。こういう場面を絵として見ることができるのは、コミカライズ版ならではの醍醐味かと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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