陰で魔王と畏怖されている英雄とお見合いしています

鳴哉

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 そんなことをモヤモヤと考えているうちに、次のお食事会のお誘いが届いた。

 イオネル殿下はまだこのお見合いを続けるつもりらしい。

 三度目のお誘いは、最近新しく開店した人気のカフェだった。人気過ぎて予約が取れないそこは、私も気になっていたので、断る利用はもちろんない。



「今日の料理はお気に召さなかっただろうか」

 いつものように振る舞っているつもりだった私に、珍しくイオネル殿下の方から話しかけてくださった。

 今日も素晴らしいカフェの名物料理を堪能したつもりの私は、そう聞かれて心の中でハッとした。確かに少し上の空だったかも知れない。
 私の数少ない楽しみである食事の最中でも、殿下がどう考えているのか、ずっと気になり続けていたからだ。

「いえ、噂に違わぬご馳走でした」
 そう微笑むも、殿下の眉は珍しく下がったままだ。

 え? 
 あの、眼光で人を射殺せそうな殿下の眉が! 下がっている?!

 余りにもレアな表情に、私のモヤモヤが一瞬にして晴れる。
 なんて単純で罪深い私。こんな可愛らしい表情を、私が英雄かつ魔王にさせてしまったことに喜びを感じてしまうなんて。

「ふふ」
 思わず溢れた笑いに、殿下は訝しげに眉を寄せる。ああ、もういつもの表情に戻ってしまった。

「すみません、料理には大満足です。こんな美味しいものをイオ様といただけて嬉しいです」

 殿下は一瞬の間息を止め、だけど私の言葉尻を的確に捉えて尋ねる。

「料理以外に、何か貴女の心を悩ませるものがあったのか?」

 私は美味しい食事を食べることが大好きだ。美食家と言える程、お金に糸目をかけずご馳走を食べ歩けるようなお金持ちではないのだけれど、安くて美味しいものは暇さえあれば下町へでも食べに行くくらいのフットワークはある。
 イオネル殿下とのお見合いで、今まで行ったことのない高級料理店などでの食事が楽しめることは、とても嬉しいことだった。それが目的だと自分でも思っていた。

 なのに、この為体。
 他のことが気になって、食事を堪能できていないと食事相手に感じさせるなんて。相手にも料理にも失礼だ。

「イオ様、申し訳ありません」
 私は、頭を下げた。

「私、お祖父様より、イオ様のことをお聞きしました」
 
 イオネル殿下の表情が固く強張るのを感じた。聞いていいことなのかわからない。でも、聞かずに心穏やかにはいられない。これから食事を心底楽しめなくなってしまうのも嫌だ。

「その上で、お聞きしたいことがありまして、ずっと考えてしまっているのです。できれば、お答えいただきたいのですが」

 上目遣いで殿下を見れば、今まで見たこともない程、眉間に深く皺を寄せていた。明らかに嫌そうだ。

「わかった」
 それでも予想に反して返された返事に、私は覚悟を決める。


「イオ様は、私をお見合いの練習台と思っておられるのですか?」






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