恨んでいたと言われた男の末路

木桜 春雨

文字の大きさ
1 / 1

恨んでいたと言われた男の末路

しおりを挟む
 彼氏はいるのかなあ、独り言のように呟いた言葉にそばにいた男はいないだろうと断言するように、手にしていた缶コーヒーを飲み干した。
 一ヶ月前、突然、やってきた事務員の女性の事が気になっているようだが、そばにいた男は内心、呆れたように心の中で吐いた。
 おまえみたいな、豚みたいな男、相手にされるわけないだろうと。
 仕事ができても、それだけでは見た目も大事なんだと言いたい。
 だが男は、その言葉を腹の中で毒づいた。
 人は見かけによらないという言葉通り、目の前の男は仕事ができる、それも自分以上に。
 だから、仲良くしているのだ。
 
 社内でも女にモテると思っていた男は、その日、仕事帰りに寄った飲み屋で、そのカップルを見つけて驚いた。
 豚のように太った男、だが、その男と一緒にいるのが、美人なのだ
 なんで、あんな男と思ったが、もしかして金目当てかと思った。
 女は美人局、マッチングアプリの女かもしれない、男から金を引き出そうとしているのかと、そうでなければ不釣り合いだ。
 よし、助けてやるかと思い、二人に近づいた男は声をかけた。
 
 知っている人間に出会ったことで男の顔色は一変したが、女の方は平然としていた。
 女に名前を呼ばれて男は驚いた、自分を知っているようだが、だが、覚えがない、すると同じ会社でしょうと女は笑った。
 事務員の顔を思い出し、別人じゃないかと男は驚いた。
 
 翌日、男は事務員を見つけると声をかけた、よかったら夕食をと声をかけたが、用があるのでと断られてしまった。
 「付き合ってるのかな、あいつと」
 その言葉に女はちらりと男を見ると、軽く首を振った後、男の顔をまじまじと見た後、似てますねと呟いた。
 「あなた、知りあいに似てます」
 「いい男かな」
 「顔はよかったですよ、女性にもモテていました」
 でも、続く言葉を女は飲み込んだようにみえ、男は尋ねた。
 思わず聞き違いかと思ったが、恨まれていたんでしょうという言葉に男はどきりとした。
 最近、その言葉を聞いたからだ。
  
 あなたを恨むわ、不思議なことに言葉だけは覚えていた。

 「その男性、死んだんです」
 はっきりと言われて男は驚いた。
 「でもね、気の毒な事に」
 人違いだったんですと言いながら、女は笑った。
 事務員の女は男の顔をじっと見ながら言った。
 「本当に似ています、もしかして」
 続く言葉を聞きたくなくて男は足早に、その場を立ち去った。
 
 自分にそっくりな男が刺されて亡くなった。
 数日前のニュースです、女の言葉を思い出し、スマホを取り出して調べようとした。
 だが、毎日、色々なニュースがテレビやネットに溢れているのだ簡単には見つからない。
 そうだ、動画サイトならと思って調べようとしたとき、どんとした衝撃に思わず転けてしまった。
 「大丈夫ですか」
 男が自分に声をかけてくる、だが、歩きスマホをしていた自分が悪いのだと言い訳して立ち上がる、ところが。
 相手の男が、小さな声を漏らした。
 「なんで、あ、あんたっっ」
 自分の顔を見て相手は驚いているようだ、何故と思い、声をかけようとした瞬間。
 「おおいっっ、ここだ」
 まるで、自分の存在を知らせようとしているようだ。
 「ここにいる、あの男だ」
 周りの人間が振り返ると男を見た、まるで、そう。

 ビルの中の喫茶店で珈琲を飲んでいるのは気分を落ち着けるためだ。一体、どういうことだ、自分は何もしていない、それなのに。
 あのとき、通行人達が一斉に自分を見たのだ。
 自分は何もしていない、恨まれるようなことなど。

 あなたを恨む、不意に思い出した、何故だと自問自答する。
 
 「ここにいたのか」
 突然、声をかけられてかおょをあげると見知らぬ男が自分を見下ろしていた。
 初めて見る顔だ、相手は自分の向かいの席に座ると。
 「恨まれているよな、君は」
 「な、なんだ、突然」
 いきなり、失礼だろう、だが、男は笑いながら、それは自分じゃないのかと返してきた。
 「普段から人の事を見下していただろう、豚やろうって、そのくせ、仕事になると助けてくれと寄ってくる」
 笑いながら言われて男は相手の顔をじっと見た。
 まさか、この男、いいや、そんな筈はないと思った。
 だが、男が口を開くたびに事実だと認めざるえない。
 「彼女は君を恨んでいたよ、随分と」
 「何を言って、るんだ」
 女性に気のあるふりをして恋愛感情を弄ぶ、ひどいねと言われて男は何か言いたげな顔になった。
 だが、言葉が出てこない。
 「事務員ばかりを狙うのは金目当てかい、君のほうが」
 美人局じゃないかと言われて男は席を立とうとした、だが、できなかった。
 見られている、視線に気づいたのだ。
 少し離れたところから一人の女が自分を見ている、このとき思い出した。
 平凡だが、事務員の顔は似ているのだ。
 
 「どうするんだ、僕になにをしろというんだ」
 ついて来いと言われて案内されたのはアパートの一室だ。
 そこで男は女達の相手をさせられた、普通の男なら悪くはない待遇だろう、だが、女達は男を罵倒した。
 
 取り柄は顔だけ。
 役にも立たない。
 女を馬鹿にしていない。
 
 ベッドの上で拘束されたまま、無理矢理女達に奉仕させられた後、今度は男達の相手だ。
 殴られ、蹴られて、暴力だけではない、セックスの相手もさせられた。
 男達は女性達の妻や愛人だ、抵抗使用にも体力は限界だ。
 そうして、男は自宅に戻った。

 翌日、出社した男は事務員の女性に声をかけられた。
 顔色がよくないで、すると、太った男が近寄ってきた。
 「どうしてんだ、具合でも悪いのか、女とデートだろ、ほどほどにしろよ」
 しかし、返事ができない。
 わかるのは恨まれた結果、こうなってしまったということだけだ。
 仕返しされたのだ、だが、その事実を現実を、どうやって切り抜ければ良いのか、わからなかった。
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

処理中です...