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辞職寸前の刑事はオヤジで離婚歴有り(なのに、始まってしまいそうです)
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「さんっっ」
名前を呼ばれて振り返った男が少し不思議そうな顔をしたのは、自分よりも若い後輩に名前で呼ばれたからだ。
つい先日まで、おやじ、おやっさんとドラマの中みたいな呼び方だっのに、いきなりどうしたんだと思ったのも無理はない。
すると、自分の表情から察したのだろう、いきなりすみませんと頭を下げられた。
「その、言われまして」
「なんだ、勤務態度を注意されたのか、いきなりだと調子が狂うぞ、まったく」
「サラリーマン、会社なら駄目だって、その、俺の態度」
「気にするな、それに、俺はもうすぐいなくなる、退職だ」
本当に辞めるんですかと言われて男は頷いた後、潮時だと呟いた。
「以前から考えてはいた、頭もだが、体力もいるからな、刑事なんて仕事は」
そうですかと若い後輩は頷いた後、寂しくなりますとぽつりと呟いた。
「婚活でもしたら」
久しぶりに会ったのは別れた妻だ、美人になったな、そう言うと、お世辞を聞とは思わなかった、仕事は順調だし、ストレスがなくなったからと言われて、そうなのかと頷いてしまった。
「ねえっ、辞めることなかったんじゃ、好きでしょ、仕事、刑事が」
確かに、自分の仕事、刑事という職業は嫌いではない、だが、この先も続けていける自信がないのだ。
「治ったんでしょ」
「ああ、だが、完治したといっても、いつ」
「まあ、ストレスで再発するっていうこともあるからね、それに今は」
にっこりと笑う妻だった女性はスマホを取り出すと、見てといわんばかりに画面を目の前に突き出した。
なんだと思いつつ、その画面を見た男は、あっと小さな呟きを漏らした。
「この間、偶然、見かけて撮ったりの、最近のスマホや携帯って遠く空でも綺麗に撮れるのよね、で、どこまで」
「なんだ」
「もう、寝てるの」
男は返事の代わりに小さくため息を漏らした。
数日前、久しぶりに電車を使ったのは、ある駅で薬の取引がされているという情報をつかんだからだ。
大きくはない、エスカレーターもあるが階段が長く、改装中というところもあって不便さを感じる駅だ。
以前は街中、広い通りで薬の売買が行われていたが、最近は公衆トイレなどでも取引されることがある。
ホームに出る階段を上がっていたときだ目の前を手すりに掴まりの上って行く後ろ姿に男は気づいた。
どこか、危なっかしい足取りだと思ったとき、カツンという音とぐらりと揺れた後ろ姿に思わず手を伸ばした。
老人ではと思ったが違った、女性だ、それに金属音がして気づいた、杖を持っていたのだ。
ホームのベンチに女性を座らせたとき、女の足の包帯、いや、ギプスに男は初めて気づいた。
どうして、エスカレーターをと思ったときだ、胸ポケットのスマホがなった。
「なあ、辞職の件だが、ちょっと」
あと少しで自由になるというとき、車の中で話を切り出された男はやはりと思ってしまった。
自分と同期だが、上司ともいえる男が家まで送ってやるから乗って行けと同乗を勧めたときから、何かあると思っていたのだ。
「どうしたんだ」
「先日の事件だ、終わってなかった」
ネットで薬を買い、それを個人、若者、学生に売っているという事件はネットの販売元は、はっきりとはわかっていない。
だが、関わった大抵の人間は素人なので見つけ出すのも、そう時間はかからなかった、筈だ、そう思っていた。
「ヤクザが絡んでいるみたいだ」
捨てきれなかった可能性が現実のものとなって出てきたということか、それも今になって。
信号が近いのか、車の速度が少し落ちる、窓の外を見ると雨が降り出してきた。
これは、もしかしてやみそうにないかもしれないと思ったとき、男の視界にあるものが飛び込んできた。
「おいっっ」
「な、なんだよ」
「止めてくれ、ここまでていい」
「はあっ、濡れるぞ」
ドアを開けると、手を上げて道路を横切り、男は声をあげた。
歩道を歩いていた女は思わず足を止めて周りを見回した。
呼ばれたわけではない、だが、道路と車の間を横切って向かってくるコート姿の男を見ると手を振ってしまった。
「先日は、ありがとうございます」
自分を覚えていてくれたことに、ほっとしながら、足は大丈夫ですかと男は声をかけた。
近くのコンビニ行くとビニール傘と缶コーヒーを買い、女の隣を歩きながら駅に行く。
このとき、男は疑問を思い出し、ぶつけた。
「この駅にはエスカレーターもあります、何故、使わなかったんです」
ホームの椅子に座り、缶コーヒーを飲みながら男は尋ねた、すると使おうと思ったんですという返事だ。
「でも、あのとき、ボタンを押しても動かなかったんです、それでも待っていたんです、しばらくして男の人が出てきて」
どこか話しづらそうな言い方だ。
この際だと思い、男は自分は怪しい人間ではないと証明するために手帳を出した。
「エレベーターが動かなかった、出てきた男に対して何かを感じたというのか、その女性は」
「ええ、目つきが、それに匂いがしたというんです」
「加齢臭とか」
「笑い話はなしです、気持ち悪いと感じたそうです」
その言葉に上司も男も無言になった、だが、長くは続かなかった。
「詳しく、いや、俺も直接、聞きたい、勿論、おまえも同席でだ、そのほうが彼女も安心だろう」
「安心ってなんです」
辞職、少し考え直してくれという上司の言葉に男は頷くしかなかった。
名前を呼ばれて振り返った男が少し不思議そうな顔をしたのは、自分よりも若い後輩に名前で呼ばれたからだ。
つい先日まで、おやじ、おやっさんとドラマの中みたいな呼び方だっのに、いきなりどうしたんだと思ったのも無理はない。
すると、自分の表情から察したのだろう、いきなりすみませんと頭を下げられた。
「その、言われまして」
「なんだ、勤務態度を注意されたのか、いきなりだと調子が狂うぞ、まったく」
「サラリーマン、会社なら駄目だって、その、俺の態度」
「気にするな、それに、俺はもうすぐいなくなる、退職だ」
本当に辞めるんですかと言われて男は頷いた後、潮時だと呟いた。
「以前から考えてはいた、頭もだが、体力もいるからな、刑事なんて仕事は」
そうですかと若い後輩は頷いた後、寂しくなりますとぽつりと呟いた。
「婚活でもしたら」
久しぶりに会ったのは別れた妻だ、美人になったな、そう言うと、お世辞を聞とは思わなかった、仕事は順調だし、ストレスがなくなったからと言われて、そうなのかと頷いてしまった。
「ねえっ、辞めることなかったんじゃ、好きでしょ、仕事、刑事が」
確かに、自分の仕事、刑事という職業は嫌いではない、だが、この先も続けていける自信がないのだ。
「治ったんでしょ」
「ああ、だが、完治したといっても、いつ」
「まあ、ストレスで再発するっていうこともあるからね、それに今は」
にっこりと笑う妻だった女性はスマホを取り出すと、見てといわんばかりに画面を目の前に突き出した。
なんだと思いつつ、その画面を見た男は、あっと小さな呟きを漏らした。
「この間、偶然、見かけて撮ったりの、最近のスマホや携帯って遠く空でも綺麗に撮れるのよね、で、どこまで」
「なんだ」
「もう、寝てるの」
男は返事の代わりに小さくため息を漏らした。
数日前、久しぶりに電車を使ったのは、ある駅で薬の取引がされているという情報をつかんだからだ。
大きくはない、エスカレーターもあるが階段が長く、改装中というところもあって不便さを感じる駅だ。
以前は街中、広い通りで薬の売買が行われていたが、最近は公衆トイレなどでも取引されることがある。
ホームに出る階段を上がっていたときだ目の前を手すりに掴まりの上って行く後ろ姿に男は気づいた。
どこか、危なっかしい足取りだと思ったとき、カツンという音とぐらりと揺れた後ろ姿に思わず手を伸ばした。
老人ではと思ったが違った、女性だ、それに金属音がして気づいた、杖を持っていたのだ。
ホームのベンチに女性を座らせたとき、女の足の包帯、いや、ギプスに男は初めて気づいた。
どうして、エスカレーターをと思ったときだ、胸ポケットのスマホがなった。
「なあ、辞職の件だが、ちょっと」
あと少しで自由になるというとき、車の中で話を切り出された男はやはりと思ってしまった。
自分と同期だが、上司ともいえる男が家まで送ってやるから乗って行けと同乗を勧めたときから、何かあると思っていたのだ。
「どうしたんだ」
「先日の事件だ、終わってなかった」
ネットで薬を買い、それを個人、若者、学生に売っているという事件はネットの販売元は、はっきりとはわかっていない。
だが、関わった大抵の人間は素人なので見つけ出すのも、そう時間はかからなかった、筈だ、そう思っていた。
「ヤクザが絡んでいるみたいだ」
捨てきれなかった可能性が現実のものとなって出てきたということか、それも今になって。
信号が近いのか、車の速度が少し落ちる、窓の外を見ると雨が降り出してきた。
これは、もしかしてやみそうにないかもしれないと思ったとき、男の視界にあるものが飛び込んできた。
「おいっっ」
「な、なんだよ」
「止めてくれ、ここまでていい」
「はあっ、濡れるぞ」
ドアを開けると、手を上げて道路を横切り、男は声をあげた。
歩道を歩いていた女は思わず足を止めて周りを見回した。
呼ばれたわけではない、だが、道路と車の間を横切って向かってくるコート姿の男を見ると手を振ってしまった。
「先日は、ありがとうございます」
自分を覚えていてくれたことに、ほっとしながら、足は大丈夫ですかと男は声をかけた。
近くのコンビニ行くとビニール傘と缶コーヒーを買い、女の隣を歩きながら駅に行く。
このとき、男は疑問を思い出し、ぶつけた。
「この駅にはエスカレーターもあります、何故、使わなかったんです」
ホームの椅子に座り、缶コーヒーを飲みながら男は尋ねた、すると使おうと思ったんですという返事だ。
「でも、あのとき、ボタンを押しても動かなかったんです、それでも待っていたんです、しばらくして男の人が出てきて」
どこか話しづらそうな言い方だ。
この際だと思い、男は自分は怪しい人間ではないと証明するために手帳を出した。
「エレベーターが動かなかった、出てきた男に対して何かを感じたというのか、その女性は」
「ええ、目つきが、それに匂いがしたというんです」
「加齢臭とか」
「笑い話はなしです、気持ち悪いと感じたそうです」
その言葉に上司も男も無言になった、だが、長くは続かなかった。
「詳しく、いや、俺も直接、聞きたい、勿論、おまえも同席でだ、そのほうが彼女も安心だろう」
「安心ってなんです」
辞職、少し考え直してくれという上司の言葉に男は頷くしかなかった。
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