43 / 101
第14章 二年次・12月(7)
しおりを挟む
次の日、高志が目覚めると7時過ぎだった。
久し振りにぐっすり眠った気がした。何となく、心の中にぽっかりと空白があるような感じがする。今まであった何かが抜け落ちているような不在感。でも悪い気分ではなかった。失われているのは、この一週間ずっと苛まれてきた孤独感だと気付いた。
起き上がると、ひどく空腹だった。昨日は結局何も食べなかったから当然と言えば当然だが、空腹を感じられることが自分の復調を表しているように思えた。茂が起きてくるまで我慢できなさそうだったので、昨日買った惣菜類を冷蔵庫から取り出し、温めて食べる。食べられるだけ食べようと思っていたら、結局全てを平らげていた。
それから顔を洗い、コーヒーを入れてテレビをつける。特に興味を引かれるものがなかったので、出しっぱなしだったゲーム機の電源を入れて、ぷよぷよを始めた。
茂が起き出してきたのは9時前だった。寝室の方で物音がし、襖が開く。
「うお。藤代がいる」
そう言いながら、居間を横切ってユニットバスに入っていった。中で水音がし、しばらくして出てくる。
「おはよう」
「おはよう。……て遅いだろ」
「はは。いつもいないからさ。慣れてなくて」
そう言いながら、茂はキッチンで自分の分のインスタントコーヒーを入れ始める。高志は居間から声を掛けた。
「悪い、昨日の飯、全部食った」
「ああ、いいよ全然」
マグカップを持って戻ってきて、座卓のそばに座る。
「だいぶ起きてた?」
「7時くらいから」
「お前、休みでも早起きだなー」
「腹が減って目が覚めたんだよ」
「まあ、でも食えたんなら良かったな」
茂がゆっくりとコーヒーを飲む。高志はゲーム画面を消してテレビ番組に戻した。特に面白くもなかったが、なんだかんだと茂と適当にコメントし合いながら結局ずっと観ていた。
茂の部屋に泊まっても、いつも朝は早めに出ていたので、今日のように一緒にゆっくりした朝を過ごすのは初めてだった。午前中はそのまま特に何をすることもなく部屋でだらだらして、お昼頃に外出した。昼食を取り、その後はそのまま街を少しぶらぶらしてから、夕方に二人は別れた。
それ以降、高志の精神状態は概ね落ち着いた。茂のおかげかもしれないし、単に時間の経過のせいかもしれない。まだ時折、淋しさや喪失感を覚えることもあるが、一時のものとしていずれ消失した。
遥香との別れは自分にとっては大きな出来事ではあったが、一方で世間では恋人との別れなどありふれていることを考えれば、自分にとっても、今回のことはやがて一つの人生経験として過去のことになっていくのだろうと思えた。ただ、これからまた同じように誰かを好きになることは今はまだ想像し難かったし、誰かにあんな風に好きになってもらえるとも思えなかった。そして、街ですれ違う見も知らぬ社会人達も、何でもない顔をしながら陰でみんなこんな経験をしているのか、などと考えた。
久し振りにぐっすり眠った気がした。何となく、心の中にぽっかりと空白があるような感じがする。今まであった何かが抜け落ちているような不在感。でも悪い気分ではなかった。失われているのは、この一週間ずっと苛まれてきた孤独感だと気付いた。
起き上がると、ひどく空腹だった。昨日は結局何も食べなかったから当然と言えば当然だが、空腹を感じられることが自分の復調を表しているように思えた。茂が起きてくるまで我慢できなさそうだったので、昨日買った惣菜類を冷蔵庫から取り出し、温めて食べる。食べられるだけ食べようと思っていたら、結局全てを平らげていた。
それから顔を洗い、コーヒーを入れてテレビをつける。特に興味を引かれるものがなかったので、出しっぱなしだったゲーム機の電源を入れて、ぷよぷよを始めた。
茂が起き出してきたのは9時前だった。寝室の方で物音がし、襖が開く。
「うお。藤代がいる」
そう言いながら、居間を横切ってユニットバスに入っていった。中で水音がし、しばらくして出てくる。
「おはよう」
「おはよう。……て遅いだろ」
「はは。いつもいないからさ。慣れてなくて」
そう言いながら、茂はキッチンで自分の分のインスタントコーヒーを入れ始める。高志は居間から声を掛けた。
「悪い、昨日の飯、全部食った」
「ああ、いいよ全然」
マグカップを持って戻ってきて、座卓のそばに座る。
「だいぶ起きてた?」
「7時くらいから」
「お前、休みでも早起きだなー」
「腹が減って目が覚めたんだよ」
「まあ、でも食えたんなら良かったな」
茂がゆっくりとコーヒーを飲む。高志はゲーム画面を消してテレビ番組に戻した。特に面白くもなかったが、なんだかんだと茂と適当にコメントし合いながら結局ずっと観ていた。
茂の部屋に泊まっても、いつも朝は早めに出ていたので、今日のように一緒にゆっくりした朝を過ごすのは初めてだった。午前中はそのまま特に何をすることもなく部屋でだらだらして、お昼頃に外出した。昼食を取り、その後はそのまま街を少しぶらぶらしてから、夕方に二人は別れた。
それ以降、高志の精神状態は概ね落ち着いた。茂のおかげかもしれないし、単に時間の経過のせいかもしれない。まだ時折、淋しさや喪失感を覚えることもあるが、一時のものとしていずれ消失した。
遥香との別れは自分にとっては大きな出来事ではあったが、一方で世間では恋人との別れなどありふれていることを考えれば、自分にとっても、今回のことはやがて一つの人生経験として過去のことになっていくのだろうと思えた。ただ、これからまた同じように誰かを好きになることは今はまだ想像し難かったし、誰かにあんな風に好きになってもらえるとも思えなかった。そして、街ですれ違う見も知らぬ社会人達も、何でもない顔をしながら陰でみんなこんな経験をしているのか、などと考えた。
0
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる