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第24章 四年次・8月(1)
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第24章 四年次・8月
8月初旬のその日、高志が夕方にバイトを終えると、茂から『試験終わった』とラインが入っていた。すぐに『お疲れ』と返す。しばらくすると、更に返信が来た。
『打ち上げ付き合えー明日かあさって』
『明日バイト後いける』
『何時くらい?』
『17時に終わる 飯食うならおごる』
『おおー』『とりあえず駅に18時は?』
『大学前?』
『そう』
『了解』
遣り取りが終わり、高志がスマホを鞄に入れようとすると、少し遅れてもう一度通知が来た。
『徹ぷよ希望』
表示されたそのメッセージを、高志はしばらく見つめた。
忘れかけていた嫌な不安感がじわりと甦ってきた。
もしかしたら本当にぷよぷよがしたいだけなのかもしれない、と無理に考えてみはしても、おそらくそうではないことを、さすがに高志も学んでいた。
結局、高志はそれに返信することはできなかった。
翌日、バイトが終わった後、昨日茂が送ってきたメッセージについてなおも考えながら、高志は電車で大学に向かった。
昨日よりは少し冷静になっていたが、どこか気が重く感じる自分がいた。茂が自分達の関係についてどうしたいと考えているのかが分からなかった。あのメッセージを読んで高志がどう思うと思ったのだろうか。それを分かったうえで送ってきたのだろうか。
「藤代、お疲れー」
駅の階段を昇ると、すぐに待っていた茂に声を掛けられる。高志の気も知らず、気楽に笑っている。それでも、その笑顔を見て少しだけ高志は気持ちを切り替えた。
「お疲れ。試験どうだった?」
「とりあえずやり切ったよ」
茂の口調から、手応えがあったことが窺える。
「何食う?」
「藤代の食べたいものでいいよ。やっぱ肉?」
「なんでだよ、お前の試験の打ち上げだろ。お前は何がいいんだ?」
「うーん」
茂はしばらく考えてから、「蕎麦とか?」と言ったので、高志は茂の顔を見た。
「何、夏バテとかしてんの」
「そんなんじゃないよ。気分で」
「蕎麦……」
高志自身は普段から蕎麦を食べたいと思うことがほとんどなかったので、茂の答えは想定外だった。駅から大学へと続く道の両側に並んでいる飲食店を思い出してみるが、高志がいつも行くような店で蕎麦を提供しているところを思い付かない。
「どっか蕎麦屋ってあったっけ」
「別に、だから何でもいいって」
茂はそう言うと笑い出して、「藤代は絶対に蕎麦じゃ物足りないだろうし」と言った。
「いや、まあ丼とかもあるだろ、多分」
並んで歩きながら店を探す。スマホで検索すると、普段あまり行かない辺りに蕎麦屋を一軒見付けたので、地図を見ながら探し出し、そこに入った。
メニューを見て、茂はざる蕎麦を頼もうとした。
「それだけ? 遠慮とかすんなよ」
「してない。蕎麦が食べたいんだって」
「だったらこっちにしとけ」
高志はメニューに載っていたざる蕎麦と天麩羅のセットを指さす。
「食えるだろ、これくらい」
高志がそう言うと、茂は何故か笑いながら、「うん、食える」と頷いた。
「俺もこれにする」
高志はそう言うと、セットを二つ注文した。
8月初旬のその日、高志が夕方にバイトを終えると、茂から『試験終わった』とラインが入っていた。すぐに『お疲れ』と返す。しばらくすると、更に返信が来た。
『打ち上げ付き合えー明日かあさって』
『明日バイト後いける』
『何時くらい?』
『17時に終わる 飯食うならおごる』
『おおー』『とりあえず駅に18時は?』
『大学前?』
『そう』
『了解』
遣り取りが終わり、高志がスマホを鞄に入れようとすると、少し遅れてもう一度通知が来た。
『徹ぷよ希望』
表示されたそのメッセージを、高志はしばらく見つめた。
忘れかけていた嫌な不安感がじわりと甦ってきた。
もしかしたら本当にぷよぷよがしたいだけなのかもしれない、と無理に考えてみはしても、おそらくそうではないことを、さすがに高志も学んでいた。
結局、高志はそれに返信することはできなかった。
翌日、バイトが終わった後、昨日茂が送ってきたメッセージについてなおも考えながら、高志は電車で大学に向かった。
昨日よりは少し冷静になっていたが、どこか気が重く感じる自分がいた。茂が自分達の関係についてどうしたいと考えているのかが分からなかった。あのメッセージを読んで高志がどう思うと思ったのだろうか。それを分かったうえで送ってきたのだろうか。
「藤代、お疲れー」
駅の階段を昇ると、すぐに待っていた茂に声を掛けられる。高志の気も知らず、気楽に笑っている。それでも、その笑顔を見て少しだけ高志は気持ちを切り替えた。
「お疲れ。試験どうだった?」
「とりあえずやり切ったよ」
茂の口調から、手応えがあったことが窺える。
「何食う?」
「藤代の食べたいものでいいよ。やっぱ肉?」
「なんでだよ、お前の試験の打ち上げだろ。お前は何がいいんだ?」
「うーん」
茂はしばらく考えてから、「蕎麦とか?」と言ったので、高志は茂の顔を見た。
「何、夏バテとかしてんの」
「そんなんじゃないよ。気分で」
「蕎麦……」
高志自身は普段から蕎麦を食べたいと思うことがほとんどなかったので、茂の答えは想定外だった。駅から大学へと続く道の両側に並んでいる飲食店を思い出してみるが、高志がいつも行くような店で蕎麦を提供しているところを思い付かない。
「どっか蕎麦屋ってあったっけ」
「別に、だから何でもいいって」
茂はそう言うと笑い出して、「藤代は絶対に蕎麦じゃ物足りないだろうし」と言った。
「いや、まあ丼とかもあるだろ、多分」
並んで歩きながら店を探す。スマホで検索すると、普段あまり行かない辺りに蕎麦屋を一軒見付けたので、地図を見ながら探し出し、そこに入った。
メニューを見て、茂はざる蕎麦を頼もうとした。
「それだけ? 遠慮とかすんなよ」
「してない。蕎麦が食べたいんだって」
「だったらこっちにしとけ」
高志はメニューに載っていたざる蕎麦と天麩羅のセットを指さす。
「食えるだろ、これくらい」
高志がそう言うと、茂は何故か笑いながら、「うん、食える」と頷いた。
「俺もこれにする」
高志はそう言うと、セットを二つ注文した。
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