52 / 455
3.聖女に会おう、まずはそれから
何もない部屋
しおりを挟む
小説の中では、聖女の自室や廊下やダイニングなど、聖女が使ったであろう施設についての描写は、色や材質、見える景色まで描写が細かかったが、カサブランカの自室に関する情報も特に書かれていなかった。
てっきり聖女の部屋と同じように、可愛らしくも豪華な家具が置かれた、居心地の良い部屋なんだろうなと思っていた。
だから、案内された部屋を見て、私は絶句した。
(なっ……何も……ない!?)
真っ白な壁に真っ赤な絨毯。
ここまでは、廊下や他の部屋とほぼ一緒。
ただ、それだけなのだ。
私の現世の部屋には、100均で買い揃えた可愛いインテリア雑貨や、クレーンゲームで手に入れたゲームの推しキャラぬいぐるみが所狭しと並んでいる。
そして何より本!漫画!ゲーム!!!
まさに、人生に欠かせない宝の山がたくさんあった。
そんな部屋に慣れ切った人間にとって、カサブランカの自室というのは衝撃だった。
(ミニマリストもびっくりだよ……)
本当に何もない。
本棚も、机も椅子も、クローゼット1つない。
あるのはベッドだけ。
「それでは、時間になりましたらお迎えに参ります」
アザレアが会釈をして去っていこうとする。
その動きに無駄がないことから、いつものことなのだろう。
「待っ……ちなさい」
「……はい?」
「……何時まで?」
「……は?」
「あの……何時まで私はここにいればいいの!……かしら?」
見たところ時計もない。
すでに窓の外は白く光っているので、お昼ちょっと前くらいだろう。
「カサブランカ様?何時……というのは?」
「え?」
「一体どういう意味ですか?」
何を馬鹿な事を言っているんだ……と言いたげなのがありありと伝わってくる。
そういえば、小説の中では正式な時間の表現はなかった気がする……。
もう1度カサブランカの記憶を辿り、近しい言葉を見つけた。
「いつまで、私はここにいれば良いのかしら」
「いつまで……と言われましても、いつものように……エディ王子の準備が整い次第……としか申し上げられませんが……」
(ですよね……)
私はもう1度、カサブランカの記憶を辿ってみる。
いつの間にかベッドで眠りについていたカサブランカを、アザレアが起こし、準備をしてから伽の間に行く。
それは、夕方かもしれないし、夜かもしれない。
日によって違う。
その条件を、カサブランカは知らされていない。
でも、その法則性を、私は、知っている。
「今日、エディ王子は何か公務があるのかしら?」
「何故そんなことを聞くんですか?」
「あー……えーと……」
(この場合、何て言おうか……。あ……)
カサブランカの……伽を始めたばかりの頃に、エディ王子に言った言葉が、すごく合いそうだったので、私も言ってみた。
「少しでも、伽の時間で王子を癒したいのです」
と。
カサブランカがこれを言った時は
「お前に何が分かる?」
とエディ王子はカサブランカをあざけ笑うだけ。
そしてそのままベッドに押し倒し、エディ王子主導で事が始まっていたのだが……。
アザレアは、少し考えてはいたが
「今日は外交もなし、城で雑務をこなすだけ……とお伺いしております」
「そう、ありがとう」
私は、にやけそうになる顔を必死で抑えながら、カサブランカっぽくお礼を言ってみた。
……こういう話し方、自分が言うとムズムズする。
「それでは、私はもう下がります。どうぞ睡眠をお取りください」
アザレアはそう言って、逃げるように去っていった。
あの逃げ方は、一体誰から逃げようとしているのか。
カサブランカ?
それとも……私?
てっきり聖女の部屋と同じように、可愛らしくも豪華な家具が置かれた、居心地の良い部屋なんだろうなと思っていた。
だから、案内された部屋を見て、私は絶句した。
(なっ……何も……ない!?)
真っ白な壁に真っ赤な絨毯。
ここまでは、廊下や他の部屋とほぼ一緒。
ただ、それだけなのだ。
私の現世の部屋には、100均で買い揃えた可愛いインテリア雑貨や、クレーンゲームで手に入れたゲームの推しキャラぬいぐるみが所狭しと並んでいる。
そして何より本!漫画!ゲーム!!!
まさに、人生に欠かせない宝の山がたくさんあった。
そんな部屋に慣れ切った人間にとって、カサブランカの自室というのは衝撃だった。
(ミニマリストもびっくりだよ……)
本当に何もない。
本棚も、机も椅子も、クローゼット1つない。
あるのはベッドだけ。
「それでは、時間になりましたらお迎えに参ります」
アザレアが会釈をして去っていこうとする。
その動きに無駄がないことから、いつものことなのだろう。
「待っ……ちなさい」
「……はい?」
「……何時まで?」
「……は?」
「あの……何時まで私はここにいればいいの!……かしら?」
見たところ時計もない。
すでに窓の外は白く光っているので、お昼ちょっと前くらいだろう。
「カサブランカ様?何時……というのは?」
「え?」
「一体どういう意味ですか?」
何を馬鹿な事を言っているんだ……と言いたげなのがありありと伝わってくる。
そういえば、小説の中では正式な時間の表現はなかった気がする……。
もう1度カサブランカの記憶を辿り、近しい言葉を見つけた。
「いつまで、私はここにいれば良いのかしら」
「いつまで……と言われましても、いつものように……エディ王子の準備が整い次第……としか申し上げられませんが……」
(ですよね……)
私はもう1度、カサブランカの記憶を辿ってみる。
いつの間にかベッドで眠りについていたカサブランカを、アザレアが起こし、準備をしてから伽の間に行く。
それは、夕方かもしれないし、夜かもしれない。
日によって違う。
その条件を、カサブランカは知らされていない。
でも、その法則性を、私は、知っている。
「今日、エディ王子は何か公務があるのかしら?」
「何故そんなことを聞くんですか?」
「あー……えーと……」
(この場合、何て言おうか……。あ……)
カサブランカの……伽を始めたばかりの頃に、エディ王子に言った言葉が、すごく合いそうだったので、私も言ってみた。
「少しでも、伽の時間で王子を癒したいのです」
と。
カサブランカがこれを言った時は
「お前に何が分かる?」
とエディ王子はカサブランカをあざけ笑うだけ。
そしてそのままベッドに押し倒し、エディ王子主導で事が始まっていたのだが……。
アザレアは、少し考えてはいたが
「今日は外交もなし、城で雑務をこなすだけ……とお伺いしております」
「そう、ありがとう」
私は、にやけそうになる顔を必死で抑えながら、カサブランカっぽくお礼を言ってみた。
……こういう話し方、自分が言うとムズムズする。
「それでは、私はもう下がります。どうぞ睡眠をお取りください」
アザレアはそう言って、逃げるように去っていった。
あの逃げ方は、一体誰から逃げようとしているのか。
カサブランカ?
それとも……私?
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる