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4.王子の葛藤

君のせいだ

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カシーはあの後、カシーの父親に、頬が真っ赤に腫れるほど、強く殴られた殴られた。
俺を突き飛ばしたせいで。

そのままカシーの父親は、

「王子、娘が大変失礼なことをして、申し訳ございませんでした」

とだけ言ってから、カシーを連れ去ってしまった。
その時のカシーの顔は、とても苦しそうだった。
それが、俺の心をひどく重くする。

その日の夜、俺はベッドの中でひたすら考えた「、
俺はカシーの笑顔が見たかっただけだ。
それなのに、俺のせいで、カシーの笑顔を奪った。
どうしよう……。
もし、カシーが俺に笑ってくれなくなったら……。

「俺がいけないのか?」

ぽつりと、誰にも聞こえないはずの小さな声で呟いてしまった。

「どうしたの?エディ」

いるはずのない人の声が、聞こえた。
俺は驚いて起き上がると、ノアが部屋の中にいた。

「ノアくん……」

何故、ここにいるのか。また。
そう聞こうと、思った。
けれど。

「どうしたんだい?そんな悲しい顔をして」
「……ノアくんのせいだ……」
「え?」
「ノアくんが、余計なことを言わなきゃ、カシーは……!」
「ああ、キス、拒まれちゃったんだ?」

ノアは、笑った。

「何で笑うの?」
「ん?」
「ノアくんのせいでカシーの笑顔がなくなってしまったんだ……!」
「違うよ」

ノアは即答した。

「カシーが君のキスを嫌がったのも、カシーがお父さんにぶん殴られたのも、全部君が悪いんだ」
「俺は、ノアくんの言う通りにしただけだ!」
「僕はただ意見を言っただけ。何の証拠もない、思っただけの意見を」
「……意見?」
「かもしれない。僕はあくまで一般的に言われているものを、仮説として君に教えてあげただけだ。それをどうするかは、君に選択肢があったんだ」
「……違う……ノアくんは俺にそうしろって……」
「僕が強制するはずないじゃないか。だって、君は王位継承者で、僕はただの王の息子……。君の方が、僕よりずっと立場は上だ」

ノアは、俺の耳元に唇を寄せ、こう言った。

「君の選択を……君自身を、カシーが拒否しただけ。つまり君が、全部悪いんだ」

その言葉は、呪いのように染み渡る。
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