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6.想定外だった彼の想い
前世の弟
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時計の音がしないから、どれだけの時間、エディ王子と私が抱き合っていたのかは分からない。
でも、エディ王子に体を弄られていた時間よりは、ずっと長い気がした。
その間、エディ王子の息の音は聞こえ、鼓動も感じたが、それ以外は微動だにしない。
強く、私を抱きしめたまま。
これに似た状況を、私は前世で見たことがある。
それは、私の……前世の弟の話。
弟は、私よりもずっと優秀だった。
小中高と、親が望むような一流の学校に行って、親にとって自慢の子供だった。
そして、なんの取り柄もなく、のほほんと暮らしていた私にとっても、弟は誇りだった。
そんな弟だったので、もちろん大学も周囲の期待に応える、私には到底合格できないようなところに入った。
そんな、自慢の弟が壊れたのは、それからすぐのこと。
ある時を境に、弟は大学に行かなくなった。ぱったりと。
部屋に引きこもり、誰とも会わなくなった。
母親が彼の部屋の前に、ご飯を置くだけの日々が続いた。
彼の生存確認は、それが消えてるかどうかだけしか、分からなくなった。
トイレすら、いつどのタイミングでしているのか分からなかった。
私はその時期、社会人として働き始め、一人暮らしの準備をしていた時期だった。
そして、その日はまさに、その引っ越しの準備をしていた時。
「姉ちゃん……?」
部屋で荷造りをしている時、久しぶりに弟の声を聞いた。
あまりに突然のことで、びっくりしたのを覚えている。
でも、何より驚いたのは、私に声をかけてきたことじゃない。
「ど、どうしたの……?」
私に声をかけた弟は、ぼろぼろになったぬいぐるみを抱きしめていた。
そのぬいぐるみは、弟が子供の頃に親が買い与えた、弟が1番最初に好きになったキャラクターのぬいぐるみ。
買った当時は、弟と同じくらいの背丈だった、大きなぬいぐるみ。
小学校に入るまでは、何かある度に持ち歩いていたぬいぐるみだったが、彼が小学校に入った後からは、押し入れで眠っているだけだった。
そのぬいぐるみを、弟はぎゅうっと強く握りしめていたのだ。
自分の身長よりずっと高い弟。
頭も良く、周囲の誰もが素晴らしいと賞賛した弟。
そんな弟の……まるで退化したような姿に、私は恐怖を覚えた。
弟は、そんな私の気持ちを察したのかもしれない。
ぬいぐるみの首が取れそうな程に抱きしめながら、走って部屋の中に入ってしまった。
私が弟と会ったのは……結局この日が最期になった。
でも、エディ王子に体を弄られていた時間よりは、ずっと長い気がした。
その間、エディ王子の息の音は聞こえ、鼓動も感じたが、それ以外は微動だにしない。
強く、私を抱きしめたまま。
これに似た状況を、私は前世で見たことがある。
それは、私の……前世の弟の話。
弟は、私よりもずっと優秀だった。
小中高と、親が望むような一流の学校に行って、親にとって自慢の子供だった。
そして、なんの取り柄もなく、のほほんと暮らしていた私にとっても、弟は誇りだった。
そんな弟だったので、もちろん大学も周囲の期待に応える、私には到底合格できないようなところに入った。
そんな、自慢の弟が壊れたのは、それからすぐのこと。
ある時を境に、弟は大学に行かなくなった。ぱったりと。
部屋に引きこもり、誰とも会わなくなった。
母親が彼の部屋の前に、ご飯を置くだけの日々が続いた。
彼の生存確認は、それが消えてるかどうかだけしか、分からなくなった。
トイレすら、いつどのタイミングでしているのか分からなかった。
私はその時期、社会人として働き始め、一人暮らしの準備をしていた時期だった。
そして、その日はまさに、その引っ越しの準備をしていた時。
「姉ちゃん……?」
部屋で荷造りをしている時、久しぶりに弟の声を聞いた。
あまりに突然のことで、びっくりしたのを覚えている。
でも、何より驚いたのは、私に声をかけてきたことじゃない。
「ど、どうしたの……?」
私に声をかけた弟は、ぼろぼろになったぬいぐるみを抱きしめていた。
そのぬいぐるみは、弟が子供の頃に親が買い与えた、弟が1番最初に好きになったキャラクターのぬいぐるみ。
買った当時は、弟と同じくらいの背丈だった、大きなぬいぐるみ。
小学校に入るまでは、何かある度に持ち歩いていたぬいぐるみだったが、彼が小学校に入った後からは、押し入れで眠っているだけだった。
そのぬいぐるみを、弟はぎゅうっと強く握りしめていたのだ。
自分の身長よりずっと高い弟。
頭も良く、周囲の誰もが素晴らしいと賞賛した弟。
そんな弟の……まるで退化したような姿に、私は恐怖を覚えた。
弟は、そんな私の気持ちを察したのかもしれない。
ぬいぐるみの首が取れそうな程に抱きしめながら、走って部屋の中に入ってしまった。
私が弟と会ったのは……結局この日が最期になった。
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