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7.呪われしアルストメリー

人はいくらでも敵を作ることができるもの

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アルフィーの頭の中には、数万冊分の本の情報が詰め込まれている。
アルフィーの能力の凄いところは、情報がただ詰め込まれているだけではないということ。
必要な時に必要な情報を瞬時に引き出せるところ。

1を聞いて、1を返すのが凡人。
1を聞いて10を返すのが、普通でいうところの地頭が良い人だとするならば、アルフィーは1を聞けば100も1000も返すことができる、まさに常人離れをした能力を持つ魔人。

この能力をうまく使いこなすことができれば、きっとアルフィーの故郷は、現在のアルストメリーなんかとは比べ物にならない、世界統一すら目指せた、知識国家になりえたかもしれない。

だけど、当時の王は、それを選ばなかった。
それどころか、アルフィーという存在を恐れた。
アルフィーの底なしの知識欲と、それを頼る人々がいつか自分に反旗を翻すのではないかと、焦った。

人というものは、相手にそんな気が無かったとしても、そういうものだと認識さえできてしまえば……あっという間に敵として仕立て上げられてしまう。
ストーリーをでっち上げ、そのストーリーに共感した人を集め、またさらにでっち上げる。
伝染病のように広がっている、アルフィーという存在に関する創られた噂によって、アルフィーは簡単に国を揺るがす重罪人に仕立て上げられた。
王への反逆を企てた。
どんな行動がそう捉えられたのかは、人々は誰も知らない。
ただ、そういうことをしたのだ、と言葉だけがあっという間に広がっていく。
誰かが1人でも、アルフィーのように知識欲が豊富で、ちょっとした情報について

「もっと知りたい」

と思うことがあれば、きっとアルフィーが背負わされた罪に意義を唱えることもあっただろう。
しかし、誰もいなかった。
そんなことをする人は。
そんなことをしないように、王が規則を作ったから。

アルフィーは、数多く詰め込まれた知識から、この国の未来を予測していた。

いつか近いうちに、この国は滅びる。
人の手によって。

だからアルフィーは、あっさりと誰も知らないような知識を駆使して、あっという間に国を抜け出し、新天地へと旅を始めた。
アルフィーは知っていた。
この世界は、自分がいる国よりずっとずっと広いという事を。
そしてそんな世界に求めた。
自分という存在を認めてくれる国を……。
いや。国でなくてもいい。
集団が欲しいと。

アルフィーが国を出てからすぐ、選んだ方向は西だった。
その方向を選んだのは、アルフィーの持つ知識ではなく、ちょっとした偶然だった。
でも、その偶然こそが、後々知ったが、アルフィー以外の魔人の為せる技だった。

その魔人の名は、ルカ。
アルフィーが、最初に出会う、神の力を操る魔を持つ、聖なる少女。
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