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7.呪われしアルストメリー

魔の暴走

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「今度は何!?」

パラパラと、天井のかけらが私とプルメリア、そしてエディ王子に降りかかる。

「ううっ……」

しかも、エディ王子は本当に苦しそうにお腹を抱えてうずくまっている。
この様子は、ひどい食中毒で苦しんだことがある前世の自分と少し似ている気がした。
あれと同じ痛みだとしたら……うん……呼吸をするのも辛い程だろう。
私は、エディ王子を呆然と見下ろしているプルメリアに

「エディ王子に癒しの術をかけられない?」

と尋ねた。

「何ですって……?」
「……プルは癒しの術が使えるから……」

この世界では、つい昨日のこと。
私が男たちに襲われ、怪我をしたときにプルメリアに私は痛みを取ってもらった。
だから、プルメリアであれば、エディ王子の痛みを取ってあげられるのではないかと、私は考えた。
ただ勿論、先ほどまでのプルメリアの様子を考えると、エディ王子のことが何らかの理由で憎いという理由で、拒否する可能性も考えてはいた。

そこまでは、私でも考えることができたのだ。
しかし、ここでもプルメリアは私が予想していなかった内容を話し始めた。

「無理ですわ」
「え?」
「この状態は、とても癒しの術なんかでは太刀打ちできません」
「どういうこと?」
「これは、魔の暴走なのです」
「暴走?」

プルメリアは頷く。

「魔は増幅しすぎると、魔のエネルギーが、まるで体内を食い破るかのように、無理やり外に放出される現象が起きますの。それを私たちは暴走と呼んでおりますの」
「この状態がもし続いたら……エディ王子は……」
「…………肉体が……破裂する可能性は十分あります。それに間も無く、この場所も崩壊する可能性も……」
「そ、そんなこと……」

ありえるんですか、と言葉をつなげようと思ってやめた。
それが、現実になる可能性があることは、エディ王子の苦しげな顔と、今にも崩れそうなひび割れた建物を見ていれば……すぐに分かったから。

ここで、私はある仮説が頭に浮かんだ。

「もしかしてカサブランカの役目って……」

プルメリアは、これだけの私の言葉の意味を正確に読み取り

「そうですわ。この暴走を止めるのが、カサブランカ様の肉体が持つ空間を司る魔なのです」
「じゃ、じゃあ……まさか……」

カサブランカの記憶に残っていた、王家の秘密はこうだった。

王は伽を始める前は、30歳まで生きられなかった。
その魔力の力によって。
ところが、カサブランカの先祖であった王妃とのセックスにより、王の魔力が安定し出した。
だから、伽の習慣が始まった。
これが、真実だと思っていた。
信じていた。

けれども、そこからまた別の回答を導き出さないといけないのだとしたら……?
この本当の目的が、この魔の暴走というものを止めるものではないのだろうか?
ということは……。


(私が、ここでエディ王子とセックスをすれば……この暴走を止めることができる……とか?)
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