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7.呪われしアルストメリー
恐怖ゆえの混乱の末に……
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(ま、また出てきた!?)
アルフィーが入っている、アザレアの体から、また黒い髑髏のようなものが、たくさん出てきた。
「何だこれは!?」
エディ王子も、ちゃんと自我がある時に見たのは初めてだったのか、ちゃんと自分の意思として動揺していた。
それがいいのかどうかは、また別の問題だが。
(あーこれ、何度も見てるけど、やっぱり慣れない)
見た目がグロテスクなもの、気味が悪いものというのは、何度も見れば慣れる人は慣れるらしい。
残念ながら、私は推しの声優が出ているという理由で始めたホラー系乙女ゲームですら、途中の怖い描写のせいで詰んだほど。
そんな人間が、現実でそのような現場に遭遇したら、もうこれしかない。
「やっぱり怖い!!こないで!!!」
「か……じゃなくて、ランカ!?大丈夫か!?」
エディ王子は、育ち方がやっぱり良いのだろう。
空気読めないし、謎の行動もするし、自分の思いを乱暴にぶつけてくるところを差し引いても、女子に対する扱いは、前世で出会ったダメンズ達に比べれば、やはりずっと丁寧だ。
今も、私とアルフィーの間にすっと立ってくれている。
まるで、私を守ってくれるように。
(……というより)
「そなたに怪我させるということは、カシーが痛い思いをするかもしれないということだろう?無駄に怪我をすることはするな」
(やっぱりな)
「わざわざ、忠告ありがとうございます……」
私は私で、守ってもらったことのお礼を言うよりも、ムカっときたことに対する皮肉で返してしまったのは、大人気ないなと、言葉を発した後で気づいた。
それくらい、今の私には精神的ゆとりはなかった。
だから、すっかりこの設定を忘れていた。
黒い髑髏が、私の元に襲い掛かろうとする。
それが怖すぎて
「やめろ!やめろ!!」
と、手をぶんぶん振る。
目を瞑っているので、黒い髑髏がどうなってるかは見えない。
ただ
「ぐえっ!!」
エディ王子の頭と、首あたりには私の手が見事にヒットしてしまったらしい。
さらにその力が妙に強かったのか、それとも急所に当ててしまったからなのかはわからないが、どさりとエディ王子は地面に倒れてしまったようだ。
(お、王子ー!!!)
守ってもらうという姿勢はかっこよかったのに、ギャグ漫画のように早々にエディ王子のかっこいいところを奪う形になったのは、何だか申し訳ない。
そんな動揺もあったのだろう。
「やめて、こないで、こないで!!」
もはや自分が、どこに向かっているのか、誰に向けて手を振って攻撃しているのか分からないまま、私はぐるぐると動き回った。
大人しくしていればよかったものの、ただ突っ立っている方が怖いというのは、お化け屋敷あるあるだろう。
そして、私が何かの気配を即座に察して、頭でその気配が誰かを考える前に
「怖いって言ってるでしょう!!!!」
と力強く手で振り払うと、何かの肉体に当たった。
この場所で、今このタイミングで肉体に当たるとしたら、その持ち主は……。
(ま、まさか……)
しまった、と気づいた時には、遅かった。
私は、体が急に熱くなるのを感じた。
(な、何!?)
まるで、電気ポットが急速に温まって水が沸騰するかのようなスピードで、私の体には体感40度は軽く超える熱が集まってきた。
(やだ、怖い!!)
「助けて!!!」
そう、声を発した時だった。
「おい、ランカ、ランカ落ち着け!」
アルフィーの声が聞こえた。
ただし、耳から聞こえた声ではなかった。
「アルフィーさん……?」
そう思って、私が目を開けた瞬間の光景は、きっと死ぬ直前まで忘れることができない景色TOP5には入るだろう。
今まで見えていたのは、冷たい、石や土だけの真っ暗な空間。
それが今はどうだろう。
アルストメリーの城よりは随分質素だが、それでも丁寧に作られた石造りの城が、目の前に聳え立っていた。
「な、何これ!!!??」
アルフィーが入っている、アザレアの体から、また黒い髑髏のようなものが、たくさん出てきた。
「何だこれは!?」
エディ王子も、ちゃんと自我がある時に見たのは初めてだったのか、ちゃんと自分の意思として動揺していた。
それがいいのかどうかは、また別の問題だが。
(あーこれ、何度も見てるけど、やっぱり慣れない)
見た目がグロテスクなもの、気味が悪いものというのは、何度も見れば慣れる人は慣れるらしい。
残念ながら、私は推しの声優が出ているという理由で始めたホラー系乙女ゲームですら、途中の怖い描写のせいで詰んだほど。
そんな人間が、現実でそのような現場に遭遇したら、もうこれしかない。
「やっぱり怖い!!こないで!!!」
「か……じゃなくて、ランカ!?大丈夫か!?」
エディ王子は、育ち方がやっぱり良いのだろう。
空気読めないし、謎の行動もするし、自分の思いを乱暴にぶつけてくるところを差し引いても、女子に対する扱いは、前世で出会ったダメンズ達に比べれば、やはりずっと丁寧だ。
今も、私とアルフィーの間にすっと立ってくれている。
まるで、私を守ってくれるように。
(……というより)
「そなたに怪我させるということは、カシーが痛い思いをするかもしれないということだろう?無駄に怪我をすることはするな」
(やっぱりな)
「わざわざ、忠告ありがとうございます……」
私は私で、守ってもらったことのお礼を言うよりも、ムカっときたことに対する皮肉で返してしまったのは、大人気ないなと、言葉を発した後で気づいた。
それくらい、今の私には精神的ゆとりはなかった。
だから、すっかりこの設定を忘れていた。
黒い髑髏が、私の元に襲い掛かろうとする。
それが怖すぎて
「やめろ!やめろ!!」
と、手をぶんぶん振る。
目を瞑っているので、黒い髑髏がどうなってるかは見えない。
ただ
「ぐえっ!!」
エディ王子の頭と、首あたりには私の手が見事にヒットしてしまったらしい。
さらにその力が妙に強かったのか、それとも急所に当ててしまったからなのかはわからないが、どさりとエディ王子は地面に倒れてしまったようだ。
(お、王子ー!!!)
守ってもらうという姿勢はかっこよかったのに、ギャグ漫画のように早々にエディ王子のかっこいいところを奪う形になったのは、何だか申し訳ない。
そんな動揺もあったのだろう。
「やめて、こないで、こないで!!」
もはや自分が、どこに向かっているのか、誰に向けて手を振って攻撃しているのか分からないまま、私はぐるぐると動き回った。
大人しくしていればよかったものの、ただ突っ立っている方が怖いというのは、お化け屋敷あるあるだろう。
そして、私が何かの気配を即座に察して、頭でその気配が誰かを考える前に
「怖いって言ってるでしょう!!!!」
と力強く手で振り払うと、何かの肉体に当たった。
この場所で、今このタイミングで肉体に当たるとしたら、その持ち主は……。
(ま、まさか……)
しまった、と気づいた時には、遅かった。
私は、体が急に熱くなるのを感じた。
(な、何!?)
まるで、電気ポットが急速に温まって水が沸騰するかのようなスピードで、私の体には体感40度は軽く超える熱が集まってきた。
(やだ、怖い!!)
「助けて!!!」
そう、声を発した時だった。
「おい、ランカ、ランカ落ち着け!」
アルフィーの声が聞こえた。
ただし、耳から聞こえた声ではなかった。
「アルフィーさん……?」
そう思って、私が目を開けた瞬間の光景は、きっと死ぬ直前まで忘れることができない景色TOP5には入るだろう。
今まで見えていたのは、冷たい、石や土だけの真っ暗な空間。
それが今はどうだろう。
アルストメリーの城よりは随分質素だが、それでも丁寧に作られた石造りの城が、目の前に聳え立っていた。
「な、何これ!!!??」
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