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8.神から与えられたのは、罰と……
私の好みすぎる設定だった理由
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(推理が弱い……だと?)
ノアさんは、またしても鼻で笑った。
(この笑い方、虫唾が走る……)
「あの、ノアさん。失礼ですが」
「何だい?」
「その笑い方、本当にやめてくれませんか?」
「何故だね」
「…………集中できないからです」
前世での嫌なことが、次々と蘇ってくる。
カサブランカの脳に記憶として定着してしまうのが申し訳ないと思うくらいには、トラウマものの出来事の記憶もある。
だからこそ、集中したいと思っている。
この課題を考えるのに。
(それなのに……このクソ上司は……)
もういい加減、カサブランカの脳にクソ上司、の単語が刻み込まれそうだな……と、それも申し訳なくなってきたところで、今度はノアさんがこう言った。
「僕が笑うくらいで集中できないなんて、修行やり直したらどう?」
「何の修行ですか、何の」
「悲しいな、そんなことまで、僕はもう1度君に教えないといけないのかい?」
と言いながら、ノアさんが手を伸ばしてこちらに近づいてくる。
「な、何ですか……」
「もうめんどくさいから、僕の魔を使おうと思ってね」
「めんどうという理由で使っていい魔じゃないですからね」
お腹減ったからコンビニ行こう、のノリでまた細胞を変えられでもしたらたまったもんじゃない。
それはエディ王子も同じだったみたいで、すぐにカサブランカの前に立ち塞がってくれた。
「どいてくれるかな。僕は今指導をしてるんだよ。君の番はまた後だ」
(後でエディ王子の指導もするんかーい。そしてエディ王子はめっちゃ嫌そう……)
「エディ王子、私は大丈夫ですから」
「本当か?その体に傷だけはつけるなよ」
「…………はい」
(お約束はもう慣れたのでスルーするとして)
「ノアさん。私の推理が甘い、ということは、間違ってはいないということですね」
「……そうだね。間違ってはいない。でも正解でもない」
間違ってはいないが正解ではない。
つまり方向性だけは合っているということだ。
私が発言したのは、小説はこの世界と前世の世界の扉の役割を果たしているということ。
これに対して甘いと、ノアさんは言った。
つまり、ここをもう少し深く考えていかなくてはいけないということだ。
(待てよ……)
私が小説を読んだのはWEB小説。
電子データだ。
作者は画面の向こうにあたりまえに存在すると、思っていた。
でも思っているだけだ。
その存在を確認したわけじゃない。
そもそも、この小説が何故扉の役割ができたのか?
(アルフィーが閉じ込められた本の例もあるから、てっきりそれと同じ機能かと思っていたけど……違う視点が必要?)
ふと、私はもう1個ここで気になることを思い出した。
と言っても、読んでる当時はただ「運命」だと思っていたことだが。
そう。
私の好みすぎる設定なのだ。
キャラクターも、世界観も何もかも。
検索ワードもタイトルも含めて、私が見つけられないはずがないくらい、私の好み通りだったのだ。
小説に書かれているエッチな描写も含めて。
だから自然と、ブクマもしたし、毎日じっくり夜のお楽しみに使わせてもらっていたの、だが。
「いやいや、まさかそんな」
ついぽろりと口に出してしまった。
「どうかなさいましたか?」
「どうかしたのか?」
ノアさんとエディ王子二人に声をかけられた。
エディ王子にはガチで心配されてるのはわかるが、ノアさんは明らかに気づいたようだった。
私は、今、何を考えたのか。
「あの……ノアさん……ってそのぉ……」
この予感は当たってほしくない。
当たっててたまるか。
だが、確認しなければいけないと頭のどこかで警報が鳴る。
「あのですね、ノアさん……」
(でも私の趣味……というか性癖なんて……誰にも話したことなんて……)
「わ、私の好みの……小説?とか漫画?とか、ゲームとか、まさか知らない……です……よ、ね?」
「ああ、僕は、知らないよ」
「やっぱそうですよね…………ん?」
今、何といった?
「あの、すみません、確認なんですが……。今、僕はって、言いました?」
「言ったね」
「じゃあ……まさか……」
ノアさんは、ニヤリと腹黒い笑みを浮かべた。
「僕は知らないけど、彼女は知っていたよ」
ノアさんは、またしても鼻で笑った。
(この笑い方、虫唾が走る……)
「あの、ノアさん。失礼ですが」
「何だい?」
「その笑い方、本当にやめてくれませんか?」
「何故だね」
「…………集中できないからです」
前世での嫌なことが、次々と蘇ってくる。
カサブランカの脳に記憶として定着してしまうのが申し訳ないと思うくらいには、トラウマものの出来事の記憶もある。
だからこそ、集中したいと思っている。
この課題を考えるのに。
(それなのに……このクソ上司は……)
もういい加減、カサブランカの脳にクソ上司、の単語が刻み込まれそうだな……と、それも申し訳なくなってきたところで、今度はノアさんがこう言った。
「僕が笑うくらいで集中できないなんて、修行やり直したらどう?」
「何の修行ですか、何の」
「悲しいな、そんなことまで、僕はもう1度君に教えないといけないのかい?」
と言いながら、ノアさんが手を伸ばしてこちらに近づいてくる。
「な、何ですか……」
「もうめんどくさいから、僕の魔を使おうと思ってね」
「めんどうという理由で使っていい魔じゃないですからね」
お腹減ったからコンビニ行こう、のノリでまた細胞を変えられでもしたらたまったもんじゃない。
それはエディ王子も同じだったみたいで、すぐにカサブランカの前に立ち塞がってくれた。
「どいてくれるかな。僕は今指導をしてるんだよ。君の番はまた後だ」
(後でエディ王子の指導もするんかーい。そしてエディ王子はめっちゃ嫌そう……)
「エディ王子、私は大丈夫ですから」
「本当か?その体に傷だけはつけるなよ」
「…………はい」
(お約束はもう慣れたのでスルーするとして)
「ノアさん。私の推理が甘い、ということは、間違ってはいないということですね」
「……そうだね。間違ってはいない。でも正解でもない」
間違ってはいないが正解ではない。
つまり方向性だけは合っているということだ。
私が発言したのは、小説はこの世界と前世の世界の扉の役割を果たしているということ。
これに対して甘いと、ノアさんは言った。
つまり、ここをもう少し深く考えていかなくてはいけないということだ。
(待てよ……)
私が小説を読んだのはWEB小説。
電子データだ。
作者は画面の向こうにあたりまえに存在すると、思っていた。
でも思っているだけだ。
その存在を確認したわけじゃない。
そもそも、この小説が何故扉の役割ができたのか?
(アルフィーが閉じ込められた本の例もあるから、てっきりそれと同じ機能かと思っていたけど……違う視点が必要?)
ふと、私はもう1個ここで気になることを思い出した。
と言っても、読んでる当時はただ「運命」だと思っていたことだが。
そう。
私の好みすぎる設定なのだ。
キャラクターも、世界観も何もかも。
検索ワードもタイトルも含めて、私が見つけられないはずがないくらい、私の好み通りだったのだ。
小説に書かれているエッチな描写も含めて。
だから自然と、ブクマもしたし、毎日じっくり夜のお楽しみに使わせてもらっていたの、だが。
「いやいや、まさかそんな」
ついぽろりと口に出してしまった。
「どうかなさいましたか?」
「どうかしたのか?」
ノアさんとエディ王子二人に声をかけられた。
エディ王子にはガチで心配されてるのはわかるが、ノアさんは明らかに気づいたようだった。
私は、今、何を考えたのか。
「あの……ノアさん……ってそのぉ……」
この予感は当たってほしくない。
当たっててたまるか。
だが、確認しなければいけないと頭のどこかで警報が鳴る。
「あのですね、ノアさん……」
(でも私の趣味……というか性癖なんて……誰にも話したことなんて……)
「わ、私の好みの……小説?とか漫画?とか、ゲームとか、まさか知らない……です……よ、ね?」
「ああ、僕は、知らないよ」
「やっぱそうですよね…………ん?」
今、何といった?
「あの、すみません、確認なんですが……。今、僕はって、言いました?」
「言ったね」
「じゃあ……まさか……」
ノアさんは、ニヤリと腹黒い笑みを浮かべた。
「僕は知らないけど、彼女は知っていたよ」
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