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帰省

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夏祭での演奏曲は、4人で1階で練習をしていた。
故里でのライブなど、何年ぶりだろうか。
まぁライブは夕方であり車移動なので、家ではゆっくりできるようだった。
当初、1泊の予定だったが。
前日と1日目終了後の2日家に帰れた。
両親にも、家に帰れるとみんな電話していた。
夏の野外ライブなので、当時の衣装を再現した服装だった。
麗奈がTV出演してない間に、3人の人気も上がってきていた。
ツアーと同じ様に、車に乗って4人は出発していた。
いつも、小さな街なのでライブツアーでは素通りしていたのだった。
着替えのバックとギターを持って、マンションまで送られた。

家に着き、チャイムを鳴らすと母が出てきた。
父も、休みを取って自宅にいた。 
姉の茉莉子も夏休みで帰省していた。
幸平は、どこかに遊びに行ってるようだった。
みんなに出迎えられて、リビングでお茶を飲みながら話しをしていた。

「長かったわね。やっと帰ることができたのね? 毎日心配してたんだから。」

「麗奈。いっぱいお金稼いだのかな?少しは姉にご馳走しなさいよ。」

「多分、まだ給料として10万くらいしか。毎月貰ってないですよ。でも、ほとんどタダなので使う事ないです。あ この前400万でギター買っちゃいましたから、無くなったかもしれないですね。」

「そんな高いのを自分で買えたんだ。凄いね。ギターは今、何本持ってるの?」

「多分、7本だったと思いますよ。マンションも、最初は共同生活だったけど、今は1人づつ暮らしてますよ。」

「へぇ、事務所の近くなの?」

「スタジオの近くですね。同じ敷地に建ってるので。部屋がいっぱいあって使ってないですけどね。」

「そんなに広いのか? どんな部屋か興味深々だよね。」

「多分、見るとがっかりしますよ。寝室と曲作りの部屋と練習部屋とギターの保管庫と使ってない4部屋ですからね。」

「曲作ると、お金入るんでしょ? 貰ってないの?」

「貰ってないですね。まぁ、歌えたり、演奏できるからいいですよ。それに、ここまでなれたのは新垣さん達のおかげなのでね。」

「まぁ、小遣い10万じゃ多いよね。」

「そうですね。食事なんかも全部出してくれるから、使いみちないですよ。でも、先日買ったので多分100万はないかもしれないですけどね。」

「麗奈は、まだ若いから。そんなにお金持たせないんだろうね、いいことだと思うわよ。」

「今は、殆ど個人活動が多いから。みんなTVにでてますけどね。」

「麗奈は出ないのか? あんた1番人気なんだろ?」

「そうなんですか?あまり気にしてないですけど、他の人のレコーディングに入ったり。ライブとかも一緒にさせてもらったり、びっくりしたのはファッションショーにも時々出てますけど。」

「ああ 見た見た。雑誌の表紙とかにも出てたわよ。メイク上手いわよね。」

「あれは、殆どっていうか全部メイクさんがしてくれてますから。私はなにもしてないですけどね。」

「こっちは、化粧品なんかも高いの買えない安月給なのに。」

「えっと、合うかわからないですけど。今度送りましょうか?たくさんもらって余ってるので。化粧品会社から貰ってますから。」

「あ CMでやった化粧品会社からか。飲料水の方は?」

「あっちは、売れ行きが良くなって。1000万以上のギター貰いました。飲料水は色々と事務所に届かられてますけどね。」

「もう、この街の旅館やホテルは満室だよ。周りの街に泊まれない人は行ってるみたいだけどね。この街で、こんなの初めてだからね。みんな人の多さにビックリしているよ。」

「私達もメンバー抜かしても、30人くらい来てますからね。」

「そんなに来てるのか? 最初は4人でやってたのにね。」

「ええ 1人1人にマネージャーも付いていますし。ツアーとかは、いつもそれくらいですよ。今回は、上の人は1人も来てませんけどね。」

「まぁ、収容人数も知れてるからね。もう、朝からメインステージは席の奪い合いだよね。」

「ですよね。家族とかの席は確保してあるので、チケット渡しておきますね。よかったら来てください。2日分ありますから。幸平のも、貰ってきたんだけど。行かないのかしらね?」

「幸平は、多分デートじゃないのかな?多分、行くと思うよ。幸平は、私よりも麗奈が好きだからね。間違いなく行くよ。」

「しかし、麗奈もあの頃と比べてはっきりと話す様になったし。最初はどうなるかと思ったけどね。小さな声で、あまり話さないから。」

「いつからかしらね?メンバーが一時5人になって2回ほど注意して、ツアー初日で辞めさせちゃいましたけどね。今は他のバンドで弾いてますよ。」

「麗奈が怒ったんだ。珍しいわよね。怒ることあるの?」

「4人で練習とかレコーディングの時だけ怒りますね。でも、みんなも怒ったりしますよ。」

「何日くらいかかるの?レコーディングってのは?」

「ええと、様々ですよ。納得できれば早いし。できなければ1曲1週間かかりますからね。」

「今、曲作ってるのは麗奈と葉月さんだけなの?」

「セミプロになってからは、全部1人で作りましたよ。他のバンドとかのも曲を作ったりしていますけど。」

「なんか、曲調が違うのがあったりしたから。作曲が変わったと思ったけどね。」

「新垣さんの家に住む様になってから、色々なジャンルの歌も聞かされてきましたからね。まぁ、今でも。吾郎さんには、教えて貰ったりしていますよ。今日は、実家に帰るので特別にギターはアコースティック持ってきたんです。1番、使わないのなので大丈夫ですけどね。MartinとGibsonは預けてあります。Ovationですけど、生でも良い音しますよ。」

「お 麗奈の演奏を間近で聞けるのか?」

「そんなに期待しないでくださいね。お母さん達も知ってる曲とかコピーしたのを弾きますからね。」

ケースからギターを取り出すと、チューニングをしてアルペジオで弾き始めた。
スカボロフェア・ミセス・ロビンソン・70年代の懐かしのフォークを弾き語りした。

「おい、麗奈。いつ覚えたの? こんな古い曲とかまで。」

「ええと、他の人のライブとかで色々やってましたよ。譜面と曲を渡されて、2時間後にとかライブだったので。後は、ギター1本で前座とかもやってますから。」

「2時間で1曲マスターできるんだね。凄いよね。」

「2時間で5曲くらいですよ。まぁ、私はアドリブで入れたりするので簡単でしたけどね。曲がわかれば、なんとかなりますから。」

「ってか、このギターって新垣さんに譲ってもらった最初のアコースティックでしょ?これよりも良い音って、いくらの持ってるの?」

「400万で買ったのと、800万のを貰いました。多分、まだ値段はあがっていますけどね。最初のCMの時、社長さんから打ち上げの時に頂きました。」

「ギターって古いと値段良いんだよね?」

「そうですね。作った年代とか状態で値段は決まってくるみたいですので、保管とメンテはしっかりしてますよ。Vintageは5本あるので。まぁ、これもVintageなんですけどね。」

「これもVintageなのか。私も都内だけど、麗奈の場所わからないしね。」

「あ 電話してくれれば会いに行きますよ。殆ど、仕事入ってなければ家にいたりするから。時間はありますけどね。お姉ちゃんがあっちにいるのも知らなかったし。」

「2回くらい、ライブも見に行ったんだよ。同僚とね。」

「楽屋まで来てくださいよ。都内なら、夜の終われば少しだったら時間あるから。」

「そうだね。今度はいくよ。花束いるかな?」

「家族でいらないですよ。もう、お姉ちゃんたら。そうだ、楽器屋行くけど一緒に行きませんか?お姉ちゃん。」

「いいわよ。夕方には戻るんでしょ?お母さんの手料理も食べたいでしょうしね。」

「はい 久しぶりですものね。お母さんのお料理って。」

「どんな格好でいくの? お洒落していくのかな?芸能人だから。」

「普通ですよ、ジーンズとTシャツですけど。後は目立たない様にキャップとメガネかけていくだけですから。」

「っていうか、麗奈はお洒落とかしないの? 普通、もう22になったらするでしょ?」

「いつも、こんな感じですよ。TVとかでは衣装あるし、他も貸衣装なので自分のは、小さくなったから買い替えたけど、あまり枚数とかもないですから。」

「じゃ、行こうか? お母さん麗奈と行ってきますね。」

2人は、マンションから出て商店街まで歩いていた。
今では、姉の茉莉子よりも身長が高かったので。
少し目立っていたが、話しをしながら2人で歩いていた。
楽器屋で、色々とギターなど見ていたが目ぼしいものはなかった。
エレキの2種類の弦を5セットづつ。
アコースティックの3種類の弦も5セットづつカゴに入れて、ピックを確かめながら4種類を20個づつ購入してレジで精算した。
カードだと名前とかわかってしまうが、これだけの買い物だとカードだった。
店員は気が付かなく、領収書を貰った時に名前で気がついていた。
新しく変わった店長に頼まれて、CDを袋から出して渡されて30枚にサインをしてからお辞儀をして店を後にした。

「バレちゃったわね。サインとかいつもするの?」

「あまりしないですよ。今みたいに見つかった時とかは売上の為にしますけどね。お姉ちゃん、お茶していこうよ。ファーストフードでいいから。」

2人は、ファーストフードでアイスレモンティーを飲んでいた。

「いつも、ファーストフード入ってるの?」

「いつも、ファミレスとかも多いですよ。ツアーの時とかは、特にね。」

「以外ね、いつも豪華な食事してると思ってたわよ。」

「最高は焼肉屋さんと海岸で貝食べましたよ。後は、毎日3回食事は作ってくれるから。大丈夫ですけどね。」

「マネージャーさんに、我儘言って困らせてるでしょ?」

「あ そうかもしれないですね。メンテの時に楽器屋に行ってもらったり、レコーディングの時にお弁当買ってきてもらったりしてるから。」

「まぁ、それくらいは、普通でしょ?ジュース買ってきてとか頼んでないの?」

「自分の事は、極力自分でしてますね。買い物とかに、付き合ってもらったりはしてますけど。」

「昔から、お母さんも手がかからない娘だって言ってたけど本当ね。でも、色々な弦を買うのね。エレキとアコースティックで2種類だと思ったわよ。」

「まぁ、それぞれ出したい音あるでしょ? それによって変えているの。ライブ前には張り替えるんですけどね。それで張り替えないから、怒って辞めさせちゃったんだけど。」

「たかが弦でしょ? どうってことないんじゃないの?」

「ええ でも、新品同様なら許したんだけどね。使いこんだ弦でリハでも、音が悪かったから。怒っちゃいましたよ。その時は、ツインギターでも、1本と同じだったのでね。演奏についてこれなかった感じでしたから。」

「そんなにその娘下手だったの? 腕悪いの?」

「多分、お姉ちゃん明日聞くとわかりますよ。私達の前に演奏しますからね。5人グループの中で女性1人だから目立ちますから。」

「そうなんだね。明日よく聞いてみよっと。」

「そろそろ帰りましょうか?帰ってランニングもしないといけないから。」

「ランニングするの? 今日はやめればいいのに。」

「毎日の日課ですよ。朝と夕方走ってます。高校からずっとですよ。ライブとかの時は夕方は走らないですけどね。」

「そうか、それじゃ帰ろうか?麗奈は、昔から生活習慣が変わってないよね。」

2人はゆっくり歩いて、マンションまで話しながら帰っていった。
マンションに帰ると、そのままになっている自室に荷物を置き着替えて走りに出かけていた。
1時間後、帰宅した。
夏で汗ビッショリになっていた。

「麗奈。お風呂沸かしてあるから、シャワーだけじゃなくて。ゆっくり浸かって来なさいね。」

着替えを持って、風呂場に行き。
シャワーを浴び、頭と身体を洗うと湯船に浸かっていた。
毎日の手首の運動などもして30分くらい入っていた。
着替えて、髪の毛を乾かしてリビングに行った。

「麗奈姉ちゃん、お帰りなさい。彼女が会いたいからって連れてきちゃったけど。」

「あ 幸平の彼女さんなのね。大切にしてあげてね。麗奈です。幸平がいつもお世話になってます。よろしくおねがいしますね。」

「あ 会えて光栄です。まさか、REIさんが幸平君のお姉さんだとは知らなくって、さっき知りました。大ファンなんですよ。CDも全部持ってますから。」

「ありがとうね。ゆっくりしていってよね。お母さん、一緒に食事してもらったら?」

「ええ いいですけど、麗奈はいいの?」

「幸平の彼女でしょ? 一緒に食べましょうよ。後で、何曲かここで弾くわよ。」

「おい、麗奈。また弾くの? さっき、5曲くらい弾いたじゃないの?」

「まぁ、明日の練習で部屋でするつもりだったのでいいですよ。」

「まだ、相当練習してるの? 学生時代は1日7時間くらいだったかしら?」

「この頃は、少なくて多くても5時間程度ですよ。後は、ライブとか色々な仕事があるから。上京した当時は14時間くらいだったですけどね。」

「お母さん聞いてよ。さっきも楽器店でバレちゃってね。CD30枚にサインして帰ってきたけど、有名人よね。麗奈って。ビックリしたわよ。」

「まぁ、有名になっても、気取ってたりしないのがいいんでしょ?可愛い妹だものね。茉莉子にとっては。」

6人で色々話しをしながら食事をしていた。 
賑やかな食卓だった。

「あ 遅くなると悪いから、電話してね。後で、幸平が送ってやりなさいよね。」

「幸平にも彼女ができたのね? お姉ちゃんは?彼氏いるの?」

「いるわよ。当然でしょ? そういう麗奈はどうなの?」

「ここまでずっと、曲作ったりレコーディングとかでそんな暇なかったですよ。もう、中1からずっとだもの。知ってる男性って、幼馴染の秀一くらいだったもの。」

「秀一ね。プレイボーイで有名だからね。いっつも、彼女違ってたし。どれが本命だか、わからないわよね。」

食事も終わり、片付けをしてから6人でリビングで話しをしていた。
催促されて、彼女は家に電話をしていた。 
母が電話を代わり色々と話しをしていた。

麗奈は部屋からギターを持ってきて、ケースから取り出しチューニングした。

「さーて。さっきは懐かしい曲ばかりだったけど、明日のライブのも含めて演奏するわね。練習だから、期待しないでね。」

アルペジオで弾き初め、メロディーやリードなども1本のギターで弾きながら4曲を軽く歌っていた。
彼女の方は、目の前で麗奈が演奏して歌ってるので感激していた。

「彼女さんは、なんの曲が1番好きなのかしら?1曲だけリクエスト応じますよ。」

「えっと、去年のCMの曲です。あのギターが凄かったのが好きです。」

「じゃ、歌えるところは一緒にね。リクエストにお応えして演奏しまーす。」

Martinの音色ではなかったが、当時よりもかなりアルペジオにも磨きがかかり。
綺麗な音で演奏して2人で歌っていた。

「いつも、これくらい小さな声とかで歌ってるんですか?」

「いいえ、今マンションだから近所迷惑でしょ? だから、口ずさむ程度ですよ。多分、10倍くらいの大きい声出ますから。」

「でも、そのギターも凄い高そうですよね。」

「ええ 高いけど、今は練習に使う程度ですよ。他の方がいいからね。」

「何本持ってるんですか? 」

「7本かしらね。でも、総額にすると4300万ですけど。まだ、値段上がってますからわからないですよ。当時は、これが最高のギターでしたけどね。」

「それって、いくらくらいするんですか?」

「多分、70~80万すると思いますよ。これも古いVintageなのでね。」

「明日、絶対見に行きますよ。」

「ええ でも、多分満席だと思うわね。ちょっと待っててね。チケットあるか聞いて見てあげるから、1日でいい?」

「できたら、2日見たいですね。幸平君も2日行くんでしょうから。」

麗奈は、洋子に電話していた。  
ずっと話しをしていて、やっとチケットを2枚確保できた。

「チケット、取れたから。明日ここに持ってきてくれるみたいなので、弟に渡しておきますね。こんな熱烈なファンがいてくれて嬉しいですよ。ありがとうね。」

「ほら、幸平。遅いから、送っていきなさいね。ちゃんと送り届けなさいよ。」

幸平と彼女を玄関まで見送り、リビングに戻るとギターを閉まっていた。

「サービス精神旺盛だね。麗奈は。」

「まぁ、部屋で弾くつもりだったので。どこでも一緒なので、喜んでくれればいいですよ。」

「明日も泊まれるだよね。麗奈」

「ええ 明後日は、演奏終了したらそのまま帰ると思いますけど。これからは、暇な時は来ますから。部屋でギター弾いたりはしますけどね。」

「そうだね。お母さん達もいつも心配してるから、時々は日帰りでもいいから帰ってくるといいわよ。そうそう、その時は私も乗せてきてね。車でしょ?」

「ええ いいですよ。多分、私の車はツアーで移動用に使ってるミニバンですけどね。それでもよければ待ち合わせして来ましょうね。」

「ミニバンって6人乗りか? 凄いよね。」

「運転手さんとマネージャは乗ってますけどね。ツアー以外は、後ろの2個の席は取り外してギターを運んでますよ。」

「麗奈の会社って、儲かってるかしら? そんなに車まで買っちゃって。」

「会社の事は、さっぱりわからないですよ。仕事やってるだけですから。でも、単純に計算しても、ツアーとか最低でも2000人なので2000✕3000円で600万かしら?それが、1箇所で1日2回だから。損してないと思いますよ。ツアーでは100回ライブするので。人件費とか場所借りるのにお金かかりますけどね。」

「会社、大きくなってるんだろうね。麗奈達がデビューする1年くらい前からだからね。ところで、みんなとは相変わらず仲良くやってるの?」

「仲はいいですよ。ただ、会えない時は1日2時間くらいしか会ってないですけどね。朝走る時と、朝食の時だけですから。」

「まぁ、個人活動すると。色々と問題でてくるグループもあるみたいだからね。そこは、問題ないみたいだね。」

「大丈夫ですよ。そうそう、明日帰ったら私のグッズでよければプレゼントしますから。貰ってね。」

「期待していいのかな? 妹のグッズ持つなんて照れくさいけどね。ありがたく貰うよ。」

それからしばらくして、部屋で消音器をつけて練習をしていて0時に寝た。
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