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File01 異世界で、科学捜査官ならぬ魔法捜査官になった件
#09 サミちゃん その2
しおりを挟む錬金術で生み出される物は、その過程でほぼ必ずエーテル水というものが使われるらしい。つまりエーテル水は錬金術の基礎アイテムだ。
コンテストはこのエーテル水の純度を競う、というものだった。
「学年最下位のサミが入賞するほどのエーテル水が作れるはずがない…との噂が立ったのじゃ。そして間もなく、あれはアカデミーの備品『イーサーの壺』で作ったものだと投書があったのじゃ」
「わたし不正なんかしてません!」
サミちゃんが大声を上げた。
「うん、信じるよ。サミちゃん」
会ったばかりだけどオレは確信していた。
サミちゃんは不正とかするような子じゃない。ドジっ子に悪人はいないのだ。
「確認したところ、アカデミーにあったイーサーの壺がなくなっていた。で、サミの部屋が調べられ、件の壺が見つかった…というわけじゃ」
錬金アカデミーの生徒はすべて寮で生活しているそうだ。その学生寮のサミちゃんの部屋でイーサーの壺とかいうが出てきた、と。
「わたし知りません。イーサーの壺だって、触ったこともないです」
「アカデミー側は、素直に不正を認めるなら処分は穏便にという方針じゃったが、この通りサミは不正を認めない。で、一ヶ月の停学処分となったのじゃ」
「そんな…ひどくないですか?」
不正だと決めつける学校側に、オレは腹が立った。
「じゃが、サミの部屋にイーサーの壺があったのは事実。アカデミーとしてはこれでも温情ある処分のつもりなのじゃ」
「そんなの、誰かがサミちゃんの部屋に置いたかもしれないじゃないか」
「その通りじゃ。で、それをどう証明する?」
「ぐぬぬぬ……」
確かに。証明できなければ「やった」「やってない」の水掛け論だ。
「お主の知恵を借りたいというのは、これなんじゃが。わかっておるか?」
「へ?」
「サミの無実を証明する知恵はないか、と聞いておるのじゃ。察しが悪いのう」
呆れるのじゃ子さん。
「も、もちろん! わかってますよ!」
と、言ったものの、どうしたらいいんだ?
「ソータさん、お願いします。わたし、不正なんてしてません……」
悔し涙を浮かべるサミちゃん。そこに──
「頼むよ。サミを助けてくれ」
お店の女将さんらしき人──エプロンをかけたおばさんが来て言う。さらに、
「あんたマロウドなんだろ? 知恵を貸してくれよ」
「サミちゃんを助けてくれ」
「好きなものおごるぜ。異世界の賢者さん」
と、店内にいた客たちまでオレを囲んで、やいのやいの言うのだ。
この店の客はみんなサミちゃんの応援団か? ファンクラブか?
「待って! ちょっと考えさせて」
あまりの勢いにこわくなって、オレは叫んだ。
応援団は黙ってくれたが、その視線はオレに注がれている。
……どうすりゃいいんだ?
オレは普通の大学生だ。
異世界から来たってだけで、錬金術も、この世界のこともまるでわかっちゃいない。なのに賢者とか思われているし……。
そこに、パタパタという羽音がした。
「うわっ」
店の中に、青と白の半透明の小鳥が飛び込んで来た。通りの上を飛び交っていた鳥だ。
小鳥はのじゃ子さんの元へと向かうと、ぽんっと小さくはじけ、その姿を手紙に変えた。
「──メールバード。この世界の手紙は、鳥に変身して自ら宛先の元へと飛んで行くのじゃ。封筒に魔法がかけられておってな、値はちと高くなるが、住所ではなく個人の手元に届くものもある」
呆気にとられるオレにそう言うと、のじゃ子さんは三角の封を開け、便せんを取り出した。でもすぐに、
「むぅ…眼鏡を忘れたのじゃ」
と、顔をしかめた。
幼女なのに老眼らしい。
のじゃ子さんは空中に光る数式を描きはじめた。魔法を使うのだ。
なんとなく見ていると、のじゃ子さんはフィニッシュの二本線の後、左の指でオレを指差した。
「わっ!?」
オレの胸の辺りが微かに光った。
いや違う、横書きの文字が並んでいる。これってのじゃ子さんに届いた手紙か? オレの胸をスクーリン代わりにして、手紙を拡大投影しているのか!
「ふぅむ……」
驚くオレをほっといて、のじゃ子さんが手紙を読みはじめた。
よく見ると、のじゃ子さんは右手の人差し指と中指で手紙を指したままだった。
「のじゃ子さんの指って、カメラになっているんですか?」
言ってから、この世界にカメラなんてものがあるわけないことに気づいた。
「まあそんなものじゃ」
「この世界にカメラあるんですか!」
「おぬしの世界のものとはちと違うがの」
さすが魔法文明だ。
「これは光の魔法の一種じゃ。指差したものを別の場所に投影する。投影した後は、このように──」
のじゃ子さんが、その小さな指をちょいちょいと動かすと、
「指の操作で拡大、移動が行えるのじゃ」
指の動きに合わせて、文字が拡大されたりスクロールしたりした。
「すっごいレベルの高い魔法ですよ。これ」
サミちゃんが目をぱちくりして言う。
そんな高度な魔法を、メガネ忘れたからスマホで拡大、みたいに使うなんて──
「──あ」
その時、オレは閃いた。
「のじゃ子さん、これって二つのものを一つに重ねたりできます?」
「こうか?」
のじゃ子さんが左手を振ると、オレの胸に投影されていた手紙の映像が近くの壁に移動した。続いてその隣に、手紙の二枚目が現れた。
のじゃ子さんが右手の指をちょいちょいすると、二つの手紙同士が近寄り、一つに重なった。
これならいけるかも!
「サミちゃん。例の壺、触ったこともないっていうのはほんと? あと壺の材質は?」
「はい、触ってません。イーサーの壺はガラス製ですから、うっかり割ったらと思うと怖くて……」
ぶるぶるとサミちゃんは震えた。
きっとお高いのだろう。その上ガラス製だから、ドジっ子のサミちゃんは触れもしなかった、と。
「もう一つ。これからオレが言うモノ、サミちゃんは作れる?」
オレは思いついたアイデアと、それに必要な薬品とか道具とかを話した。
「はい、用意出来ますよ」
元気に即答するサミちゃん。さすが錬金術師だ。
「なかなか面白いのう」
のじゃ子さんは目を輝かせ、ハーブティを一口飲んだ。
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