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File02 ファンタジー世界に岡っ引き娘がいた件
#プロローグ
しおりを挟むその夜、『歌うクジラ亭』の主・ヨナは、一人で店じまいをしていた。
いつもは妻のサナと共に片付けと床の清掃をするのだが、この日は妻を怒らせてしまい、一人で店じまいすることになってしまった。
「あんな怒ることないじゃないか。そりゃ、ちょっと予定外の借金をしちまったけどさ」
ぶつぶつつぶやきながら、イスをテーブルの上に上げてゆく。
夫婦ふたりでやっている小さな飲み屋である。テーブル席は五つしかない。
「まあ明日になれば機嫌も直るだろう。それに、アレを手に入れたんだ。借金なんかすぐ返せるさ」
つぶやきながら床をモップ掛けする。すると、テーブルの下に銅貨が1枚、落ちているのに気づいた。
「早速、運が向いてきたか?」
かがんで銅貨を拾い、ヨナは笑みを浮かべた。
その直後だ。ヨナは背後に人の気配を感じた。
「誰──」
振り向きかけた瞬間、ガツン! と頭に衝撃が来た。
硬く重いもので殴られたのだ。
痛みより衝撃が勝り、ヨナの意識は一気に遠のいてゆく。
死ぬのか…オレは……。
床に倒れたヨナは、薄れ行く意識の中、それを悟った。
借金に追われる日々とサヨナラできるなら、いい…か……。
それが、ヨナが最期に思い浮かべた思いだった。
かくして、酒場の店主ヨナは死んだ。
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