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File02 ファンタジー世界に岡っ引き娘がいた件
#01 酒場の主殺人事件
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1
「そんなもの挿して、痛くない?」
「怖がるでない。痛いのは最初だけじゃ」
「やっぱり痛いのか!」
「こら! 逃げるな!」
逃げようとするオレの背中に、のじゃ子さんが飛び乗った。
見た目は10歳くらいの女の子。小さくて軽い身体は、普通ならどうってことないけど、体勢が悪かった。
「うわっ!」
腰を浮かせたところに背中に飛びつかれ、オレはラウンジの床に倒れてしまった。
なんとか背中ののじゃ子さんを振り払い、逃れようとする。
「ええい! 往生際の悪い!」
振り払われまいとのじゃ子さんがオレの身体にしがみつく。
じたばたどたばた。じたばたどたばた。床の上でもみあっていると、
「何をしているんですか?」
「楽しそうですね」
笑いをふくんだ声がかけられた。
サミちゃんとクロエさんだった。
「不便しておるソータに、〈スパイク〉のオプションを付けてやろうとしたのじゃが、こやつ、ビビりおってな」
と、のじゃ子さんが右手に持った長い釘みたいなものを二人に見せた。
オレの頭には〈スパイク〉という魔法のアイテムが打ち込まれている。
脳の機能を拡張する魔法のアイテムで、これのおかけで、オレはこの世界の言語を日本語のように話し、読むことができている。
その形はチューブ状の釘みたいで、釘の頭にあたる部分はイヤホンジャックそっくりだ。だから今、オレの頭のてっぺんには小さな穴がある。
なんで穴がと思ってたけど、オプションを挿すものだったのだ。
「そんな暗殺者が暗器持つみたいな持ち方で迫って来たらビビりますって! 〈スパイク〉を打ち込まれた時だって、すげぇ痛かったんだよ?」
痛みはすぐ消えたけど、マジで悶絶するほどの激痛だったんだから。
「だから、あの時のほどの痛みはないというに!」
逃げようとするオレにのじゃ子さんが飛びかかってきた。
「わぶっ!」
前から肩車したみたいな体勢になってしまった。のじゃ子さんの両脚がオレの首に巻き付き、お腹が顔に押しつけられて何も見えない。身体が小さいせいか体温が高い。
「観念せい!」
のじゃ子さんの声と同時に、
「イダっ!」
脳天に電撃が走った。そんな痛みだった。キツい頭痛くらいの痛みだけど一瞬で消えた。
「どうじゃ? たいして痛くなったであろう」
のじゃ子さんはオレの上から降りると、指先に点した光で空中に光る文字を書きはじめた。
──秘文魔法。
空間に満ちるエネルギーを変換したり移動したりすることで、術者が望む形でエネルギーを取り出すという魔法だ。
空中に描かれる光る文字は数式かプログラム言語みたいで、そのせいで世界のコードを書き換えているみたいに思える。
今回の文字列は短く、すぐにフィニッシュの平行線が引かれた。
「チクチクするんですが? …あれ?」
頭の芯──〈スパイク〉がチクチクしたと思ったら、それもすぐに止んだ。
「翻訳魔法のアップデート完了じゃ。試しに、なんぞ書いてみよ」
のじゃ子さんが、ラウンジに置かれたキャスター付きの黒板を指差した。
そうなのだ。オレはこっちの言語を話し、読むことができるけど、書くのは苦手だった。
かなり集中力が必要で、集中が切れるとこっちの言葉で書いたはずが日本語で書いてしまうのだ。
これはキツいとボヤいたことで、さっきのドタバタ騒ぎになったのである。
「それじゃ……」
オレはチョークを取り、
「酒、場、の、主、人、殺、人、事、件」
と、日本語で縦書きに書いた。
「どう? 読める」
「酒場の主殺人事件ね」
なぜかクロエさんが、首を横に傾けながら答えた。
「マジで? オレ日本語で書いたし、日本語にしか見えないんだけど!」
黒板に書いた文字でも、みんなにはこっちの文字に見えているんだ。
「ちと読み難いがの」
「横に書いていただけたらと思いますが」
のじゃ子さんとサミちゃんも首を横にして言う。
あ、こっちの文字は横書きだっけ。だからみんな首を横にしているのか。
──魔法は万能じゃない。
あらためてそれを知ったオレだった。
2
「それでは、酒場の主殺人事件の捜査会議をはじめます」
あらためて「酒場の主人殺人事件」を横書きで書いて、オレは宣言した。
オレ、ソータこと南城乃 惣太は刑事ドラマが好きな、平凡な日本の大学生だった。
それが魔法が科学の代わりをしているファンタジーな異世界にとばされてしまった。
で、色々あって魔法で犯罪捜査をする研究所の主任研究員になった。
オレの科学捜査の知識を、魔法で再現して犯罪捜査をしようというものだ。科捜研ならぬ魔捜研である。
といっても、オレの知識ってのは刑事ドラマで覚えたものなんだよな。
今回は殺人事件。本物のコロシだ。
刑事ドラマで覚えた程度の知識で解決できるのか…不安である。
「現場はダンカン通りにある個人経営の酒場。被害者は主人のヨナ。44歳」
キャスター付きの黒板に、「被害者 酒場主ヨナ(44)」と横書きで書く。
「発見者は妻のサナ。朝、店の準備をしにやって来たところで発見した…とのことじゃ」
衛士──オレたちの世界でいう警官にあたる人たちの報告書を、のじゃ子さんが読み上げた。
見た目は小学生みたいだし、普段の言動もコドモそのものなんだけど、実年齢は500歳以上だという。魔捜研の所長で大賢者の称号を持つ、とってもエラい魔法使いである。
「次は、現場の足跡について。サミちゃん」
「はいっ」
青い髪と瞳の可憐で癒やし系の少女が、元気よく返事して立ち上がった。
サミちゃんは錬金術師で、犯罪捜査に役立つ薬品や機材の開発、使用を担当。
今回は足跡の撮影と分析を担当してくれている。
「お店の入り口から遺体のあった場所にかけては足跡はほとんどありませんでした。殺されたご主人が掃除したのでしょう。遺体から奥にかけてはたくさん足跡がありました」
そう言うと、サミちゃんはテーブルの上にあった水晶の多面体に手をかざした。
空中にたくさんの下足痕──足跡の映像が投影された。この水晶塊はオレたちの世界のプロジェクターみたいなものだ。
「判別できた下足痕は4つ」
サミちゃんがかざした手を軽く動かすと、たくさんあった足跡で鮮明なものだけが残り、他は消えた。残った下足痕は1から4までナンバリングがされていた。
「1番はご主人のもの。他は不明ですが、こちらは──」
サミちゃんが手を軽くふると、下足痕4番の画像が拡大された。
「この4番は、女性用の靴っぽいので、たぶん、奥さんのものだと思います」
「そっちは後で奥さんの靴と照合させてもらおう」
オレがそう言うと、サミちゃんが頷いてプロジェクターを切った。
「クロエさん、遺体について詳しい報告を」
「はいよ」
軽いノリで答えたのは、銀髪と赤い目、灰色の肌をした美人──クロエさんだ。グラマーな上、露出度の高い服を着ているから目のやり場に困る。
「死亡時刻は23時、閉店してすぐね。死因は頭部を鈍器のようなもので一撃されたこと」
クロエさんは死霊術師。
死の専門家である彼女は、死亡時刻、死因などを分析する監察医のポジションだ。
「凶器は不明。傷口からすると、カドがあるけど尖ってはいないもの…みたいな?」
「カドがあるけど尖ってはいないもの? たとえば…レンガとか?」
「そんな感じ」
「でも、お店の中にも外にも、レンガはありませんでしたよ?」
クロエさんとオレのやりとりに、サミちゃんが首を傾げた。
凶器が不明…ドラマでは定番の展開だよな。ドラマではどうやってたっけ……
3
「で、どうするのじゃ?」
のじゃ子さんが尋ねた。
捜査方針を決めろ、ということだな。
「そうですね…まずは凶器の特定。特定できればそこから犯人が見つけられるはずです」
ドラマではだいたいそうだったよな。
「凶器を見つけたとして、どうやってそれが犯行に使われたものだと判定するの? 犯人が血を拭き取ったりしてるかもしれないし」
と、今度はクロエさん。
「拭き取ってもブラックライトかルミノールがあれば……」
と言いかけて気づいた。
「こっちの世界にブラックライトってあります?」
この世界は魔法が科学の代わりをしている。下足痕を空中に投影した水晶のプロジェクターのように21世紀の日本より進んでいる技術もある。
もしかしたらブラックライトも……。
「なんじゃそれは?」
のじゃ子さんたちが顔を合わせた。
残念、なかったか。
「ええっと…紫外線だったかな? 紫の光を出すんだけど……」
「紫の光? こうかの」
のじゃ子さんが空中にルーン文字を描くと、指先から紫色のビームを放った。
「おおっ!?」
まるでレーザーポインターみたいだ。さすが大賢者のじゃ子さん!
「それでカップを照らしてみて! ここ!」
オレは自分が口をつけたティーカップの指差した。ブラックライトと同じ光なら、唇をつけた跡が浮かび上が──
「何も出ないわね」
──らなかった。
「ダメか…!」
のぞき込んだクロエさんがつぶやき、オレはガッカリした。
ただ紫の光で照らしてもブラックライトの代わりにならないんだな。
「じゃあルミノール液だ。オレのいた世界では、ルミノール液っていう血液と反応して光る薬があるんだけど、サミちゃん、そういうの作れないかな?」
錬金術師のサミちゃんはシミ抜きや指紋検出の薬を作ったことがある。ルミノール液ならいけるかも?
「それはどういう原理なんですか?」
「原理?」
「はい、何と何が反応して光るのかがわかれば、作れるかもしれません」
「えっと……」
ドラマで語られていたような気がするんだけど。CSIシリーズのどれかで…いやクリミナルマインドだっけ? ……思い出せない。
「原理はわからないのね」
「……すみません」
クロエさんに指摘され、オレはうなだれた。
「そんな顔するな。大賢者たるわしも、あらゆる知識に精通しているわけではないのじゃ」
「私、発光関係の錬金術を調べてみます」
「そんじゃアタシは血液関係の資料にあたってみるわ」
のじゃ子さんに続いてサミちゃんもクロエさんが言う。
「ありがとう」
「わたしたちはチームですよ。ソータさん」
微笑んでサミちゃんが言う。
ああ、この笑顔に救われる。やる気出て来た!
「うん、それじゃサミちゃんとクロエさんは、ルミノール液の開発を。オレとのじゃ子さんで被害者の怨恨関係を調べるよ」
オレが方針を告げると、「はいっ」「あいよ」「うむ」とみんなが大きくうなずいた。
うん! みんなとなら出来る気がしてきたぞ! がんばろう!
「魔捜研が手がける最初の殺人事件じゃ。国王や騎士団も注目しておるぞ」
「しくじったら予算縮小。ヘタしたらラボの閉鎖もあるかもね」
やる気が出たところでプレッシャーをかけてくるのじゃ子さんとクロエさん。
が、がんばろう……。
「そんなもの挿して、痛くない?」
「怖がるでない。痛いのは最初だけじゃ」
「やっぱり痛いのか!」
「こら! 逃げるな!」
逃げようとするオレの背中に、のじゃ子さんが飛び乗った。
見た目は10歳くらいの女の子。小さくて軽い身体は、普通ならどうってことないけど、体勢が悪かった。
「うわっ!」
腰を浮かせたところに背中に飛びつかれ、オレはラウンジの床に倒れてしまった。
なんとか背中ののじゃ子さんを振り払い、逃れようとする。
「ええい! 往生際の悪い!」
振り払われまいとのじゃ子さんがオレの身体にしがみつく。
じたばたどたばた。じたばたどたばた。床の上でもみあっていると、
「何をしているんですか?」
「楽しそうですね」
笑いをふくんだ声がかけられた。
サミちゃんとクロエさんだった。
「不便しておるソータに、〈スパイク〉のオプションを付けてやろうとしたのじゃが、こやつ、ビビりおってな」
と、のじゃ子さんが右手に持った長い釘みたいなものを二人に見せた。
オレの頭には〈スパイク〉という魔法のアイテムが打ち込まれている。
脳の機能を拡張する魔法のアイテムで、これのおかけで、オレはこの世界の言語を日本語のように話し、読むことができている。
その形はチューブ状の釘みたいで、釘の頭にあたる部分はイヤホンジャックそっくりだ。だから今、オレの頭のてっぺんには小さな穴がある。
なんで穴がと思ってたけど、オプションを挿すものだったのだ。
「そんな暗殺者が暗器持つみたいな持ち方で迫って来たらビビりますって! 〈スパイク〉を打ち込まれた時だって、すげぇ痛かったんだよ?」
痛みはすぐ消えたけど、マジで悶絶するほどの激痛だったんだから。
「だから、あの時のほどの痛みはないというに!」
逃げようとするオレにのじゃ子さんが飛びかかってきた。
「わぶっ!」
前から肩車したみたいな体勢になってしまった。のじゃ子さんの両脚がオレの首に巻き付き、お腹が顔に押しつけられて何も見えない。身体が小さいせいか体温が高い。
「観念せい!」
のじゃ子さんの声と同時に、
「イダっ!」
脳天に電撃が走った。そんな痛みだった。キツい頭痛くらいの痛みだけど一瞬で消えた。
「どうじゃ? たいして痛くなったであろう」
のじゃ子さんはオレの上から降りると、指先に点した光で空中に光る文字を書きはじめた。
──秘文魔法。
空間に満ちるエネルギーを変換したり移動したりすることで、術者が望む形でエネルギーを取り出すという魔法だ。
空中に描かれる光る文字は数式かプログラム言語みたいで、そのせいで世界のコードを書き換えているみたいに思える。
今回の文字列は短く、すぐにフィニッシュの平行線が引かれた。
「チクチクするんですが? …あれ?」
頭の芯──〈スパイク〉がチクチクしたと思ったら、それもすぐに止んだ。
「翻訳魔法のアップデート完了じゃ。試しに、なんぞ書いてみよ」
のじゃ子さんが、ラウンジに置かれたキャスター付きの黒板を指差した。
そうなのだ。オレはこっちの言語を話し、読むことができるけど、書くのは苦手だった。
かなり集中力が必要で、集中が切れるとこっちの言葉で書いたはずが日本語で書いてしまうのだ。
これはキツいとボヤいたことで、さっきのドタバタ騒ぎになったのである。
「それじゃ……」
オレはチョークを取り、
「酒、場、の、主、人、殺、人、事、件」
と、日本語で縦書きに書いた。
「どう? 読める」
「酒場の主殺人事件ね」
なぜかクロエさんが、首を横に傾けながら答えた。
「マジで? オレ日本語で書いたし、日本語にしか見えないんだけど!」
黒板に書いた文字でも、みんなにはこっちの文字に見えているんだ。
「ちと読み難いがの」
「横に書いていただけたらと思いますが」
のじゃ子さんとサミちゃんも首を横にして言う。
あ、こっちの文字は横書きだっけ。だからみんな首を横にしているのか。
──魔法は万能じゃない。
あらためてそれを知ったオレだった。
2
「それでは、酒場の主殺人事件の捜査会議をはじめます」
あらためて「酒場の主人殺人事件」を横書きで書いて、オレは宣言した。
オレ、ソータこと南城乃 惣太は刑事ドラマが好きな、平凡な日本の大学生だった。
それが魔法が科学の代わりをしているファンタジーな異世界にとばされてしまった。
で、色々あって魔法で犯罪捜査をする研究所の主任研究員になった。
オレの科学捜査の知識を、魔法で再現して犯罪捜査をしようというものだ。科捜研ならぬ魔捜研である。
といっても、オレの知識ってのは刑事ドラマで覚えたものなんだよな。
今回は殺人事件。本物のコロシだ。
刑事ドラマで覚えた程度の知識で解決できるのか…不安である。
「現場はダンカン通りにある個人経営の酒場。被害者は主人のヨナ。44歳」
キャスター付きの黒板に、「被害者 酒場主ヨナ(44)」と横書きで書く。
「発見者は妻のサナ。朝、店の準備をしにやって来たところで発見した…とのことじゃ」
衛士──オレたちの世界でいう警官にあたる人たちの報告書を、のじゃ子さんが読み上げた。
見た目は小学生みたいだし、普段の言動もコドモそのものなんだけど、実年齢は500歳以上だという。魔捜研の所長で大賢者の称号を持つ、とってもエラい魔法使いである。
「次は、現場の足跡について。サミちゃん」
「はいっ」
青い髪と瞳の可憐で癒やし系の少女が、元気よく返事して立ち上がった。
サミちゃんは錬金術師で、犯罪捜査に役立つ薬品や機材の開発、使用を担当。
今回は足跡の撮影と分析を担当してくれている。
「お店の入り口から遺体のあった場所にかけては足跡はほとんどありませんでした。殺されたご主人が掃除したのでしょう。遺体から奥にかけてはたくさん足跡がありました」
そう言うと、サミちゃんはテーブルの上にあった水晶の多面体に手をかざした。
空中にたくさんの下足痕──足跡の映像が投影された。この水晶塊はオレたちの世界のプロジェクターみたいなものだ。
「判別できた下足痕は4つ」
サミちゃんがかざした手を軽く動かすと、たくさんあった足跡で鮮明なものだけが残り、他は消えた。残った下足痕は1から4までナンバリングがされていた。
「1番はご主人のもの。他は不明ですが、こちらは──」
サミちゃんが手を軽くふると、下足痕4番の画像が拡大された。
「この4番は、女性用の靴っぽいので、たぶん、奥さんのものだと思います」
「そっちは後で奥さんの靴と照合させてもらおう」
オレがそう言うと、サミちゃんが頷いてプロジェクターを切った。
「クロエさん、遺体について詳しい報告を」
「はいよ」
軽いノリで答えたのは、銀髪と赤い目、灰色の肌をした美人──クロエさんだ。グラマーな上、露出度の高い服を着ているから目のやり場に困る。
「死亡時刻は23時、閉店してすぐね。死因は頭部を鈍器のようなもので一撃されたこと」
クロエさんは死霊術師。
死の専門家である彼女は、死亡時刻、死因などを分析する監察医のポジションだ。
「凶器は不明。傷口からすると、カドがあるけど尖ってはいないもの…みたいな?」
「カドがあるけど尖ってはいないもの? たとえば…レンガとか?」
「そんな感じ」
「でも、お店の中にも外にも、レンガはありませんでしたよ?」
クロエさんとオレのやりとりに、サミちゃんが首を傾げた。
凶器が不明…ドラマでは定番の展開だよな。ドラマではどうやってたっけ……
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「で、どうするのじゃ?」
のじゃ子さんが尋ねた。
捜査方針を決めろ、ということだな。
「そうですね…まずは凶器の特定。特定できればそこから犯人が見つけられるはずです」
ドラマではだいたいそうだったよな。
「凶器を見つけたとして、どうやってそれが犯行に使われたものだと判定するの? 犯人が血を拭き取ったりしてるかもしれないし」
と、今度はクロエさん。
「拭き取ってもブラックライトかルミノールがあれば……」
と言いかけて気づいた。
「こっちの世界にブラックライトってあります?」
この世界は魔法が科学の代わりをしている。下足痕を空中に投影した水晶のプロジェクターのように21世紀の日本より進んでいる技術もある。
もしかしたらブラックライトも……。
「なんじゃそれは?」
のじゃ子さんたちが顔を合わせた。
残念、なかったか。
「ええっと…紫外線だったかな? 紫の光を出すんだけど……」
「紫の光? こうかの」
のじゃ子さんが空中にルーン文字を描くと、指先から紫色のビームを放った。
「おおっ!?」
まるでレーザーポインターみたいだ。さすが大賢者のじゃ子さん!
「それでカップを照らしてみて! ここ!」
オレは自分が口をつけたティーカップの指差した。ブラックライトと同じ光なら、唇をつけた跡が浮かび上が──
「何も出ないわね」
──らなかった。
「ダメか…!」
のぞき込んだクロエさんがつぶやき、オレはガッカリした。
ただ紫の光で照らしてもブラックライトの代わりにならないんだな。
「じゃあルミノール液だ。オレのいた世界では、ルミノール液っていう血液と反応して光る薬があるんだけど、サミちゃん、そういうの作れないかな?」
錬金術師のサミちゃんはシミ抜きや指紋検出の薬を作ったことがある。ルミノール液ならいけるかも?
「それはどういう原理なんですか?」
「原理?」
「はい、何と何が反応して光るのかがわかれば、作れるかもしれません」
「えっと……」
ドラマで語られていたような気がするんだけど。CSIシリーズのどれかで…いやクリミナルマインドだっけ? ……思い出せない。
「原理はわからないのね」
「……すみません」
クロエさんに指摘され、オレはうなだれた。
「そんな顔するな。大賢者たるわしも、あらゆる知識に精通しているわけではないのじゃ」
「私、発光関係の錬金術を調べてみます」
「そんじゃアタシは血液関係の資料にあたってみるわ」
のじゃ子さんに続いてサミちゃんもクロエさんが言う。
「ありがとう」
「わたしたちはチームですよ。ソータさん」
微笑んでサミちゃんが言う。
ああ、この笑顔に救われる。やる気出て来た!
「うん、それじゃサミちゃんとクロエさんは、ルミノール液の開発を。オレとのじゃ子さんで被害者の怨恨関係を調べるよ」
オレが方針を告げると、「はいっ」「あいよ」「うむ」とみんなが大きくうなずいた。
うん! みんなとなら出来る気がしてきたぞ! がんばろう!
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