まじらぼ  冤罪を魔法で科学捜査して晴らす研究所

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File03 死体が歩いて脅迫状を持って来た件

#02 歩く死人団

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     1


「よっ」
「あれ? ペイジ」

 オレがラボのみんなとニューロックの屋敷に行くと、赤毛の護民兵ペイジが来ていた。

「ここ、ペイジの担当地区じゃなかったよね?」

 ここニューロックの屋敷があるのは〈都〉の南側にあるお屋敷街だ。ペイジの担当するダンカン地区とはかなり離れている。
 衛士はともかく、護民兵は受け持ち外で活動はしないと聞いていたけど。

「ニューロックはお上の御用商人。その上、誘拐犯が『歩く死人団』ときたからな。騎士団が総力を挙げての捜査ってなわけで、アタイらもかり出されたンだ」

 歩く死人団? ウォーキングデッドいやウォーキングコープスか。

「やっぱりヤツらか」

 クロエさんが忌々しげにつぶやいた。

「知ってるの?」
「死体を使って悪さする犯罪集団よ」
「近頃、ヤツらがやるのは誘拐が多い。ゾンビが脅迫状を持って来ンだから脅しの効果は抜群だ」

 クロエさんに続いてペイジが言う。

 脅迫状を届けるのも、身代金を受け取るのもゾンビでは捕まえて拷問しても意味が無い。まさに死人に口なしだ。

「あいつらが何かやる度、〈都〉中のネクロマンサーが取り調べを受けるから、すっごい迷惑なのよね」

 クロエさんがため息ついた直後、

「凶悪犯を捕まえるため、当然の措置だ!」

 太くでデカイ声がした。

 ゴツイ身体をゴっツイ甲冑で固めた大男──ゴーワン騎士団長だ。

「騎士団長が陣頭指揮を?」

 と、言ってから思い出した。
 この騎士団長は、普段から市内を見廻り、自ら不審者を捕まえる脳筋団長だった。

 騎士団長というのは現代日本でいうと警視総監、江戸時代なら町奉行クラスだ。大人しくデスクワークしてろと思うのは、オレもコイツに捕まえられたからだ。もちろん冤罪で。

「死人団を何度も取り逃がしているから。メンツにかけて捕らえようとしているンだよ」

 ペイジがオレに耳打ちした。

「そこのお前! ネクロマンサーだな。誰かこいつの調書をとっておけ!」

 ゴーワン団長がクロエさんを指差して言う。

「この人は魔捜研の研究員ですよ」

 思わず、オレは抗議したが、

「そんなことは関係ない! 死人団にはネクロマンサーがいることは明白。ネクロマンサーはすべて容疑者なのだ!」

 と、聞く耳持たない。

「そうだ! ネクロマンサーはすべて容疑者だ」

 と、護民兵が進み出た。

 シーマンだった。こいつクビになってなかったのか。


     2


「昨日、夕方から深夜まで、どこで何をしていた?」

 騎士団長の権威を笠に着て、威張りくさってシーマンが言う。

「ソータと一緒だったわ」
「誰だソータっての?」
「この子よ」

 いきなりクロエさんが腕をからめてきた。

 ちょっ胸! クロエさんの豊かなお胸が、オレの腕に当たっているんですけど!

「楽しい夜だったわね。ソータ」

 と、明らかに誤解を招く言い方をするクロエさん。

「そうなのか?」

 で、食いついたのはペイジ。

「て、てめぇ、この女と何してやがった?」

 そしてシーマンも誤解している。
 クロエさんの身体をジロジロ見て、「このガキうらやまっ!」と思っているのがミエミエだ。

「ラボで食事と会議と雑談していただけ! あとサミちゃんもいたでしょうがっ」

 ちょっと惜しかったけど、クロエさんの腕を振り払ってオレは叫んだ。

「はい、一緒にいました」

 くすくす笑ってサミちゃんが証言(?)してくれた。

「なんだ」
「身内の証言は信用できねぇ」

 ほっとした顔のペイジと、しつこく追求しようとするシーマン。

「なら詰め所に連行する?」

 でもクロエさんは余裕だった。

「でもアタシ一人にかまけていいのかなぁ? ペイジに先越されちゃうかもよ?」
「ぐぎぎぎ…!」

 ずいっとクロエさんが前に出ると、シーマンは歯ぎしりして後退した。
 手玉に取っているというのはこういうことなんだろう。

「団長さま」

 判断を仰ぐ…というより助けを求めるようにシーマンが振り向いた。しかしゴーワン団長は騎士の一人から報告を聞きながら、屋敷へと入ってゆくところだった。

「お、覚えてやがれ!」

 定番の捨て台詞を残して、シーマンは立ち去った。

「やれやれ、これでやっと本題に入れるのじゃ」

 のじゃ子さんが苦笑するとオレを見た。
 ああ、そうだった。ペイジがいるなら話は早い。

「現在、騎士団がつかんでいる情報を知りたい」
「あいよ。まずは事件が起きたのは昨夜。夕食時を過ぎた頃合いだな」

 ペイジは小さな大福帳みたいな手帳を取り出し、話しはじめた。

「お城での商談の帰り、城から少し離れた通りで、ブライズ氏を乗せた馬車が死体の群れに襲われた。御者が言うにはゾンビの数は10体はいたそうだ。あまりの恐ろしさに御者は気を失った」

 夜道でゾンビの群れが襲撃…オレだって失神するかもしれないな。

「ほんとに10体以上いたの?」

 クロエさんが確認した。

「御者は相当脅えていたからな。現場の足跡からすると、5、6体ってとこじゃねぇかな」
「なるほどね」
「数が気になるんですか?」
「人の死体をゾンビにするのって、結構、手間がかかるのよ。ただ歩かせる程度ならすぐだけど、対象を殺さずさらうみたいな複雑な命令を実行できるゾンビを作ろうとしたら、1日、2日じゃできないんだから」

 ゾンビには簡易型と高級仕様があるってことか。で、ブライズ氏を襲ったのは高級なゾンビだと。

「御者が目を覚ましたのは、夜が明けて何時間も経ってから。馬車を飛ばして屋敷に戻ってきたら、ブライズ氏が誘拐されたってんで大騒ぎ…って有様だったそうだ」
「スジは通っているようだが、ちと気になるのう」

 のじゃ子さんが言う。

「騎士団も御者をあやしいとみてます。死人団に通じているんじゃないかって」

 ペイジが言う。
 こいつものじゃ子さんには敬語使うんだな。オレにはタメ口なのに。

 それはさておき、御者が夜が明けて何時間も過ぎるまで気絶していた、というのはあやしいかもしれない。
 ドラマとかだと、運転手が誘拐犯とグルってことがあるんだよな。

「身代金の受け渡しについては?」
「それはまだだ。これまでの例からすると、何日かあと、またゾンビのメッセンジャーが受け渡し方法を届けに来るはずだ」
「どうしてゾンビに届けさせるんでしょう?」

 サミちゃんが手を上げて聞いた。

「それがアシが付かない方法だからだな。メールバードは差出人がいつ、どこから出したかがわかるからな」

 手紙が鳥型に変身して宛先に飛んでゆくのがメールバードだ。あれにそんな追跡機能があったのか。

「何より、カネを払わないとこうなるぞ、という脅しにもなる。何年か前、カネを用意するのに手間取った家があった。そしたら誘拐された家族がゾンビにされて戻って来たンだよ」
「うげ……」

 ゾっとする話しだ。
 家族がゾンビにされたこともそうだけど、それを実行する犯人の非道さがおそろしい。

「一刻も早く、犯人を見つけないとな」

 オレの言葉に、みんながうなずいた。

「馬車と脅迫状、それと脅迫状を持って来たゾンビを調べたい。死人団のアジトを見つけるヒントがあるかもしれない」


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