まじらぼ  冤罪を魔法で科学捜査して晴らす研究所

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File03 死体が歩いて脅迫状を持って来た件

#エピローグ

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 歩く死人団は全員逮捕され、誘拐されていたニューロックの二代目ブライズは無事、救出された。

「ブライズさん、無事にお家に帰れて良かったですね」

 サミちゃんが言う。

 魔捜研のラウンジ、そのテーブルにはお昼だというのにご馳走が並べられている。
 事件解決と人質の無事解放、そのお祝いだと、サミちゃんが用意したのだ。

 メインはハーブたっぷりのソーセージ。でも存在感があるのはテーブル中央に置かれたコンロと鍋だ。

 小さなコンロの中の炎はトカゲみたいな形をしていて、鍋の中にはチーズがふつふつと煮え、ガーリックの香りがただよう。
 これチーズフォンデュか。こっちの世界にもあるんだな。鍋のそばには一口サイズに切ったバゲットふうのパンや根菜、芋がある。

 それとオリーブオイルとハーブのドレッシングをかけた季節の野菜サラダ。あとベリーのジャムがあるけど、これはパンにぬってデザートかな。

「事件解決、めでたいのう」

 のじゃ子さんの音頭で乾杯する。
 彼女とクロエさんはワイン。オレたちはノンアルコールのエールだ。

「めでたいって言えばよ、エアリー夫人だ」

 そして当然のようにいるペイジ。
 すっかり魔捜研の一員だな。

「具合が悪そうってんで医者に診せたら、おめでただったンだ」

 おめでた…ああ、妊娠か。

「夫人付きの侍女とかに話を聞くと、夫婦仲はとても良いらしくてな。旦那も大喜びしてたそうだ」

 今頃そんな情報出て来るのかよ。
 でも、夫人が死人団の内通者じゃなくて、オレはほっとした。

「一番あやしいのは夫人だ、なんて。騎士団ってほんと的外れだな」
「まったくだぜ」

 皮肉も聞こえてないようで、ペイジはソーセージをかじっている。

「内通者は支配人のパレルだったそうじゃの」

 のじゃ子さんが言う。

「昔、賭博にのめり込んで、ヤバいスジに借金したことがあったんだと」

 ペイジがチーズフォンデュをふーふーしながら言う。

「借金はニューロックの先代が肩代わりして解決したが、その時にパレルは裏社会と接点が出来たらしいぜ」
「死人団のウエストとそこでつながったのか」

 オレもチーズフォンデュを、まずはカブを試してみる。

「ウエストは元々ガラン一家お抱えのネクロマンサーだったんだ」
「ガラン一家?」
「表向きは運輸業だが、ウラじゃ密輸、恐喝、コロシとなんでもアリの犯罪ファミリーだ。ウエストは死体の始末とか死因の誤魔化しとかをやっていた」

 ソーセージをもぐもぐしながらペイジが言う。

「それが5年くらい前から急に大人しくなったんだ。幹部が何人か死んだり、逮捕されたりして、カタギの仕事だけやるようになった。ボスが代わったんだろうって噂された。だが違った」

 今度はパンをフォンデュに付けて食べるペイジ。

「ガラン一家が大人しくなったのと同じ頃、歩く死人団がその活動をはじめた。ウエストがガラン一家を乗っ取ってたんだ」
「表向きはカタギになって、ウラでは慎重に悪事を働いていた、というわけね」

 クロエさんが言う。

「最新の魔法技術による葬儀屋っていうのは、ウエストがネクロマンサーであることを隠すためか」
「騎士団は、ゾンビ使い=ネクロマンサーという頭じゃからな。いや、わしらもはじめは騙されかけたのう」

 ワインを一口してのじゃ子さんが言う。

「ソータさんがいなければ、逮捕できなかったですね」
「いや、そんな」

 サミちゃんに微笑んで言われ、照れてしまう。

「でも、これでまたネクロマンサーの評判が悪くなるわね」

 ワインをあおり、クロエさんがつぶやいた。

 そうだった。
 ウエストがネクロマンサーだったことで、人々はますますネクロマンサーを嫌うようになるのかもしれない。

 ウエストが悪事に手を染めた背景には、何百年も続く、ネクロマンサーへの偏見や差別、迫害があるんじゃないかとも思う。

 ヤツはクロエさん──ネクロマンサーを忌み嫌い、侮蔑していた。
 それは、ウエストがネクロマンサーであることを隠すためだろう。でもその裏には、自分の境遇──ネクロマンサーに生まれついたことを呪っていた、そんな思いがあったんじゃないだろうか。

「クロエさん……」
「あ、サミちゃん、ワインのおかわり」

 悲しそうなサミちゃんに、クロエさんはグラスを差し出した。

「だいじょうぶよ」

 サミちゃんにワインをつがれながらクロエさんは笑った。

「死は誰にでも訪れる。どれだけ嫌っていようが、身内が死ねばネクロマンサーに弔いを頼むしかない。その時、どれだけボッタクってやろうかと考えるのが快感なんだから」
「クロエのそういうとこ好きだぜ」
「でしょう?」

 ペイジとクロエさんが笑ってグラスをかちんっと合わせた。

 クロエさんはしたたかだ。そしてへそ曲がりだ。
 それを知っているオレは、今、彼女が言ったことが、強がりのように思えた。

 そこに、

「こんにちわ」

 と、訪問者がやって来た。

 ラマンドとウィロウさんだった。

「二人してどうしたの?」
「この子を案内してきたのよ」

 ウィロウさんの後ろから、小さな女の子が顔を出した。5歳か6歳くらいだ。

「ネクロマンサーのクロエさん」

 ちょっと舌足らずな話し方で女の子が言った。

「あら、あなたは」
「クロエさんの知り合い?」
「お礼を言いたくて、探してました」

 とてとてと女の子はクロエさんのそばに来ると、

「おばあちゃんに会わせてくれてありがとう!」

 と、小さな花束を差し出した。野原で咲いていた花を摘んできたものっぽい。

「そう、ありがと」

 そっけなくクロエさんはお花を受け取った。
 それでも女の子は、受け取ってもらえたことがうれしかったみたいだ。

 ラマンド、ウィロウ夫婦に手を引かれ、帰って行く間、何度も振り返ってクロエさんに手を振っていた。

「あの子は?」
「アタシが牢にぶち込まれる原因になった子」

 サミちゃんの問いにクロエさんが肩をすくめて答えた。

 クロエさんは以前、許可無く霊を呼び出したため投獄されたことがある。
 それは、「死んだおばあちゃんにもう一度会いたい」という子どもの願いを叶えるためだった。今の子が、その子だったのか。

「クロエさんが牢に入れられて、出てすぐ魔捜研に加わったから、あの子は会ってお礼を言うことができなかったんだね」
「わざわざ探してお花を届けるなんて、とても嬉しかったんですね」

 オレとサミちゃんが言う。

「お礼なら、金貨とか持ってこいっての」

 ふん、とクロエさんはオレたちに背を向けた。

 そう言いながらも、クロエさんはもらった花束をとても愛おしそうに見ている。

 まったく、ほんとうにクロエさんはへそ曲がりだ。



(File03  おわり)

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感想 1

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みんなの感想(1件)

モナーク
2025.05.01 モナーク

エピソード2のプロローグ、海外ドラマのアバンタイトルみたいで好きです

2025.05.01 GIN

ありがとうございます。

>海外ドラマのアバンタイトルみたい
これを目指して書いたので、うれしいです

解除

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