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第二章 南へ
27.気になっている場所
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「それにしても、よくこんなところ知っていたね。誰かに聞いたの?」
一瞬、他の誰かと来たのだろうかという考えも頭をよぎったが、そんなはずはない。アデルジェスの初めての相手はミゼアスだし、とても奥手だったという話もアデルジェスの元同僚たちやロシュから聞いている。
「うん、ちょっとね。ある人から教えてもらったんだよ。二人でゆっくり過ごせる場所だからってね」
「ふうん……」
ミゼアスはわずかに首を傾げたが、詳しく追及するようなことではないかと、それ以上を口にするのはやめた。
アデルジェスがミゼアスのためを思って連れてきてくれ、実際に楽しかったのだ。それで十分だろう。
「ところで、ミゼアスはこれからどこか行きたい場所はある? このままふらふらと旅をしてもいいけれど、どこか見てみてみたい場所があったら教えて」
「うん……気になっている場所はあるんだけれど……」
歯切れ悪く、ミゼアスは口を開く。
「え? どこ?」
「僕たちが生まれた村。もう、みんな散り散りになってしまったっていうし、どうなっているかわからないけれど……」
目を伏せながらミゼアスが答えると、アデルジェスは首を傾げた。
「村が気になるんだったら、行ってみようか?」
「うん……でも、まだ行く勇気がない……。怖いんだ」
「怖い?」
「僕はあの村で育って、そして娼館に売られて……いつも帰りたいって思っていたよ。でも帰る場所がなくなって、きみの行方もわからなくなったときの絶望……まだいろいろな思いを消化しきれていないんだ」
早く借金を返して村に戻り、愛しいアデルジェスの元へと帰るのだ。その思いを支えにミゼアスはずっと娼館で耐えてきた。しかしいざ借金を返し終わったとき、村はなくなってしまい、アデルジェスの行方もわからなくなってしまった。
あのときの絶望は、忘れることができない。
ミゼアスのことを娼館に売った親に対しても、複雑な思いを払拭できていない。
金持ちの家で下働きをするのだと嘘をつかれ、アデルジェスに一言挨拶してからというミゼアスの願いも退けられたのだ。
村が困窮して仕方がなかったのだと自らに言い聞かせたが、親に捨てられたのだという事実は未だにミゼアスの胸を突き刺す。
あの村を思い返すとき、必ず、胸の奥に穿たれた傷も生々しく抉られるのだ。
軽く首を揺らして思いを振り払い、ミゼアスはアデルジェスの胸に顔をすりよせる。
「だけど、今はきみが側にいてくれる。とうとうきみに会えた。今はまだだけれど、きっとそのうちあの村に行くことができるようになると思う。だから、そのときに……できれば、一緒に行ってほしい」
とうとう今は、愛しいアデルジェスの腕の中なのだ。あきらめていた夢が現実となり、奇跡に感謝せずにはいられない。この温もりに包まれていれば、今はまだ開いたままの傷口も、きっと癒されていくはずだ。
アデルジェスの優しく、逞しい腕がミゼアスを抱きしめる。
「もちろん、ミゼアスが行きたくなったら一緒に行くよ。行きたいと思えなければ、ずっと行かなくてもいい。俺はいつでもミゼアスの側にいるから」
「ありがとう……僕、ジェスの『およめさん』にしてもらえて、本当に幸せ……」
アデルジェスの温もりに泣きたくなるほどの安堵を覚え、ミゼアスは幸せを噛み締める。
一瞬、他の誰かと来たのだろうかという考えも頭をよぎったが、そんなはずはない。アデルジェスの初めての相手はミゼアスだし、とても奥手だったという話もアデルジェスの元同僚たちやロシュから聞いている。
「うん、ちょっとね。ある人から教えてもらったんだよ。二人でゆっくり過ごせる場所だからってね」
「ふうん……」
ミゼアスはわずかに首を傾げたが、詳しく追及するようなことではないかと、それ以上を口にするのはやめた。
アデルジェスがミゼアスのためを思って連れてきてくれ、実際に楽しかったのだ。それで十分だろう。
「ところで、ミゼアスはこれからどこか行きたい場所はある? このままふらふらと旅をしてもいいけれど、どこか見てみてみたい場所があったら教えて」
「うん……気になっている場所はあるんだけれど……」
歯切れ悪く、ミゼアスは口を開く。
「え? どこ?」
「僕たちが生まれた村。もう、みんな散り散りになってしまったっていうし、どうなっているかわからないけれど……」
目を伏せながらミゼアスが答えると、アデルジェスは首を傾げた。
「村が気になるんだったら、行ってみようか?」
「うん……でも、まだ行く勇気がない……。怖いんだ」
「怖い?」
「僕はあの村で育って、そして娼館に売られて……いつも帰りたいって思っていたよ。でも帰る場所がなくなって、きみの行方もわからなくなったときの絶望……まだいろいろな思いを消化しきれていないんだ」
早く借金を返して村に戻り、愛しいアデルジェスの元へと帰るのだ。その思いを支えにミゼアスはずっと娼館で耐えてきた。しかしいざ借金を返し終わったとき、村はなくなってしまい、アデルジェスの行方もわからなくなってしまった。
あのときの絶望は、忘れることができない。
ミゼアスのことを娼館に売った親に対しても、複雑な思いを払拭できていない。
金持ちの家で下働きをするのだと嘘をつかれ、アデルジェスに一言挨拶してからというミゼアスの願いも退けられたのだ。
村が困窮して仕方がなかったのだと自らに言い聞かせたが、親に捨てられたのだという事実は未だにミゼアスの胸を突き刺す。
あの村を思い返すとき、必ず、胸の奥に穿たれた傷も生々しく抉られるのだ。
軽く首を揺らして思いを振り払い、ミゼアスはアデルジェスの胸に顔をすりよせる。
「だけど、今はきみが側にいてくれる。とうとうきみに会えた。今はまだだけれど、きっとそのうちあの村に行くことができるようになると思う。だから、そのときに……できれば、一緒に行ってほしい」
とうとう今は、愛しいアデルジェスの腕の中なのだ。あきらめていた夢が現実となり、奇跡に感謝せずにはいられない。この温もりに包まれていれば、今はまだ開いたままの傷口も、きっと癒されていくはずだ。
アデルジェスの優しく、逞しい腕がミゼアスを抱きしめる。
「もちろん、ミゼアスが行きたくなったら一緒に行くよ。行きたいと思えなければ、ずっと行かなくてもいい。俺はいつでもミゼアスの側にいるから」
「ありがとう……僕、ジェスの『およめさん』にしてもらえて、本当に幸せ……」
アデルジェスの温もりに泣きたくなるほどの安堵を覚え、ミゼアスは幸せを噛み締める。
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