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第二章 南へ
65.捨てないで
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「……ミゼアス、何かあったの? もし重荷を抱えているんだったら、俺にも背負わせて。ミゼアスは俺の『およめさん』でしょ?」
寝台の上で優しくミゼアスの髪を撫でながら、アデルジェスが口を開く。
「ジェス……」
ミゼアスは浮かび上がってきた涙を隠すように目を伏せた。アデルジェスはどこまでミゼアスを甘やかせば気が済むのだろう。
「今日のミゼアス、様子がおかしかったよ。どうしたの? 俺に何かできることはない?」
「……ありがとう……あのね、実は……」
喜びに声が震えるのを感じる。ミゼアスはゆっくりと、夢の出来事を話し始めた。
「……それで、僕が過去に何をやっていたのか考えたら、『およめさん』になる資格なんてあるんだろうかって……夢の中から責められているような気もして……」
ミゼアスが話し終えるまで、アデルジェスは何も言わず、ただ相槌を打ちながら話を聞いていた。
いざアデルジェスに向かって話してしまうと、何故これほど思い悩むのだろうと不思議な気分でもあった。
「……その夢に出てきた俺を、ぶん殴ってやりたいよ」
眉をひそめ、ぼそっとアデルジェスは呟く。
「ミゼアスは俺のものなんだから、絶対に渡さない。貸すなんて、冗談じゃない」
ぎゅっとミゼアスを抱き締めるアデルジェス。
「昔、小さなフェイちゃんだった頃も好きだよ。でも、今のミゼアスが一番魅力的だと思う。そんなミゼアスが『およめさん』になってくれた幸運、逃すわけないよ。もうミゼアスを離さないから、俺を捨てないで」
優しいアデルジェスの言葉にミゼアスは陶然としていたが、最後でつい噴き出してしまう。
「捨てないで……って、どうしてそんな言葉が」
「だってさ、あの島で俺を拾ったのはミゼアスだよ。いつ捨てられるのか、びくびくしていたなあ。きちんと責任を取ってもらわないと」
「そういえば、お互いに捨てられるかもって思っていたんだっけ」
懐かしく思い出しながら、ミゼアスはくすくすと笑いを漏らす。
「俺にしてみれば、ミゼアスのような素晴らしい人がどうして……って不安だったよ。いつ捨てられてもおかしくない、って。俺が捨てるなんて、考えるのもおこがましい」
「えー、僕がジェスを捨てるなんてありえないよ。僕はずっと……ずっとジェスのことを想って生きてきたんだから。僕は昔から、ジェスだけが好き……」
ミゼアスが口づけをねだるように軽く唇を突き出すと、望みのものが与えられた。軽く唇を重ねるだけの口づけを交わす。
「お互い、何か不安があったらきちんと話そう。それが二人の間に関係することなら、なおさらだよ」
「うん、そうだね……」
アデルジェスの腕に包まれ、ミゼアスはあんな夢に翻弄されてしまった自分を恥ずかしく思う。これほどミゼアスのことを想ってくれているアデルジェスに対して、失礼だ。
過去も今も、全てを受け入れてくれるアデルジェス。『およめさん』になれた自分は何て幸せなのだろうと、ミゼアスはうっとりとアデルジェスの胸に顔をすり寄せる。
「……ところで、二人の間に関する不安があるんだけれど」
「え? 何?」
びくっとミゼアスは顔を上げる。もしかして何かしてしまったのだろうか。恐怖にも似た不安が走る。
「ミゼアスが可愛いこと言うから、こんなになっちゃった」
「……あ」
アデルジェスがミゼアスの手を取って、そっと引き寄せる。導かれた先には、すっかり元気になってしまったアデルジェス自身があった。
「責任、取ってくれる?」
「もう……わかったよ」
拗ねた素振りをしながら、ミゼアスは頷く。
先ほどしたばかりだというのに、アデルジェスは元気だ。呆れと感嘆を覚えるが、それだけミゼアスのことを求めてくれているということだろう。
まだ夜は長い。責任を取って、たっぷり搾り取ることにしよう。指を絡めながら、ミゼアスはにっこりと笑った。
寝台の上で優しくミゼアスの髪を撫でながら、アデルジェスが口を開く。
「ジェス……」
ミゼアスは浮かび上がってきた涙を隠すように目を伏せた。アデルジェスはどこまでミゼアスを甘やかせば気が済むのだろう。
「今日のミゼアス、様子がおかしかったよ。どうしたの? 俺に何かできることはない?」
「……ありがとう……あのね、実は……」
喜びに声が震えるのを感じる。ミゼアスはゆっくりと、夢の出来事を話し始めた。
「……それで、僕が過去に何をやっていたのか考えたら、『およめさん』になる資格なんてあるんだろうかって……夢の中から責められているような気もして……」
ミゼアスが話し終えるまで、アデルジェスは何も言わず、ただ相槌を打ちながら話を聞いていた。
いざアデルジェスに向かって話してしまうと、何故これほど思い悩むのだろうと不思議な気分でもあった。
「……その夢に出てきた俺を、ぶん殴ってやりたいよ」
眉をひそめ、ぼそっとアデルジェスは呟く。
「ミゼアスは俺のものなんだから、絶対に渡さない。貸すなんて、冗談じゃない」
ぎゅっとミゼアスを抱き締めるアデルジェス。
「昔、小さなフェイちゃんだった頃も好きだよ。でも、今のミゼアスが一番魅力的だと思う。そんなミゼアスが『およめさん』になってくれた幸運、逃すわけないよ。もうミゼアスを離さないから、俺を捨てないで」
優しいアデルジェスの言葉にミゼアスは陶然としていたが、最後でつい噴き出してしまう。
「捨てないで……って、どうしてそんな言葉が」
「だってさ、あの島で俺を拾ったのはミゼアスだよ。いつ捨てられるのか、びくびくしていたなあ。きちんと責任を取ってもらわないと」
「そういえば、お互いに捨てられるかもって思っていたんだっけ」
懐かしく思い出しながら、ミゼアスはくすくすと笑いを漏らす。
「俺にしてみれば、ミゼアスのような素晴らしい人がどうして……って不安だったよ。いつ捨てられてもおかしくない、って。俺が捨てるなんて、考えるのもおこがましい」
「えー、僕がジェスを捨てるなんてありえないよ。僕はずっと……ずっとジェスのことを想って生きてきたんだから。僕は昔から、ジェスだけが好き……」
ミゼアスが口づけをねだるように軽く唇を突き出すと、望みのものが与えられた。軽く唇を重ねるだけの口づけを交わす。
「お互い、何か不安があったらきちんと話そう。それが二人の間に関係することなら、なおさらだよ」
「うん、そうだね……」
アデルジェスの腕に包まれ、ミゼアスはあんな夢に翻弄されてしまった自分を恥ずかしく思う。これほどミゼアスのことを想ってくれているアデルジェスに対して、失礼だ。
過去も今も、全てを受け入れてくれるアデルジェス。『およめさん』になれた自分は何て幸せなのだろうと、ミゼアスはうっとりとアデルジェスの胸に顔をすり寄せる。
「……ところで、二人の間に関する不安があるんだけれど」
「え? 何?」
びくっとミゼアスは顔を上げる。もしかして何かしてしまったのだろうか。恐怖にも似た不安が走る。
「ミゼアスが可愛いこと言うから、こんなになっちゃった」
「……あ」
アデルジェスがミゼアスの手を取って、そっと引き寄せる。導かれた先には、すっかり元気になってしまったアデルジェス自身があった。
「責任、取ってくれる?」
「もう……わかったよ」
拗ねた素振りをしながら、ミゼアスは頷く。
先ほどしたばかりだというのに、アデルジェスは元気だ。呆れと感嘆を覚えるが、それだけミゼアスのことを求めてくれているということだろう。
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