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第三章 巡り会い
101.ニセモノ
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「ところで、どうしてそんなに欲しがるの?」
まずは理由を聞いてからだとミゼアスが問いかけると、少年はわずかに迷ったようだったが、口を開き始める。
「……僕は、ある娼館の下働きです。そこで一番人気の兄さんの命令で、夕月花の飴を買ってこいと……。もし、買えなかったら八つ当たりでぶたれます……」
「それでぶたれるって……その兄さんとやらは、そんなに横暴なのかい」
ミゼアスの口から、つい呆れた声が漏れた。
不夜島でも下働きの地位は低かった。しかし、少なくともミゼアスの目の届く範囲では、それほど簡単に折檻するところは見たことがない。
「いつもはここまでじゃあないんですが……最近は機嫌が悪くて……」
「機嫌が悪いって、何か理由でも?」
「それは……『不夜島のミゼアス』と名乗る人がやってきてから、そっちに客を取られてしまって……」
ぼそぼそとした少年の呟きに、ミゼアスは軽く眉を寄せてマリオンを見た。
マリオンも同じようにやや眉根が寄っており、二人で顔を見合わせる。
「……その、『不夜島のミゼアス』っていうのはどんな人?」
自分のニセモノがいることは知っていたが、こうして尋ねるのも妙な気分だ。ミゼアスはため息をつきたい気持ちをこらえる。
「僕たち下働きとはあまり接点がないんですが……金髪で、緑色の目をしていて、やっぱり綺麗です。ただ……僕たちに手を上げるようなことはありませんが、ちょっと怖い感じがします。目の周りを緑色で縁取る化粧をしているから、それできつく見えるだけかもしれませんけれど……」
特徴を聞きながら、さらにミゼアスの眉間の皺が深くなる。
どうやらミゼアスが島で仕事のときにしていたのと同じ化粧のようだ。なかなか、本格的に似せようとしているらしい。
「それで、不夜島では夕月花の飴というものを経常的に食べているというのを、一番人気の兄さんが聞いたらしくて……。自分もどうしても欲しい、と……」
萎縮した様子で少年は俯く。
「ふうん……まあ、いいや。……はい、これが夕月花の飴。あげるよ」
ミゼアスはふところから飴をひとつ取り出し、少年の手に乗せてやる。少年の瞳が、信じられないといったように大きく見開かれた。
「え? こ、これが……? 本当に……?」
「本物だよ。僕はついこの間、夕月花の産地であるローダンデリアに行ってきたんだ。不作だった花もちょうど持ち直してきたところだったから、もうしばらくすれば店にも並ぶようになると思うよ」
「あ……ありがとうございます!」
両手でうやうやしく飴を掲げ持つと、少年は何回もミゼアスに向かって頭を下げる。
必死な様子が、普段から苦労しているのだろうと思わせた。
まずは理由を聞いてからだとミゼアスが問いかけると、少年はわずかに迷ったようだったが、口を開き始める。
「……僕は、ある娼館の下働きです。そこで一番人気の兄さんの命令で、夕月花の飴を買ってこいと……。もし、買えなかったら八つ当たりでぶたれます……」
「それでぶたれるって……その兄さんとやらは、そんなに横暴なのかい」
ミゼアスの口から、つい呆れた声が漏れた。
不夜島でも下働きの地位は低かった。しかし、少なくともミゼアスの目の届く範囲では、それほど簡単に折檻するところは見たことがない。
「いつもはここまでじゃあないんですが……最近は機嫌が悪くて……」
「機嫌が悪いって、何か理由でも?」
「それは……『不夜島のミゼアス』と名乗る人がやってきてから、そっちに客を取られてしまって……」
ぼそぼそとした少年の呟きに、ミゼアスは軽く眉を寄せてマリオンを見た。
マリオンも同じようにやや眉根が寄っており、二人で顔を見合わせる。
「……その、『不夜島のミゼアス』っていうのはどんな人?」
自分のニセモノがいることは知っていたが、こうして尋ねるのも妙な気分だ。ミゼアスはため息をつきたい気持ちをこらえる。
「僕たち下働きとはあまり接点がないんですが……金髪で、緑色の目をしていて、やっぱり綺麗です。ただ……僕たちに手を上げるようなことはありませんが、ちょっと怖い感じがします。目の周りを緑色で縁取る化粧をしているから、それできつく見えるだけかもしれませんけれど……」
特徴を聞きながら、さらにミゼアスの眉間の皺が深くなる。
どうやらミゼアスが島で仕事のときにしていたのと同じ化粧のようだ。なかなか、本格的に似せようとしているらしい。
「それで、不夜島では夕月花の飴というものを経常的に食べているというのを、一番人気の兄さんが聞いたらしくて……。自分もどうしても欲しい、と……」
萎縮した様子で少年は俯く。
「ふうん……まあ、いいや。……はい、これが夕月花の飴。あげるよ」
ミゼアスはふところから飴をひとつ取り出し、少年の手に乗せてやる。少年の瞳が、信じられないといったように大きく見開かれた。
「え? こ、これが……? 本当に……?」
「本物だよ。僕はついこの間、夕月花の産地であるローダンデリアに行ってきたんだ。不作だった花もちょうど持ち直してきたところだったから、もうしばらくすれば店にも並ぶようになると思うよ」
「あ……ありがとうございます!」
両手でうやうやしく飴を掲げ持つと、少年は何回もミゼアスに向かって頭を下げる。
必死な様子が、普段から苦労しているのだろうと思わせた。
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