僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第三章 巡り会い

107.甘やかす

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 穏やかな午後の陽気に包まれ、ミゼアスは久しぶりとなる花月琴を奏でていた。
 しばらく花月琴に触れていないというと、せっかくの腕を腐らせるのはもったいないとマリオンが自らの花月琴を持ってきたのだ。
 マリオンが昔から使っていたもので、島を出るときにも手放せずに持ち出したのだという。

 せっかくなので、客寄せも兼ねて店内で弾いてみることにした。
 大きな観葉植物が目隠しとなった休憩用の一画で、ミゼアスは指を滑らせる。
 しっとりと落ち着いた音色が店内に響き渡る。

「当代一の名手の演奏を背にするなど、贅沢ですね」

 接客を終えたマリオンが、奥に戻ってきた。微笑みながら、満足そうに呟く。

「マリオン兄さん、お疲れさまです」

 手を休め、ミゼアスも微笑んで迎える。

「あなたもずっと演奏していて疲れたでしょう。少し休憩にして、お茶でも用意しますね」

 マリオンは手早くお茶の準備を始め、ややあってほんのりと花の香りが漂うお茶と焼き菓子が用意された。

「ジェスは今頃、頑張ってお仕事しているのかなぁ……」

 お茶の香りを楽しみながら、ミゼアスはぼそりと呟く。

「あなたの旦那様、真面目そうな方ですものね。イーノスも見習って、たまにはしっかり働いてもらわないと」

 優雅にお茶を飲みながら、マリオンはにっこりと答える。
 この余裕と貫禄は、ミゼアスにはまだまだ遠い境地だ。花嫁修業の道は、険しい。

 こうしてゆったりと休憩しながら、二人で話をするのがすっかり日課となっている。
 かつてマリオンが島を去ったときには、このような日がくるなど想像もできなかった。苦い追憶は、穏やかな記憶に塗り替えられようとしているようだ。
 しかも島にいた頃より、マリオンはミゼアスを甘やかしている。当時は先輩の白花として厳しさの中にわずかな優しさを滲ませていたマリオンだったが、今はただただ甘い。
 つい昔を思い出して、ミゼアスはくすりと笑いを漏らした。

「どうしたのですか?」

 軽く首を傾げ、マリオンが不思議そうな顔をする。

「いえ……マリオン兄さん、昔は厳しかったなと思って」

「ああ……それはあの頃、甘やかすわけにはいきませんでしたからね。今はもう白花でも何でもないのですから、あなたを好きに甘やかせます。さあ、お茶のおかわりはいかがですか?」
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