僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第三章 巡り会い

126.明かされていく真実

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「まあ、でも今回のような冬眠状態はそう簡単にはならないとか。多分、『風月花』を初めて弾いたのが衝撃になったのだろうということです」

 付け足すようなヴァレンの言葉を聞き、ミゼアスはふと先日言われた内容がよみがえる。
 人の寿命が見えるという男娼から、ミゼアスは残り一ヶ月の命だと言われたのだ。

「……僕はついこの間、寿命が残り一ヶ月だと言われたんだけれど、それはどうなんだろう」

「術によって抑えられている病気は、発症寸前状態に留まっているらしいので、寿命を見ることができたとしたら、そう見えるんじゃないかと思います。でも、ジェスさんが生きている限り、発症することはないって言っていましたよ」

 ミゼアスがぼそりと問いかけてみれば、ヴァレンはあっさりと答える。
 本来の寿命はやはり一ヶ月程度なのかと思うとぞくりとしたが、発症しないように抑えられているというのなら問題はないのだろう。背筋の冷たさは拭いきれないものの、ミゼアスは大丈夫だと己に言い聞かせる。

「えっとですね、『雪月花』や『風月花』は、弾き手の命を吸い取って花を咲かせるわけじゃないそうです。命の炎が尽きかけている者に反応して、はなむけとして花吹雪を舞わせるそうです。だから、花吹雪を出したから命が尽きるのではなく、命が尽きかけているから花吹雪を出せるのだと」

 さらにヴァレンは、『雪月花』と『風月花』の種明かしをする。
 今まで、花びらを出せる者はいたが、花吹雪にまでできるのはミゼアスだけだった。命を奪うとすらいわれる『雪月花』を弾き続けていたが、それでも何事もなかったのは、そういう理由だったのかと、ミゼアスは今までの疑問が氷解していく。
 しかし、その前提となるミゼアスの命については、理解が追いつかないままだ。

「……正直に言って、驚きが深すぎて飲み込みきれていない。でも……僕はジェスのおかげで生きていられるんだっていうことはわかったよ。何て言っていいのか、よくわからない……」

 次々と明かされていく真実を、ミゼアスはうまく処理しきれていなかった。
 ただ、ミゼアスはアデルジェスなしに生きていけないということだけは、わかる。それがアデルジェスの負担になっているのではないかと思うと、ミゼアスは恐ろしくなってしまう。

「別に気にしなければいいじゃないですか。ちょっと変わった体質だけれど、ジェスさんと一緒にいれば問題はないんですし。……ねえ、ジェスさん? ミゼアス兄さんと一緒にいることに、問題なんてありませんよね?」

 いかにもおおらかで、考え方がゆるいヴァレンらしい物言いだった。
 だが、水を向けられたアデルジェスも、声をかけられたことにこそ戸惑ったようだったが、すぐに頷く。

「え? あ……うん、もちろん。俺がミゼアスの助けになれるのなら、こんな嬉しいことはないよ。何だか俺にはよく理解できない事情だけれど……俺はいつでもミゼアスの力になるから」

 アデルジェスはいつものように、ミゼアスを安心させるような優しい微笑みを浮かべて包み込んでくれる。
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