僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第三章 巡り会い

127.かつてのように

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「うんうん、深い愛情に包まれて、ミゼアス兄さんは幸せ者ですねー。ああ、ジェスさんのようにはいきませんけれど、俺もできることがあれば力になりますからね」

 軽く茶化すようなヴァレンの言葉だったが、穏やかな声と柔らかい微笑みは、ミゼアスへの心遣いにあふれている。

「ジェス……ヴァレン……ありがとう……」

 ミゼアスは感極まってアデルジェスの頬に口づけを送ると、続けてヴァレンを抱きしめた。

「ちょっ……ミゼアス兄さん、ジェスさんを差し置いて……いいんですか?」

 腕の中から、ヴァレンがためらいがちに尋ねてくる。
 物事を気にしないようでいて、意外と周囲に気を使うヴァレンに、思わずミゼアスはくすりと笑いを漏らす。

「ジェスには、後からいくらでも時間をかけて気持ちを表すことができるよ。今は、わざわざ来てくれたきみに……本当に、ありがとう」

 ヴァレンは明日の朝には帰ってしまうのだ。
 今、ほんの少しばかりヴァレンを優先したところで怒るほど、アデルジェスは狭量ではない。
 ちらりとアデルジェスを伺ってみれば、ミゼアスの予想どおり、穏やかに見守ってくれていた。

「……じゃあ、頭を撫でてくださいよ。昔はよく撫でてくれたのに、今ではすっかりつれないんですもん」

 安心したのか、ヴァレンはさらなる要求を突きつけてくる。だが、その内容があまりにも子供のようで、ついミゼアスの口元には苦笑が浮かんでしまう。

「そりゃあ……今のきみは、立派な四花じゃないか。もう子供でもないのに、悪いかなと思ったんだけれど……まあ、きみが望むのなら」

 それでも、ミゼアスはヴァレンの望みを叶えた。
 かつてローダンデリアで見た、夕暮れ時の夕月花のように見事な、紅と黄金が混ざり合ったような髪を撫でる。

 まるで見習いだった子供の頃のように、安心しきった様子で目を閉じるヴァレンを見ながら、ミゼアスは微笑んでそっと息を吐く。
 島を出るときから感じていたが、ヴァレンはさらに大きく成長していた。ミゼアスのために白花のまま島を出てくるという、前代未聞の行動まで仕出かしたのだ。
 それも、領主からミゼアスについての情報を渡されて、である。
 領主によるヴァレンの扱いは、通常の白花に対するものから逸脱している。そこに何らかの思惑があることは、確実だろう。

 先ほどの説明を聞きながら、ミゼアスは成長したヴァレンが遠くなってしまったようで、誇らしさと共に寂しさも胸をかすめていた。
 しかしミゼアスに身を委ねるヴァレンを見ていると、思い出が失われたわけではないのだと安堵を覚える。
 しばし、上役の白花と見習いの子供という関係に戻ったように、ミゼアスはヴァレンの頭を撫で続けた。
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