不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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五花をめざして5

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「それでは、始めます。……さ、アルン。力を抜いて楽にして……僕に任せて」

 ミゼアスは優しくアルンの頬を撫で、顔を近づける。
 恐怖に満たされたアルンですら、美しいとしか思えなくなる顔だった。繊細な人形じみたミゼアスの顔。ミゼアスは知性や技量だけではなく、美貌でも群を抜いているのだ。

 そのまま唇が重ねられる。ゆっくりとミゼアスの舌がアルンの唇をなぞり、思わず開いてしまったアルンの口内に侵入する。
 舌を絡め取られ、吸われる。アルンの身体の奥に火が燻り始めた。
 実はアルンには口づけの経験がそれなりにある。見習い同士での戯れや練習として、遊び半分に重ねてきた。
 しかしそれらなど口づけと呼べるものではなかったと思い知らされていた。たったこれだけで未熟なアルンの身体から熱を呼び覚ますのだ。並大抵の技量ではない。

「ん……ふぅ……」

 思わず鼻にかかった声が漏れる。
 アルンの身体からすっかり力が抜けるまでミゼアスは口内への愛撫を続けた。
 男が身を乗り出すようにして二人を見ている。

「アルン、可愛いよ……もっと気持ち良くしてあげるからね」

 唇を離すと、ミゼアスはアルンの耳元に口を寄せて囁いた。
 甘く、心に絡みつく声。アルンは恐怖心のことなど忘れ、ミゼアスのことしか考えられなくなっていた。
 ミゼアスはアルンの耳に軽く歯をたて、舌を這わせる。

「やっ、ああっ!」
 悲鳴じみた声がアルンの口から漏れた。身体がぞくぞくと震える。不快感、嫌悪感、そしてそれらを飲み込もうとする甘い疼き。
 ミゼアスは舌でアルンの耳をいたぶりながら、手で首筋から胸へとかすめるような愛撫を施していった。

「ん……やっ……あ……」

 アルンの声が甘くとろけていく。自分の声に驚き、アルンは唇をかみ締めて声をこらえようとする。

「アルン、我慢しないで。素直に声を出してごらん」

 そう囁いて、ミゼアスは服の上からアルンの胸の尖りを押しつぶし、捏ねる。

「あっ! あぁっ……やぁ……ん」

 身体で弾けた快感に抗えず、アルンは悲鳴のような嬌声をあげた。

「ほら、声を出したほうが楽だろう? 可愛い声をもっと聞かせてごらん」

 ミゼアスは片手で繰り返し胸の尖りを弄び、もう片方の手を脇腹から太ももへと這わせていく。

「あぁ……ミゼアス兄さん……あっ、それ、やぁ……あぁん……」

 服越しに与えられるもどかしい愛撫。お互いに着衣のままだ。普段と変わらない姿でいやらしいことをしているという背徳感が、よりアルンを高ぶらせる。
 手と口でミゼアスは愛撫を続けるが、肝心な場所には決して触れない。もどかしさに気がおかしくなってしまいそうだった。

 快楽を極めたいという思いに支配され、アルンはこのまま最後までされても構わないと感じていた。
 アルンは後ろに誰かを受け入れた経験はない。そのための訓練もまだしていない。受け入れれば間違いなく痛いだろう。出血するかもしれない。
 しかし、ミゼアスにしてもらえるのだったらそれでも構わないと、ぼやけた頭で考えていた。

「さすが五花のミゼアス。見事な技量だ。その子供、お前に犯されたがっているではないか。叶えてやったらどうだ?」

 目を輝かせて見入っていた男が、口を出してくる。
 するとミゼアスは愛撫の手を止め、男に顔を向けた。

「規則違反ですので、できません」

 淡々とした、何の感情も伺えない声だった。

「む……お前が言わなければいいだけだ。何だったら、花代を二倍にしてやろう」

「できません」

 取り付く島もない答えだった。

「……堅い奴め。それならば、それを使え。道具ならば違反ではないだろう?」

 そう言って、男はミゼアスの前に何かを投げる。
 それは男性器を模した醜悪な道具だった。大きさも巨大といえ、先端部分は握り拳ほどもあるように見えた。
 アルンはそれを見て凍りつき、絶句する。
 快楽で火照った身体の熱さえ一瞬で引くほどの恐怖だった。
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