不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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五花をめざして6

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 あまりに醜悪な道具に怯え、アルンは声も出ない。しかし、ミゼアスは冷淡な視線を男に向けるだけだった。

「お断りします。このような大きさのものは無理です」

 凛とした態度でミゼアスは断る。

「何だと?」

「この大きさでは、僕だって無理です。無理に挿入しようとすれば傷つきます。お断りします」

 ミゼアスのはっきりとした拒絶に、男は唇をわなわなと震わせる。

「……では、花代を二倍……いや、五倍にしてやろう。傷ついたところで、死ぬほどのことではない。治療費だって用意してやる。不慮の事故ということにすればいい」

「お断りします」

 男の懐柔の言葉にもまったく耳を貸そうとしないミゼアス。
 アルンは断り続けるミゼアスをただ眺めることしかできなかった。心には希望がふつふつとわいてくる。

「私を誰だと思っている! 卑しい男娼風情が逆らう気か!」

 男が怒鳴るが、ミゼアスは動じない。

「この島にはこの島の掟があります。あなたが誰であろうが、ここでは客の一人。そして卑しい男娼風情だろうと、僕は五花です。この島において五花は客より上の立場です。館主ですら通常時は五花より下、五花より上はここの領主のみです。僕の意に沿わぬことは許しません」

 アルンをかばうように立ち上がり、ミゼアスは毅然と言い放つ。

「な……な……」

 怒りのあまり声を失う男。
 その姿を見てミゼアスは腕を組み、鼻で笑った。

「金で何でも片がつくと思っているんじゃないよ、下衆が。偉そうにしているけれど、あんた何様? その金だってあんたの稼いだものじゃなくて、親からの借り物だろう? あんた自身には何の価値があるわけ? この島の連中なら、見習いだってあんたより知性も教養も上だよ。勘違いしているんじゃないよ。恥を知りな」

 蔑んだ眼差しを向け、嘲笑うミゼアス。
 あからさまな物言いに男は顔色を失って震え出す。面と向かってこのような侮辱を受けたことはないのだろう。

「こ……この……!」

 男はぶるぶると震わせた拳を掲げたかと思うと、勢いにまかせて振り下ろした。
 ミゼアスは避けようという素振りもなくその拳を受け、横に吹っ飛ばされた。酒瓶を置いてあった台にぶつかり、落下した酒瓶が派手な音をたてて砕け散る。

「ミゼアス兄さん!」

 アルンが叫ぶと同時に、けたたましい鈴の音が鳴り響いた。
 何事かとアルンだけではなく、男も音の出所を探ろうとする。
 すると間をおくことなく扉が開かれ、二人の大男が入ってきた。大男たちは、振り下ろした拳をしまうことなく立ち尽くしている男を拘束する。

「暴力行為により、拘束します。こちらにどうぞ」

 口調こそ丁寧だが、底冷えするような凄みのある声だった。
 男は言葉を失い、顔面蒼白で震えながら連行されていく。
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