きみを待つ

四葉 翠花

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36.追いかけっこの理由

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 寝台から起き上がり、ミゼアスは軽く身支度を整える。
 着替える際に身体を見たが、やはり怪我もなければ痕も残っていなかった。
 縛られて無理な姿勢をしていたせいで、身体の節々はやや痛んだが、それもたいしたことはない。少しすればよくなるだろう。
 結局のところ、昨日の客にもそれなりに丁寧な扱いを受けていたようだ。ミゼアスはくすりと笑いを漏らす。

 居間に移動すると、ヴァレンが果実茶を用意していた。甘みの強い果実茶を飲みながら、ミゼアスはヴァレンから話を聞く。
 昨日のヴァレンとネヴィルの騒動は、ネヴィルがミゼアスの宴席用の料理に何かを混ぜようとしていたためだとヴァレンは語った。
 ネヴィルの持っていた小瓶をヴァレンが奪ったのだが、それをネヴィルが取り返そうとしたため、あの追いかけっこになったのだという。

 宴席用の料理に何か仕掛けてくるだろうことにヴァレンは気付いていたと話す。
 学校でネヴィルがヴァレンの様子を伺っていたので、ヴァレンも気付かないふりをして注意していたそうだ。
 すると昼食前、ネヴィルが食堂のあたりをうろうろしていたので、怪しいと思ってヴァレンもこっそり食堂に忍び込んだという。

 学校の食堂は座席が決まっている。スープは食事開始直前に配られるのだが、ヴァレンが忍び込んだときには、すでにパンやサラダは各個人の分が準備されていた。ヴァレンはこっそり自分の分を少しだけ口に含んでみたそうだ。
 そこでヴァレンは、何か薬が入ってくることに気付いたという。ネヴィルが何かを混ぜたと思ったヴァレンは、ひそかにネヴィルと皿を取り替えたそうだ。

「きっと、俺が宴席用の料理を運べないようにするためだと思ったんで、宴席用の料理に何か仕掛けてくるだろうと考えました」

 今日は頑張らなければならないと言っていたヴァレンの言葉は、そのためだったらしい。
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