きみを待つ

四葉 翠花

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37.不思議

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「そう……だったら、僕に言ってくれればよかったのに」

 思わずミゼアスが呟くと、ヴァレンがしゅんとうなだれた。

「ごめんなさい……とにかく捕まえて証拠を……って思って……。あのときは、あまり時間もなかったし……。苦い味だったらすぐにわかるんですけれど、あの砂糖菓子は甘かったから気付かなくって……ごめんなさい」

「ああ……僕のほうこそ、責めるような言い方をして悪かったね。砂糖菓子は僕のせいだよ。僕の不注意だ」

 ミゼアスはヴァレンをぎゅっと抱きしめる。

「きみを苦しめた連中には、それなりの対応をしないとね。そういえば、ネヴィルの皿と取り替えたと言っていたけれど、昨日はネヴィルと追いかけっこをしていたよね。ネヴィルは大丈夫だったのかな」

「うーん……昨日、ミゼアス兄さんが去ったすぐ後に、ネヴィルはお腹を押さえて走っていきました。それかもしれません」

「そっか……遅効性の薬だったのかな。砂糖菓子と二重に手を打ったのか……」

 そこまでするとは、ヴァレン個人に恨みがあるのか、それともミゼアスに対する憎しみが相当に強いのだろうか。
 正直なところ、ミゼアスにはそれほどの心当たりはなかった。

「ああ……そうだ。昨日の、僕の予約客はどうなったんだろう。きちんと手配してくれたのかな……」

 ガルトに託したが、それほどミゼアスに恨みがあるというのなら、もしかしたら無視する可能性もある。穴を開ければ、ミゼアス個人だけではなく、この館の信用問題に関わることだ。
 ガルトもそれくらいはわかっているだろうが、もし憎しみが深いというのならば、あえて無視することもありえると思えた。

「あのお客は、ガルト兄さんがお相手をしていました。何だか複雑そうな顔をしていましたけれど」

 しかしあっさりとヴァレンがミゼアスの不安を否定する。どうやら穴を開けることはしなかったようだ。ミゼアスは胸を撫で下ろす。

「そう……まあ、とりあえずはよかったよ」

 軽く一息つくと、ぴくっとヴァレンが顔を上げて扉を振り返る。ミゼアスがどうしたのかと思っていると、ヴァレンはそのまま立ち上がって、扉へと駆けていってしまった。
 間を置かずに、扉を叩く音が響く。来客のようだ。
 扉の前まで移動してきていたヴァレンが、すかさず扉を開ける。すると、そこには今まで話題にしていた人物の姿があった。
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