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38.懺悔する恋心
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扉が開け放たれると、そこにはガルトがネヴィルを従えて立っていた。振り返るヴァレンにミゼアスが頷くと、ヴァレンは二人を中に迎え入れる。
「……すまなかった」
ミゼアスは身構えるが、ガルトがぼそりと漏らしたのは謝罪の言葉だった。
「まさか、あんなことになるとは……。あのとき、俺は動くことができなかった。おまえのように毅然とした態度なんて取れなかった。しかも、おまえはネヴィルのことまでかばって……俺では到底おまえのようには振る舞えない……」
いつも高圧的な態度でミゼアスに接するガルトが、うなだれて殊勝な言葉を漏らす。やや面食らいながらミゼアスは言葉の続きを待った。
「……あの人が、おまえに惹かれたのも当然だ。それを嫌がらせなんてしてしまって、悪かったと思っている。昨晩のあの人は俺を抱きながら、気もそぞろだった。やはり、おまえのほうがいいんだろう……」
「ちょっ……ちょっと待って。あの人って?」
慌ててミゼアスは口を挟む。どうも話の方向がおかしい。
「昨日、おまえに予約を入れていた客のことだが? 俺が代わりに相手をした」
軽く唇を尖らせるガルト。
ミゼアスは軽く深呼吸して、ガルトの話を整理してみる。ミゼアスに惹かれたのは当然、それに嫌がらせ……どう考えても、結論はひとつだ。
「……もしかして、その客のことが好きなの?」
「……だから、何だっていうんだ。いいよ、俺は身を引くよ……」
「い……いや、待ってよ。僕とあの客はそんなんじゃないよ。あの客は花月琴の演奏を聴きにくるだけで、僕を抱こうとはしないよ。……まあ、一回だけちょっとあったけれど、僕のせいだし……」
最後のほうはぼそぼそと小さな声で呟く。
「演奏だけ? おまえを抱こうとしない?」
「うん。そういうことはしたくないって。きみのことは抱くの?」
「あ……ああ……」
確か、あの客はミゼアスの前に堕ちたことを悔いていた。裏切りだとか何とか言っていたような記憶がある。
それなのにガルトのことは抱くということは、もしかしたら客の側も当たりなのではないだろうか。
「じゃあ、もしかしたらあの客だってきみのことを特別に思っているんじゃない? 少なくとも、僕に対してよりも特別な感情を持っていることは間違いないと思うよ。きちんと確かめてみたら?」
「え……ああ……」
しどろもどろになってガルトは頷く。顔が少し赤くなっていた。
「……もしかして、きみの嫌がらせが多かったのは、その客を僕にとられたと思っていたから?」
「……すまない」
うなだれながらガルトは謝る。
ミゼアスは軽く宙を仰いでゆっくりと、大きく息を吐いた。そういうことだったのか。
そういえば、ガルトの嫌味が激しくなったのは、あの客が来るようになった直後だった。薬が混ざっていたのも、あの客のときだ。
一気に力が抜けていくようだった。恋心からくる嫉妬だったのか。
「……すまなかった」
ミゼアスは身構えるが、ガルトがぼそりと漏らしたのは謝罪の言葉だった。
「まさか、あんなことになるとは……。あのとき、俺は動くことができなかった。おまえのように毅然とした態度なんて取れなかった。しかも、おまえはネヴィルのことまでかばって……俺では到底おまえのようには振る舞えない……」
いつも高圧的な態度でミゼアスに接するガルトが、うなだれて殊勝な言葉を漏らす。やや面食らいながらミゼアスは言葉の続きを待った。
「……あの人が、おまえに惹かれたのも当然だ。それを嫌がらせなんてしてしまって、悪かったと思っている。昨晩のあの人は俺を抱きながら、気もそぞろだった。やはり、おまえのほうがいいんだろう……」
「ちょっ……ちょっと待って。あの人って?」
慌ててミゼアスは口を挟む。どうも話の方向がおかしい。
「昨日、おまえに予約を入れていた客のことだが? 俺が代わりに相手をした」
軽く唇を尖らせるガルト。
ミゼアスは軽く深呼吸して、ガルトの話を整理してみる。ミゼアスに惹かれたのは当然、それに嫌がらせ……どう考えても、結論はひとつだ。
「……もしかして、その客のことが好きなの?」
「……だから、何だっていうんだ。いいよ、俺は身を引くよ……」
「い……いや、待ってよ。僕とあの客はそんなんじゃないよ。あの客は花月琴の演奏を聴きにくるだけで、僕を抱こうとはしないよ。……まあ、一回だけちょっとあったけれど、僕のせいだし……」
最後のほうはぼそぼそと小さな声で呟く。
「演奏だけ? おまえを抱こうとしない?」
「うん。そういうことはしたくないって。きみのことは抱くの?」
「あ……ああ……」
確か、あの客はミゼアスの前に堕ちたことを悔いていた。裏切りだとか何とか言っていたような記憶がある。
それなのにガルトのことは抱くということは、もしかしたら客の側も当たりなのではないだろうか。
「じゃあ、もしかしたらあの客だってきみのことを特別に思っているんじゃない? 少なくとも、僕に対してよりも特別な感情を持っていることは間違いないと思うよ。きちんと確かめてみたら?」
「え……ああ……」
しどろもどろになってガルトは頷く。顔が少し赤くなっていた。
「……もしかして、きみの嫌がらせが多かったのは、その客を僕にとられたと思っていたから?」
「……すまない」
うなだれながらガルトは謝る。
ミゼアスは軽く宙を仰いでゆっくりと、大きく息を吐いた。そういうことだったのか。
そういえば、ガルトの嫌味が激しくなったのは、あの客が来るようになった直後だった。薬が混ざっていたのも、あの客のときだ。
一気に力が抜けていくようだった。恋心からくる嫉妬だったのか。
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