きみを待つ

四葉 翠花

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39.嫌がらせ

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「まあ、嫌がらせもしたくなるんだろうけれど……でも、薬まではやりすぎだろう」

「……本当に悪かった」

「あの『明けぬ夜』だっけ? あれでヴァレンは苦しんだんだ。いくらなんでも、あんなことまですることはないだろう」

「ちょっと待ってくれ。『明けぬ夜』って何のことだ? 俺が入れたのは下剤だ。俺が、というかネヴィルにやらせたんだが……」

 おとなしくしていたネヴィルが一瞬、びくっと身体を震わせる。

「え? 下剤?」

「あの人はナツメが苦手だから、ナツメに混ぜさせた。あの人が食べないように。昨日も入れさせようとしたんだが……」

 そう言って、ガルトは気まずそうに視線をそらす。ヴァレンとネヴィルが奪い合っていた小瓶のことだろう。

「ヴァレンが客から砂糖菓子をもらってきたんだけれど、そのことは知らないって? きみが客に頼んで、渡させたんじゃないのかい?」

「客になんて頼んでない。前に一回と、昨日失敗した分しか俺は知らない。『明けぬ夜』なんて、そんなとんでもないもの……」

 ガルトは身を震わせる。顔がわずかに青ざめていた。

「きみは『明けぬ夜』のことを知っているの?」

「ああ……俺がまだ見習いだった頃、上役だった兄さんがそれに溺れておかしくなったんだよ。俺とマリオンも襲われそうになったことがある……」

「マリオン?」

「当時、俺とマリオンは同じ兄さんに付いていたんだ。おかしくなってから、別々の兄さん付きになったけれど」

「そう……」

 ミゼアスは唇に指をあてて考え込む。七、八年くらい前に流行ったという話だったから、その頃ならガルトもマリオンも見習い時代だ。
 そのあたりの話は、娼館主にでも聞けばわかるだろう。

「あんな恐ろしいもの、俺は使っていない。そもそも、入手も無理だ。疑うのなら、俺の部屋を全て調べてもらってもいい」

 ガルトに嘘をついているような様子は見当たらない。それならば、『明けぬ夜』は別に犯人がいるということなのか。

「……『明けぬ夜』のことは信じるとして、それでも下剤を混ぜたのは確かなんだね?」

 いったん『明けぬ夜』のことは置いておくことにし、ミゼアスは問いかける。

「ああ……本当に悪かったと思っている……」

「客が食べないようにはしていたみたいだけれど、宴席の残り物は見習いたちの食事になること、知っているよね。僕だけではなく、何の罪もない見習いたちにまで被害が及ぶことは考えなかったのかい?」

 ミゼアスが言うと、ガルトははっとした顔をした。

「……言われてみれば、そのとおりだ。俺はそこまで考えていなかった……」

「学校でヴァレンの昼食にも何かを混ぜさせたんだろう? 自分付きの見習いにそんなことをさせるなんて、上役としてもどうかと思うよ」

「……言い訳のしようもない。俺が全て悪い。どんな罰でも受ける。だが、ネヴィルは俺の指示に従っただけなんだ。非は全て、俺にある。だから、あまり酷い罰は与えないでやってほしい……」

「そう、わかったよ」

 ミゼアスは答え、どうするべきか考えを巡らせる。娼館主に報告することにはなるだろうが、罰自体はミゼアスが決めて問題はない。
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