きみを待つ

四葉 翠花

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40.悪いのは

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「ま……待ってください……ぼ、僕も悪いんです……ヴァレンの昼食に薬を混ぜようと言い出したのは、僕なんです……」

 今まで黙っていたネヴィルがおずおずと口を開く。

「ネヴィル!」

 ガルトが咎めるように名を呼ぶ。ネヴィルに向ける目は、黙れと言っているようだった。

「僕……ヴァレンのことが気に入らなくて……。前は僕が優秀だって言われていたのに、後から入ってきたヴァレンにあっさり抜かされて……焦ったんです」

 しかしネヴィルはガルトの視線を避けるようにやや俯きながら、言葉を続ける。

「それまで僕が注目を集めていたのに……手のひらを返されたりして……また注目を集めたくて、いろいろやりました。周りが面白がるから、ミゼアス兄さんの悪口まで……」

 ぐっと言葉に詰まり、ネヴィルは握り締めた拳を震わせた。

「ヴァレンにも嫌味を言いました。でも、ヴァレンはいつも僕のことなんて、まったく気にも留めなくて……だから、だんだん気になって、意地悪してやりたいって思ったんです……それで、ヴァレンの昼食に薬を混ぜようと言いました。ガルト兄さんはそこまでしなくてもって言ったのに……僕が悪いんです……」

 だんだんとネヴィルの声が震えてくる。今にも泣き出しそうだ。

「僕……すぐに悪口を言ったり、意地悪したりしちゃうんです……本当はいけないことだってわかっているのに……。それなのに、ミゼアス兄さんも、ガルト兄さんも、僕のことをかばって……」

 ネヴィルはぐずぐずと鼻を鳴らす。

「昨日、ミゼアス兄さんがかばってくれたとき、安心したんです。僕は酷い目にあわなくてすむ、って……。でもその後すぐ、急に腹痛がして……罰が当たったんだと思いました」

 思わずミゼアスとヴァレンは顔を見合わせる。下剤が効いたのだろうとは思ったが、互いに何も言わずに複雑な顔をしただけだった。

「僕も悪いんです。今回のことだけじゃなくて、今までだって……だから、僕こそ罰を受けなきゃいけないんです。ガルト兄さんだけが悪いんじゃありません」

「いや、今回の件で悪いのは俺だ。おまえが昼食に薬を混ぜると言い出したとき、俺は止めなきゃいけなかったんだ。それなのに、やらせてしまった。俺が上役として失格だったんだ。それに、そもそも薬を使い出したのは俺だ。やっぱり、俺が全部悪い」

 ガルトは涙を浮かべるネヴィルの頬にそっと手を添える。

「でも……」
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