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49.闇の中
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ミゼアスは寝台の住人となっていた。
廊下で突然倒れ、そのまま寝込むことになってしまったのだ。
最初の頃は寝台の上で身を起こして、本を読むことくらいはできた。
きっと疲労でもたまっていたのか、急激に症状の出る風邪でもひいたのだろうと思い、しばらく休めばよくなるだろうと軽く考えていた。
不安げに寄り添うヴァレンの頭を撫で、微笑みかけることだってできたのだ。
それが徐々に、起き上がることもできなくなってきた。眠っている時間が増え、ついには一日のほとんどを眠って過ごすようになってしまったのだ。
島の医者たちは全員が原因不明、治療方法もないと匙を投げた。もうこのまま衰弱していくだけだろうと言ったのだ。
夢と現実の区別が曖昧な状態で、ミゼアスはそれを聞いていた。このまま自分は死ぬのだ、と漠然と感じていた。
それでもいいか、と思えた。
五花としてふさわしくあろうと頑張ってきた。しかし、もう頑張らなくてもよい。そう思うと急激に力が抜けていくようだった。
もともとは、早く借金を返して幼馴染の元に帰ろうと頑張ってきたのだ。その幼馴染も、もはや行方が知れない。このまま会えないのなら、もう生きていなくてもよいのではないだろうか。
ゆっくりと、確実に死神の足音が近づいてくるのをミゼアスは聞いていた。
その足音を妨げるように、ヴァレンの声がかすかに聞こえてくるようだった。
ヴァレンのことは心残りだ。しかし、ヴァレンは強い。ミゼアスがいなくても、逞しく生きていくだろう。
せめて最期に微笑んで、もう一度あの柔らかい髪を撫でてやりたかった。
しかし、もう手が動かない。目も開けられない。
為す術なく、ミゼアスは闇の中に落ちていった。
廊下で突然倒れ、そのまま寝込むことになってしまったのだ。
最初の頃は寝台の上で身を起こして、本を読むことくらいはできた。
きっと疲労でもたまっていたのか、急激に症状の出る風邪でもひいたのだろうと思い、しばらく休めばよくなるだろうと軽く考えていた。
不安げに寄り添うヴァレンの頭を撫で、微笑みかけることだってできたのだ。
それが徐々に、起き上がることもできなくなってきた。眠っている時間が増え、ついには一日のほとんどを眠って過ごすようになってしまったのだ。
島の医者たちは全員が原因不明、治療方法もないと匙を投げた。もうこのまま衰弱していくだけだろうと言ったのだ。
夢と現実の区別が曖昧な状態で、ミゼアスはそれを聞いていた。このまま自分は死ぬのだ、と漠然と感じていた。
それでもいいか、と思えた。
五花としてふさわしくあろうと頑張ってきた。しかし、もう頑張らなくてもよい。そう思うと急激に力が抜けていくようだった。
もともとは、早く借金を返して幼馴染の元に帰ろうと頑張ってきたのだ。その幼馴染も、もはや行方が知れない。このまま会えないのなら、もう生きていなくてもよいのではないだろうか。
ゆっくりと、確実に死神の足音が近づいてくるのをミゼアスは聞いていた。
その足音を妨げるように、ヴァレンの声がかすかに聞こえてくるようだった。
ヴァレンのことは心残りだ。しかし、ヴァレンは強い。ミゼアスがいなくても、逞しく生きていくだろう。
せめて最期に微笑んで、もう一度あの柔らかい髪を撫でてやりたかった。
しかし、もう手が動かない。目も開けられない。
為す術なく、ミゼアスは闇の中に落ちていった。
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