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ジェットコースターのトラウマ(美和子)
しおりを挟むフッと、小さい頃の記憶が甦った。
それは、計らずもジットリと脂汗が滲むような、恐ろしい記憶だった。
家族で遊園地に行ったとき、好奇心旺盛な少女だった私は興味本位でジェットコースターに乗った。幼い好奇心はすぐに後悔の念へとひっくり返った。
そのスピード感に戸惑い、髪が逆立つほどの風圧に驚かされ、強引に後方へと流れ行く景色の変化には恐怖を覚えた。
そして急降下の際には、臓物が持ち上げられるようなフワッとした感覚に襲われると同時に不安の感情が引きずり出され、思わず絶叫した。
それ以降、私はジェットコースターが苦手となってしまった。
オフィスで仕事中という状況で、どういうわけか私は、その苦手なジェットコースターに乗っているような感覚に襲われていた。
先ず、小刻みに震えるような振動が突然、『膣口』周辺を這うように蠢き始めた。
その振動は、動物か何かがたまたま入り込んで暴れているようなランダムな動きではなく、機械的で規律性のある冷徹な振動だった。
不気味な違和感に、腰を横に振ったり縦に振ったりして椅子の座面に股間を押し付けて抵抗を試みたけど、冷徹な振動は何も変わらなかった。
確かに固形物を当てがわれているような感触はあった。でもそこには何も無い。不思議な感覚だった。痒いと思って掻いた場所が全く的外れだったときの感覚に似ていた。
そして、股間を自ら座面に押し付けるという行為は、摩擦の刺激を局所に与えることとなり、自分自身を更に苦しめるだけの結果となってしまった。
やがて振動は膣口から徐々に上方向へと移動を始めた。逃げ場の無い袋小路に追い詰められたような恐怖と絶望感が押し寄せる。振動は尿道を通過すると、ついにクリトリスの縁を捉えた。身体が跳ね上がる。振動は焦らす様に下方向へと移動し、膣口周辺まで戻ってきたかと思えばすぐに踵を返し、上方へと移動し、クリトリスの縁をまた捉えた。まるでジェットコースターが同じルートを何度も行き来するかのように、この動きは繰り返された。
急に身悶え出した私を心配して、近くで仕事をしていた同僚の女子社員が咄嗟に声を掛けてくれたけど、身体に襲い来るあまりの出来事に何も返事を返すことができない…
「もう限界!」と思った瞬間、振動はクリトリスの中心を捉え、その位置で固定した。
頭が勝手に蛍光灯を見上げた。身体が何度も跳ね上がるのを止めることができない。意識が朦朧としてくる………
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