うぅあおん…

くろ

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愛らしい

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平日の昼下がり、小腹が空いたので何か食いに行こうと家の玄関を開けると、久々に気持ちのよい快晴の空が覗けた。すっかり気分を良くした私は、車を使わず、今日は歩くことにした。
目的地まで半分ほど歩いた、向かって左前の家の敷地内で、女の子が一人で土いじりをしているのが目に入った。
私の腰の位置ほどの身長のその女の子は、少量の砂を乗せた赤い小さなハンド型のスコップの柄を右手で握り、空いた左手を尖った方の先端付近に軽く添え、砂がこぼれないように「おおおおお…」と、言いながら、天に掲げていた。いや、正確には「ををををを…」と、言っていた。
まるで王様に何かを献上しようとする、忠実な家臣のようだった。
私は、その光景を横目に気にしながら、しかし、彼女のその『儀式』を邪魔しては悪いので、なるべく音を立てないようにしてその場を通り過ぎた。

目的地で適当に小腹を満たすと、私はすぐさま来た道を引き返すことにした。
なぜかというと、やはり、先ほどの土いじりをしていた女の子が気になったのだ。
もしかしたら彼女は、自分自身でも気がついていない不思議な能力を持ち合わせていて、それが先ほどの『儀式』と妙な形で合致し、それで『神』だとか『古の魔物』だとか、あるいは『UFO』だとか『ハクション大魔王』の口寄せに成功しているかも知れないのだ。

だが、遠目から見える彼女の家からは、その非日常的な、私の期待するような光景は見られず、先程通過した時と同様、ほのぼのとした平日の昼下がりの様相を呈していた。
更に近付いて見ると、そこには彼女の姿もなく、あるのは土を掘り返したと言うには少し大袈裟な程度の、むしろ、土の表面の上っ面を少し『すくった』程度といった方がしっくりくるぐらいの僅かな形跡と、尖ったものの先端で土の表面を突き刺そうとしたような形跡、そして、彼女が天に掲げた献上物を乗せるための器は、何か彼女の気に触ることでもあったのか、無造作に地べたに転がされていた。
私は実は、『落胆』だとか、『物悲しい』だとかいう感情に支配される心の準備をしていたのだが、それよりも先に、予想外にも『愛らしい』という感情が先行した。
その場に確かに存在した小さな命の活動の痕跡を、真っ先に『愛らしい』と感じないではいられなかった。
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