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鐘技怪異談W❼巻【完結】

152話「牙だるまさんは転ばない」

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「1」

 日差しの強い真夏日のお盆。
 私の名前は真田辺勇貴、52歳。
 以前同僚が好きだった達磨を供えるため、野薔薇霊園墓地へ向かう所である。
 その時偶然にも日傘を指す顔見知りの彼女と出会えた。

「真田辺さん、こんにちわ」

 黒の着物を普段着として着用する彼女は鐘技友紀。
 彼女はアルビノため日差しを避けるために日傘を差すのである。

「友紀さん、こんにちわ。君もお墓参りかい?」

「ええ。お盆ですから」

「そうか。私もだ。少し同僚の命日もその日なんだ」

 私と友紀は世間話をしながらその目的地へ入った。

 ーー野薔薇霊園墓地公園内ーー

 中に入ると友紀の両親の墓にキリコと線香と蝋燭を灯してお参りする。
 それが終えたら、私の同僚の墓にも同様にお参りする。
 そして忘れずに同僚が好きだった達磨を供える。

「真田辺さん。それは?」

「これかい?生前彼が好きだった達磨さ。はは。この達磨は彼があの世でも転ばないようになってると思ってな」

「ふふふ。でもいつか人生もどこかへ転ぼうとしても転ばない時もありますからね。そんな怪異談ありますよ。だるまさんが転ばない怪異談をね」

「君の怪異談を聞くのは久しぶりだな。よかったら聞かせてくれないかな?」

「はい。とある町に牙だるま神社がありました。その人生がご縁があるように結びたくてその彼が訪れてーー」


「2」

 僕の名前は音田武史。29歳。
 この町にあるご利益あると呼ばれる牙だるま神社に向かうところである。

「あった。あれかな?」

 ちゃんと立派に牙だるま神社と書かれていたので中に入った。

 ーー牙だるま神社内ーー

「お願いします!彼女が作れますように」

 と、まぁ奮発して5円玉を3つ投げたから大丈夫だろう。
 僕は彼女いない歴29年。
 壺の購入買わせたりした彼女は入ってはない。
 しかし、ネットで願いが叶うと言っていたが実際のところはこんなボロくて汚いしかもダサいのは願いは来ないだろうな。
 (ミシミシ)
 ん?なんだろうか?
 この神社きちんと掃除してるだろうか?ま、今日のところは帰ろう。

 ーーーーーーー。

 僕は夢を見ていた。
 何故か牙だるま(?)が僕の前にやってきて、「おまえの願いを聞き届けた」と言ってそのまま立ち去っていた。
 その日僕は念願の彼女を作ることができた。
 やはり、本物だったんだあれはーー。

「3」

「はは。相変わらず玲子は豚肉好きだな」

「ふふふ。私は毎日豚肉食べても飽きないわよ」

 私と武史は丼物屋さんで他人丼を食べている。
 私の名前は牙見玲子。歳はないしょ。
 私の正体は牙だるまの化身の神である。
 私は迷える子豚達に願いを届けて信仰心を深めているがーー。
 ふざけんなよ!?
 お布施がたったの15円て!!
 しかも私の神社にケチをつける始末だった。
 しかし、私は一応神様であり、願いを聞き届けなければならない。
 ふむ。たしかに彼は彼女を作ると聞いた。
 しかし、私の願いは64日目である。
 それが過ぎると願いは完了して私はそのまま次の願いに待つのである。
 こいつからうーんと絞って捨てるの悪くないわね。
 ふふふ♪想像しちゃったわ。

「玲子。今度の日曜日、デートオブファンタジアに行かないか?」

「いいわよ」

 彼と次のデートがちょうど63日目である。
 そこで私は彼の願いを聞き届ける最後の日でもあったから。

「4」

「お待たせ♪」
「その服似合ってるよ」
「ありがと」

 彼の待ち合わせの場所に遅れずやってきた私。
 彼の好みに合わせるためにファッション雑誌をコンビニで立ち読みした私はなんなく問題なかった。
 私は神の化身牙だるまである。
 しかし、この気持ちはなんだろうか?何かズキズキとくる気持ちが湧きあがる。
 そしてデートする時も彼の顔をまともに見ることは出来なかった。

「5」

 ーーゾンビパニックランドーー

「ま、まさか入るのここ?」
「一度入ってみたくさ」

 私は神の化身牙だるまである。
 あの世の幽霊や死者には慣れているがこの恐ろしい作りモノには慣れてなかった。
 彼と私はそのテーマパークの中に入った。
 しかし、案の上怖かった。
 いや、彼が余計に怖がるのが怖かった。
 何やら念仏をとなえてつぶつぶとつぶやき方が怖いんですけどね。
 ちょうどテーマパークを満喫した後、私たちはグロッキー状態なっていたが彼と一緒にいられるのが楽しかった私。
 なんだか私自身も神さまであることに忘れていた。
 お互い私たちは惹かれあっていた。
 しかし、彼も本気だったのだ。

「6」

 ーーデートオブファンタジア飲食店内ーー

「え?私と結婚?」
「そうだ。一緒に暮らそう玲子」
 彼は私にプロポーズした。
 よりによってこの日に……。
 しかし、私は神の化身牙だるま。
 人と交わることは許されない。
 だから、彼にとって告白することにした。

「ごめんなさい。私、あなたと一緒になれない」

「どうしてなんだ!?教えてくれるかい?」

 私は正体を告げた

「……私は人ではないのごめんなさい」

「え?君はまさかあの牙だるま……」

 正体を表した私はいくつか変身するとき人だかりが出来てるが気にならなかった。このまま私は立ち去ろうとしたら、彼が呼び止めた。

「君が何者であろうとは関係ない!!僕は君が大好きなんだ!!愛してる!!」

「武史さん!!」

 武史は私に抱きしめてくれる。私自身牙だるまだったのでシュールな光景だったが私たちは一緒になれるように彼が新たに願いを届けたから。


 ーー数十年後ーー

 彼と私は一緒に共に暮らした。
 彼は願いを聞き届けて彼自身牙だるまの化身なった。
 彼と私の子の血縁はないが養子に迎えてその孫たちと一緒に牙だるま神社を永く守り続けていくことになった。


「という怪異談ですよ」

 私は拍手する。
 その時、彼女も気づいてなかったが彼女の両親も来ていたようだ。

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないさ。よかったよ」

 私は教えてあげてもよかったがそっとしておいた。
 この後、私は彼女と別れた後仕事に戻る。
 私の職業は軽視官であり、礼察署に勤めるオカルト犯罪専門を取り扱っている。
 そしてどんな事件も軽視せずに現場へと向かう。
 これからも。

 牙だるまさんは転ばない  完


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