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野薔薇怪異談集全100話
86話「君のせい」
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「1」
――あいつ、消えてほしい――
心でそう願った瞬間、――消えた。
理由さえ、自分でもハッキリわかるようになっていた。
⸻
早朝。スマホのアラームが鳴り響き、私は2階から降りてくる。
テーブルにはパパが焼いたトーストとコップ。
だが、ママの席は空いていた。
先月、私の思いが届いた結果、彼女は―蒸発したのだ。
――消えろ、と願えば、誰かは消える。
それが私の力だ。
「ミルクいる?」
「いらない」
今日も、いつもの朝が終わる。
⸻
「2」
「行ってきます」
自転車で濡れたアスファルトを走り出す。私、君田絵菜、16歳。
清々しい朝だったはずが、雨に打たれ、最悪。
「蜂鐘技高校 2年B組」
教室に入ると、みんなの視線。
私の机、そして黒板にまで――悪口と落書き。
私は淡々と消す。
落書きも、悪口も……文字そのものを。
「あんたみたいなやつ 消えてくんない?」
そう言われたとたん、そいつは苦しみだし、救急車で運ばれた。
次の日から登校しない。
――そう願うと、消える。
だが、人はだんだん寄りつかなくなる。
⸻
「3」
噂が広まる。
“君田絵菜に関わると消える”。
友達もいない、孤独な毎日。
その頃、パパが新しい彼女を連れてきた。
「絵菜、こっちが真江さん」
「……よろしく」
顔も中身も気に入らない、腹が立つ。
その瞬間――私は言った。
――消えろ。
次の瞬間、パパと彼女の顔が黒く溶け、体が弾けた。
黒い液体が吹き出し、私は初めて安心した。
「これが、私のせいなのだと……」
そして――私は自分に祈った。
「私も、消えてしまえばいい……」
⸻
「4」
私は彼女の死体を埋葬した。
彼女はもはや“人”ではなかった。
見えない“なにか”に呑み込まれていた。
石山県には、“人ならざるモノ”が紛れ込んでいる。
彼らはどこから来るのか――未だ謎のまま。
彼女は、確かに、喰われていた。
――そうよね、さん……
――“君”のせい、すべて、終わる。
君のせい 完
――あいつ、消えてほしい――
心でそう願った瞬間、――消えた。
理由さえ、自分でもハッキリわかるようになっていた。
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早朝。スマホのアラームが鳴り響き、私は2階から降りてくる。
テーブルにはパパが焼いたトーストとコップ。
だが、ママの席は空いていた。
先月、私の思いが届いた結果、彼女は―蒸発したのだ。
――消えろ、と願えば、誰かは消える。
それが私の力だ。
「ミルクいる?」
「いらない」
今日も、いつもの朝が終わる。
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「2」
「行ってきます」
自転車で濡れたアスファルトを走り出す。私、君田絵菜、16歳。
清々しい朝だったはずが、雨に打たれ、最悪。
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教室に入ると、みんなの視線。
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私は淡々と消す。
落書きも、悪口も……文字そのものを。
「あんたみたいなやつ 消えてくんない?」
そう言われたとたん、そいつは苦しみだし、救急車で運ばれた。
次の日から登校しない。
――そう願うと、消える。
だが、人はだんだん寄りつかなくなる。
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「3」
噂が広まる。
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その頃、パパが新しい彼女を連れてきた。
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顔も中身も気に入らない、腹が立つ。
その瞬間――私は言った。
――消えろ。
次の瞬間、パパと彼女の顔が黒く溶け、体が弾けた。
黒い液体が吹き出し、私は初めて安心した。
「これが、私のせいなのだと……」
そして――私は自分に祈った。
「私も、消えてしまえばいい……」
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「4」
私は彼女の死体を埋葬した。
彼女はもはや“人”ではなかった。
見えない“なにか”に呑み込まれていた。
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――“君”のせい、すべて、終わる。
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