ホラー寝たノート【改稿版】

野花マリオ

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①ホラーはすでにパターン化しており、完成してる

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「ホラーって、何だろう?」

 あなたは、“ホラー”と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう?

 ──怖い話。
 ──都市伝説や怪談。
 ──意味がわかるとゾッとする短編。
 それとも、『青鬼』や『ゆめにっき』といった、ゲーム由来の不条理系だろうか。

 もし“通好み”なあなたなら、たぶんこう答えるかもしれない。
「Jホラーなら『リング』だろ」
「昭和のリアル怪談なら『口裂け女』は外せない」
「ホラー×ミステリーの金字塔は『世にも奇妙な物語』だよね」

 ──正解は、どれも“あり”だ。ホラーに“定義”はない。
 だが、“効く”ホラーには、共通する“型”がある。

 ⸻

「育てられた恐怖、使える恐怖」

 僕自身、子どもの頃からホラーまみれで育ってきた。
 原因は明確──ホラー好きな母の影響だ。

 彼女は僕に『チャイルド・プレイ』を見せて眠らせたし、『エクソシスト』を「女の子が叫んでるだけの映画」と評した。
 ──そんな家庭で育てば、そりゃあホラー好きになる。

 個人的に印象深いのは、スティーヴン・キング。
 中でも『IT』と『やせる男』は、恐怖の“変質”を描いていて、いまでも参考にしている。

 そんなわけで、ホラーは僕の“血肉”だ。
 だから、小説を書くときは、ふとした拍子に“怖いキャラ”が現れる。幽霊、ストーカー、ゾンビ──定番の三大怪異。

 「どうせ困ったらホラー出しときゃ盛り上がるでしょ?」

 そう言われがちだが、実はそれ、間違いじゃない。
 ──ただし、“出しどころ”さえ間違えなければ。

 ⸻

「ホラーとは、引き金である」

 ホラーにおける“キャラ”──幽霊や怪物たちは、単なる脅し役ではない。

 本質は、**物語の引き金(=スイッチ)**だ。

 たとえば、日常の描写をじっくり積み上げたあと、何気ない場面で“異変”を忍ばせる。その瞬間、空気が変わる。
 “見えてしまったもの”があることで、物語は非日常へと舵を切る。

 ──これがホラーのスイッチだ。

 ホラーはただ怖がらせるだけの道具じゃない。
 変化を起こす装置なんだ。

 だから僕は、物語を“転がす”ために怪異を使う。
 あらかじめ仕込んでおいた日常の“歪み”に、そっと指をかけるように。

 ⸻

「フラグはスイッチ。恐怖は構造だ」

 小説を書いていると、いつも思う。
 “幽霊をどこで出すか”というジレンマは、ホラーの最重要ポイントだと。

 ただ怖がらせるだけなら簡単だ。
 だが、物語を駆動させる怪異を描くには、“出現のタイミング”が命となる。

 それを、僕は“フラグスイッチ”と呼んでいる。

 伏線というより、“怖さを発動させる仕掛け”。
 ホラーとは、ただの感情ではない。設計された構造なのだ。

 ⸻

「ホラーとは、“想像させる装置”である」

 最終的に、恐怖とは“創造”だと思う。
 視覚的な恐怖、音、空気感、そして“意味がわかる”瞬間の戦慄──

 それらを、読者自身の想像力に委ねて点火させる技術こそが、ホラーの本質だ。

 ホラーを書きたい?
 なら、キャラを使い捨てにするのではなく、“恐怖を起動する装置”として配置してみてほしい。

 きっとそこから、物語は自然と暗闇へと沈んでいくだろう。

 その静かな闇に、ぽつりと何かが立っている。
 君が描いた、世界で一番怖い“それ”が。
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