ホラー寝たノート【改稿版】

野花マリオ

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②このホラーという物に例えるならば信号機と考える。略して平気弾という切り替えシステム

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「ホラーにおける“平気弾”理論──信号機システムという構造法」

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 物語の“恐怖演出”において、ただ怪異を出せば怖くなる──そんな単純な時代は終わった。

 現代の読者は賢く、構造に敏感だ。
 だからこそ、ホラーに必要なのは“感情のグラデーション”であり、段階的に恐怖を高める構造化されたシステムなのだ。

 そこで紹介したいのが、通称──

「信号機システム」、
 あるいは**「平気弾(へいきだん)理論」**と呼ばれる演出法である。

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 ■【Ⅰ】青──“平気”のフェーズ(= 安心)

 物語冒頭や恐怖が始まる前に描かれる、日常の空気感。
 たとえば、友人と並んでお化け屋敷の入り口に立っている場面。

 登場人物の表情は軽く、言葉に余裕がある。
  • 「こんなの全然平気だよ」
  • 「お化け屋敷? ぜんっぜん怖くないし」

 ──この“青信号”の状態は、読者にとって安心と平穏をもたらす。

 だがそれは、恐怖を引き立てるための布石でしかない。

 ⸻

 ■【Ⅱ】黄──“予兆”のフェーズ(= 違和感)

 次に訪れるのが“黄色信号”──つまり、異変の兆しだ。

 足音が一つ多い、部屋の奥に動く影、言葉にならない空気の重み。
 明確に何かが起こったわけではないが、読者とキャラクターは“何かがおかしい”と気づき始める。
  • 「今、物音しなかった?」
  • 「さっき、誰かいたよな……?」

 この違和感が、緊張感を生む。
 読者の五感を研ぎ澄まし、次に来る赤信号を意識させる。

 ⸻

 ■【Ⅲ】赤──“遭遇”のフェーズ(= 発火)

 そしてついに赤信号、恐怖の実体が姿を現す瞬間。
  • 襲いかかる幽霊。
  • 顔のない人形が動き出す。
  • ドアの向こうから覗く“誰か”の顔。

 ここで読者の緊張はピークに達する。
 ホラーとしての“火薬庫”が爆発し、読者の想像力と恐怖感情が一気に弾ける。

 物語の中で使う比喩で言えば、

「引き金が引かれた」
「恐怖が発火した」
「もう戻れない領域に入った」

 ──そんな瞬間がここにある。

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 ■「信号機システム=平気弾理論」とは何か?

 この3ステップ構造を、ひとつの連続したスイッチ機構と捉えることで、
 物語における“恐怖の導入”は、技術として制御可能となる。

 つまり──

 青 → 黄 → 赤
 平気 → 違和感 → 恐怖(=発火)

 この三段階をなぞることで、
 あなたのホラーは、単なる思いつきから設計された演出装置へと進化する。

 これが、“信号機システム”であり、
 恐怖を一発で炸裂させるための演出テクニック=平気弾(へいきだん)理論である。

 ⸻

 ■応用:あなた自身の“平気弾”を設計せよ

 慣れてくれば、この構造は自在に応用できる。
 たとえば──
  • 青を引き延ばして油断させる
  • 黄を省略して赤を直撃させ、唐突さで驚かせる
  • 赤から始めて、逆に青へ“戻る”異色構成にする

 こうした変則パターンも、“信号機”の基本を理解してこそ効果を発揮する。

 物語の緩急は、キャラのセリフだけで作るのではない。
 構造が導く“感情の波”こそが、恐怖の本質なのだ。

 ⸻

【まとめ】
  • 青=安心(日常/平気)
  • 黄=違和感(予兆/注意)
  • 赤=遭遇(恐怖/発火)

 この3つの信号を、意図的に切り替えることで、
 物語の“恐怖”は“演出された爆発力”を持つようになる。

 これが、“平気弾”という名のスイッチだ。
 あなたもぜひ、自分なりの“恐怖起爆装置”をデザインしてみてほしい。
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