【R18】魔剣者シャンペトル・ブーケ

野花マリオ

文字の大きさ
29 / 48
第2部 魔剣者ブリーゼの手紙

セカンドステージ0207「時鐘の村」

しおりを挟む
 ー①ー 

 時鐘の村――そこでは昼も夜も区別なく、絶えず鐘が鳴り、人々が交代で働いていた。畑も市も炉も眠らず、村は常に活気に満ち、他村から羨望を受けるほどの繁栄を誇っていた。
 魔剣者シャンペトルブーケは仲間たち――魔法銃士ロラン、短剣盗賊アリス、長槍戦士グレイス――と共にこの村を訪れた。だが彼の腰に下げられた緑光を帯びる細剣は、安らぎとは程遠い気配を震わせていた。

 ー②ー

 昼の広場では人々が笑顔を見せながら働き、夜を待つ者たちに交代していた。だがその陰で、血走った目をした昼の村人がひそかに武器を研いでいた。
 「……今宵だ。夜の奴らを討ち果たす」
 その囁きが、アリスの鋭い耳に届く。シャンペトルは緑の細剣を手に取り、ただ一言つぶやいた。
 「ついに始まるか――」

 ー③ー

 夜が訪れ、交代の鐘が鳴る。だが交代は行われなかった。昼の村人たちは一斉に夜の村人へ刃を向けたのだ。
 ロランの魔法銃が閃光を放ち、グレイスの槍が地を揺らす。アリスは影のように走り、敵の首筋へ刃を滑らせた。
 シャンペトルは緑の細剣を構え、深く息を吸う。剣先から風のような翠光がほとばしり、闇を切り裂いた。

 ー④ー

 襲われた夜の村人たちは、悲鳴を上げながらもすぐにその正体をあらわした。蒼白な顔、尖った牙、紅く光る眼――吸血鬼であった。
 彼らは昼の人間を支配し、夜の間は血を啜り、日が昇れば奴隷のように働かせていた。
 「ようやく気づいたか……哀れな家畜どもめ」
 夜の村長と名乗る吸血鬼が嘲笑った。

 ー⑤ー

 シャンペトルは踏み込み、緑の細剣を横一文字に振り抜く。刃は吸血鬼の胸を貫き、まるで大地の芽吹きが闇を裂くように光を広げた。
 「おまえたちの夜は……ここで終わる」
 声は冷たくも静かで、確固たる決意に満ちていた。
 吸血鬼たちが襲いかかるたび、シャンペトルの緑剣はしなやかに舞い、次々と闇を屠っていった。

 ー⑥ー

 ロランの弾丸が火花となり、アリスの短剣が影を裂き、グレイスの長槍が吸血鬼の群れを薙ぎ払った。
 「終わらせるぞ……この永遠の夜を!」
 仲間たちの叫びに応えるように、緑の細剣はさらに輝きを増す。翠光の刃は鐘楼の闇を貫き、最後の吸血鬼を灰と化した。

 ー⑦ー

 戦いが終わったとき、昼の村人たちは解放された。彼らは涙ながらに感謝を述べたが、その背後には商人の影があった。
 「……シャンペトル殿。実はこの村の富の多くは、わたしが裏で横流しして得させてきたものです。どうか、このことは……」
 商人の懇願に、シャンペトルは緑の剣を鞘に収め、低く答えた。
 「人を食い物にせぬ限り、俺は口を噤む。だが、忘れるな――闇に溺れればまた斬る」

 ー⑧ー

 夜が明け、鐘が静かに鳴り響く。村には新しい日常が訪れようとしていた。
 シャンペトル一行は荷をまとめ、行者と一緒に次なる目的地――聖儀の村へと歩みを進める。
 緑の細剣は彼の腰で静かに光を宿し、まるで次なる試練を告げるかのようであった。
 「行くぞ。道はまだ続く」
 その背に、時鐘の村の人々の祈りがいつまでも響いていた。

 時鐘の村0207 Stage clear! 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...