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第11話 戸川くんとはじめてのドライブ①
しおりを挟む「おはよう鈴音さん!」
「あ、戸川くんおはよう!」
月曜日1限の授業前、咲と他愛も無い話をしていた所に戸川くんが登校してきた。
つい2日前に戸川くんの部屋でキスをした事を思い出して、思わずドキっとしてしまう。
「あ、鈴木さんもおはよう!」
「出たな隠れイケメン。てか『もっ』て何だよ『もっ』て。わたしゃついでか」
咲が口を尖らせながら戸川くんに文句を言う。
「あはは、ごめんごめん。次から『も』は外すよ」
さらっと笑う戸川くん。
「そう言えば戸川くんさぁ、先週の土曜日に凛が家に行ったんでしょ?どう?何かありましたぁ?ん~?年頃の男女が一緒にいたらそりゃ何かあるよねぇ?」
ニヤニヤ笑いながら戸川くんに問いかける。
「凛に聞いてもさー、『えっ?いや?何もないよ?もごもご』みたいな感じで何も白状しないんだよねー。親友であるこの咲ちゃんが聞いているのに。もごもごしてる時点で絶対に何かあっただろお前ら」
咲は私の脇をペンでつつきながらニヤつく。
「ん?何か言った方が良い?」
戸川くんが笑いながら私の方を向く。
「いやいやいや。あ、ほら戸川くん、向こうでお友達が待ってるよ!」
そう言って少し離れた所で手を振っている戸川くんのお友達の方を指差す。
「あはは。鈴音さんは余り知られたくないみたいなので秘密にしておくね。悪いね鈴木さん。何かあったかはご想像にお任せするよ」
そう言って戸川くんは咲に手をひらひらっと振って友人達がいる方へ歩いていった。
「くっそー!何だよあいつ!余裕見せやがって!」
と、ムキムキしている咲をまぁまぁとなだめる。
「それにしても普段の戸川くんからは全く想像つかないよね、あのイケメンっぷりはさ。先週凛を迎えに来た時はあそこに居た全員が一瞬時が止まったもんね」
咲は腕を組みながら、先日の戸川くんがお迎えに来てくれた時の話をする。
「普段見てる戸川くんが全く違う人になって現れたから、ビックリし過ぎて思わず唖然としちゃったけどさ~。先輩達はあれだよな~、軽く馬鹿にしようとしていたら凄いのが来て何も言えなくなったよね。あの感じだと」
ニヤニヤしながら私の顔を見る。
先週、咲がやっている文化祭実行委員のお手伝いをした時、戸川くんがお兄さんの車で迎えに来てくれた。しかも格好良い時の戸川くんで。咲はその時にはじめて着飾った戸川くんを知ったのだ。
その次の日に咲と会った時は追求厳しかったなぁ……とあれこれ思い出す。
「ま、まぁ大学には今までと同じ様な感じで来るみたいだし、今後は大学内であの戸川くんを見る事はないと思うよ……多分」
なんとなく誤魔化して、茶化してくる咲をかわす。
「でもさ、わざわざダッサイ格好のままで大学来るなんて何か理由あるの?」
そう咲に聞かれ、うーんと少し下を向いてしまう。
「この前のデートの時に、高校2年生位まではお洒落をしていたんだけど3年に入ってからそう言うのを一切やめてしまった……と言う話は聞いたけど。それがどうしてとか細かい理由は聞いてないんだ」
「でも多分色々事情があるのだろうし、きっといつか教えてくれるかなって。それまでは気にしないことにしたんだ」
笑顔で咲に答える。
「くぅ~相変わらずあんたは良い子だねぇ。もし凛を泣かせるような事があったらあの隠れイケメン私がぶっ飛ばしてやんよ」
拳をグーにしてシュッシュとパンチを繰り出す咲に(実はもう大泣きしちゃったんですけどね)と心の中で私はつぶやいた。
午前の授業が終わり、私は咲と2人で大学の中庭に来ていた。
暑くもなく寒くもない丁度良い気候なので外でご飯を食べようか、と咲に誘われたのだ。
中庭のベンチを確保した後、咲は「じゃ、購買行ってくる!」と物凄いスピードでお昼ごはんを買いに行った。
私は家から持ってきたお弁当を膝の上に置いて咲を待つ。
と、そこに戸川くんが歩いてきた。
「あ、鈴音さんいたいた。あれ、1人?」
「ううん、咲と一緒。咲は今、購買にお昼ごはん買いに行ってる所」
「あ~、さっき爆走していく鈴木さんを見たよ。こっちには全く気がついていないみたいだったけど。本当に元気だねぇあの人」
あはは、と笑う戸川くん。
「でも戸川くん、どうしたの?わざわざ」
咲には悪いけど戸川くんと2人で話せてちょっと嬉しくなってしまい、少々トーンが上がってしまう。
「あ、うん。今度の日曜日なんだけど暇?もし暇だったらお出かけでもどう?と言うお誘い」
ニコっと笑う戸川くん。
「えっと、予定は全然大丈夫!。是非一緒にお出かけしたいな!私は戸川くんと一緒ならどこでも良いけど、行く場所とか決まってるのかな?」
そう戸川くんに問いかける。
「うん。もし鈴音さんが良ければ車でちょっと遠出してみようかな、と。鈴音さん車で長距離は平気?車酔いしやすい方?」
「ううん!全然大丈夫だよ!車ってこの前迎えに来てくれた時に乗っていたあの凄い車?」
「いやいや、あの車じゃないよ。あれは兄貴の趣味車でかなり古い年式の物なので、遠出したら途中で止まっちゃいそうだよ」
そう言って、からからと笑う
「良かった。じゃ当日はまた鈴音さん家の近くまで迎えに行くから宜しくね。詳しい時間は色々予定組めたらメッセージ送るよ」
そう言って私の頬に手を当てる。
それだけで私の心臓はばくんっと跳ね上がる。
さ、流石にここでキスはされないと思うけど戸川くんなら……ありえる……かも
そう思いつい目線を下に向けてしまう。
そんな風にしていると遠くから「あー!おい!」と大きな声を発しながら凄い勢いで走ってくる人がいる。
咲だ……
息をハァハァさせながら私達の前までやってくる。
「ぜぇぜぇ……おい、お前ら、なに大学内でいちゃいちゃしてるんだよ?あぁ?見せつけてんのか?あぁ?」
と中腰になり膝に手を当ててゼイゼイ言いながらこちらを睨んでくる。
「あはは。そんなんじゃないよ。大丈夫、鈴音さんと鈴木さんのお昼の邪魔はしないから。もう用事は済んだし」
そう言って私の方を向き、「じゃ、詳しい時間が決まったら連絡するね」と言って頬の手をスッと離す。
そして咲の方を向き、「じゃ、鈴木さん、またね。鈴音さんをよろしくね」
今度は会話の中に「も」を入れず、咲に手のひらをヒラヒラとする。
「あー、早く退散せい。私はこれから凛と仲良くランチするんじゃい!」
プリプリしながら咲は私の横に腰をかける。
「はいはい。じゃ鈴音さん、またね」
そう言って、軽く屈み顔を近づけてチュっと私の頬にキスをする。
「んがっ!」
と咲が言葉にならない声を発する。
私は顔が真っ赤になり下を向いてしまう。
「あ、これは見せつけね」
ニコッと爽やかな笑顔を咲の方に向け、戸川くんは校舎の方に歩いて行った。
「あんにゃろ~、ちょっと爽やかで顔が良い洒落者だからってぇぇ~んぎぎぎぎ」
と買ってきたパンをむぎゅううううと潰してしまう咲。
そんな咲を見て、「ま、まぁまぁ普段からあんな人だから」と話しかけつつ、日曜日の事を考えるとウキウキニヤニヤしてしまい、咲に「あん?」と睨まれてしまった。
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