はじめて出来た地味彼氏の戸川くん、実はワケありの元遊び人だった?

わーくほりっく

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第12話 戸川くんとはじめてのドライブ②

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 土曜の昼下がり、昼食を食べ終わり自室でくつろいでいるとピコン、とスマートフォンが鳴った。

通信アプリを開くと戸川くんからメッセージが来てる。


「わ、戸川くんからだ!」


と、思わず大きな声を出してしまい、慌ててメッセージを開く。


【鈴音さん、こんにちは!明日、少し早いのだけれども朝8時にお迎えに行って大丈夫かな?時期的にはまだ少し早いかも知れないけれど、紅葉を見に山の方へ行ってみようかなと。後、その近くにある神社とかにも】


 季節は10月の下旬、確かに紅葉には少し早いかも知れないけれどそこまで寒くもないし、お出かけするには丁度良い気候かも。
 月曜から毎日天気予報を見てるけど幸い明日は雨の確率も0%で、お天気もバッチリである。


思わずニヤニヤしながら戸川くんに返信する。


【うん。大丈夫!それじゃ明日は8時にいつも送ってもらうドラッグストアの近くに向かうね。あ、後、山の方だし歩きやすい服装と靴の方が良いかな?】


ピコンと返信が来る。


【そうだね。多少は歩くと思うので動きやすい格好の方が良いかな?明日、楽しみにしているよ!】


私もすぐさま返信する。


【私も楽しみにしてるね!明日はよろしくお願いいたします!】


そう返してムフーっとベッドに横たわる。


戸川くんとのデートは毎回色々な事が起きる。


 びっくりしたり、ドキドキしたり。今まで経験した事がなかった嫉妬心や独占欲と言ったものを感じ、自分自身の知らなかった一面をはじめて知った。


そして大人のキスも知った。


 明日はどんな事があるのだろう。
でもこの前決めたんだ、どんな事があっても戸川くんの事を好きでいようと。


よしっ!とひと声かけてベッドから起き上がる。


 そして持っている洋服を全部引っ張り出して、明日着て行く洋服を決める作業を始めた。









「うーんっ」と背伸びをした後、チラッと腕時計を見る。時刻は朝の7時45分を指していた。

 最初のデートの時は気合が入りすぎて待ち合わせ場所に早く着き過ぎたけど、今回は15分前に待ち合わせとなっているドラッグストア近くに到着した。


空を見ると予報通り、雲ひとつない青空である。


 昨日はちょっと緊張して寝付きが悪かったけど、ちゃんと睡眠をとる事は出来たし体調は万全である。


よし!今日は楽しむぞ!と心の中でつぶやく。


2、3分程待っただろうか。スマートフォンがピコンとなる。


届いた戸川くんからのメッセージを読む。


【おはよう鈴音さん!。今はドラッグストア手前の信号で青になってるのを待ってる所。曲がったらすぐだから、もう少ししたら待ち合わせ場所に到着するよ!。車はえんじ色の小さい車で、屋根が黒い幌になってるよ】


 そのメッセージを見てすぐ、1台のえんじ色をした車が交差点を曲がってこちらへ来るのが見えた。


「はぁ~、また可愛いやら格好良い車だなぁ」


私の前に車がピタッと止まって戸川くんが降りてくる。


「おはよう鈴音さん!ごめん待たせちゃったかな?」


 今日の戸川くんは比較的スポーティーな格好をしてるけど、あいも変わらず格好良い。


「ううん。私も戸川くんからメッセージを貰うほんのちょっと前に着いたばっかりだから大丈夫!」


そう笑顔で答える。


「でも凄い可愛い車だね。これは戸川くんの車?」


「うん。FIAT500と言うイタリアの車で現行モデルの中古なんだけどバイト代を貯めて買ったんだ。基本、僕しか乗らないんだけど、たまに帰ってくるお袋がね……『お前良い車乗ってんじゃん、貸せよ』って言って無断で乗って行ってしまうくらいかな。親父も兄貴も自分の車を持ってるし」


と、珍しく苦笑する。


「お、お母様ワイルドだね。そう言えば戸川くんのお母様にはまだお会い出来てないけど……お忙しいの?」


「あぁ、うん。何か忙しいみたいで色々飛び回ってるね。家のデザイン関係の仕事とは全く関係ない事やってるけど」


そう言いながら、車の助手席のドアを開けてくれる。


「さ、どーぞ。因みにこの車の助手席に女性を乗せるのは鈴音さんがはじめてです」


パチっと軽くウインクする。


そんな仕草にドキッとしてしまうと同時に何故か嬉しくなる。


 考えて見れば、戸川くんはいつも私のはじめてになってくれたけど、戸川くんのはじめてになるのはこれが最初かもしれない。


「お邪魔します!」


そう言って戸川くんの車に乗り込む。


(もっと戸川くんのはじめてをいっぱい作りたいな)


助手席に座りながら、私はこれから先の事を色々考える。


 じゃ、行こっか!と戸川くんも車に乗り込み、シートベルト締めて車を静かに発進させた。








そんな様子をたまたま通りかかった1人の女性がじっと見ていた。


「あれは……怜……?」


そうつぶやき、小さくなって行く車のテールランプを見つめる。


「……ふうん」


車の後ろ姿を見つめる目が、段々と厳しくなる。


その目にはやがて、メラメラとした憎しみの炎が宿っていた。
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