はじめて出来た地味彼氏の戸川くん、実はワケありの元遊び人だった?

わーくほりっく

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第13話 戸川くんとはじめてのドライブ③

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「わー綺麗!」

 街を出て高速道路に乗り、程良い速度で順調に走っていると段々と周りの景色も変わって行き、やがて薄っすらと紅葉が始まっている山々が車の窓の外に広がって来た。

 戸川くんの車はお兄さんの車と違いやや小さく2ドアである。
ただ助手席の広さは十分で、快適なドライブとなっていた。
 お兄さんの車も戸川くんの車もそうだけど、所謂MTマニュアル車と言うギアを手で変えて行くタイプで、私は市営バスでしか乗った経験がない。
 戸川くんが運転する車の助手席はとても快適で、車や運転の事を良く知らない私でも戸川くんの運転が上手いという事はわかる。


「戸川くんのお兄さんも、戸川くんも、ギアをがちゃがちゃする車なんだね」


何となく戸川くんに聞いてみる。


「あ、うん。僕も兄貴も高校に入ってすぐ位に中型オートバイの免許を取ってね。オートバイも自分でギアを変えていくタイプだから、自然と車もMTマニュアル車にしちゃったんだよね」


「わ、戸川くんオートバイにも乗っていたんだ。今は乗ってないの?」


「そうだねー。今は乗る事は無くなったかな。家の車庫の奥で埃を被ってるよ」


そう言って前を向きながら笑う。


 私、戸川くんの事何も知らないな……でも逆に考えればこれから戸川くんの事をいっぱい知る事が出来るという事でもある。
 これからもいっぱい戸川くんの事を教えて貰おう。


 そう思い、戸川くんの方を見た。
戸川くんは私の方をチラッとみて、ニコリと微笑む。


「鈴音さん、もうそろそろ中間地点のサービスエリアが見えて来るんだけど一度休憩しようか」


「うん!あ、そしたら私何か飲み物買ってくるね」


戸川くんに笑顔で伝える。


 ゆっくりと車は高速道路の側道にずれ、サービスエリアの中に入る。
車を色々とお店が入っている建物の近くに停め、2人共車から降りた。


「じゃ、鈴音さん、僕は先にお手洗い行ってくるね。鈴音さんはどうする?」


「あ、そしたら私は先に建物の中に入って飲み物を買ってくるね」


 そう言って一旦戸川くんと別行動を取り、建物の中に入って周りを見渡す。
 

 高速のサービスエリアの中に来たのは物凄い久しぶりだけど、以前とは随分変わったなーと辺りをキョロキョロ見渡す。
 チェーン店で有名なラーメン屋さんや丼物屋さん、お洒落で有名なカフェなども入っている。


「とりあえず、車の中で飲むお茶だけ買ってこようかな」


幸いレジも空いていて早々にお会計を終わらせる。


 さて、このままお土産とかを見て戸川くんを待つか、それとも外に出て戸川くんを待つかなと考えた結果、建物の入口付近で待つ事にした。


 入り口に向かってテクテクと歩いているとオートバイで来たグループであろうか?革のジャケットや派手な格好をした人達が向こうからこちらの方へ歩いて来る。

 ちょっと嫌だな、と思って通路の端っこを歩いていると脇道から子供がパッと出てきた。
 私はワッと言って少し驚いて、横に出る感じになってしまう。
 運の悪い事にそのオートバイのグループの1人と接触してしまう。


「いてっ」


と言ってぶつかってしまった男性がチラッとこっちを見る。


咄嗟に、あっすみません!と謝る私。


「痛ぇなぁ。怪我しちゃったよ」


と笑いながらその人は仲間内に話かける。


 私はどうしていいか分からず、「あ、あのすみませんでした」と言ってその場を離れようとすると


「えー謝っただけで行っちゃうのかよ」とぶつかってしまった人は嫌な笑みを浮かべている。


 困ったな。どうしよう……と買ったペットボトルのお茶をギュッと握って下を向いてると、後ろからいつもの飄々とした戸川くんの声が聞こえた。


「あれ、鈴音さん、どうしたの?」


「あっ、戸川くん!」


途端に心がほっと落ち着く


「あ、あの私の不注意でちょっとそちらの方にぶつかってしまって」


 そう言ってちらりと絡んできた男性を見て、再びすみませんでしたと頭を下げる。


「あ、そうなんだ。僕の彼女が失礼しました」


そう言って戸川くんも頭を下げる。


そして


「『怪我をしちゃった』と耳にしましたが、もしお怪我がある様なら救急車を呼びますけどどうします?」


とサラッと言う。


 そう言われた男性は顔を真っ赤にして「あ?お前舐めてんのかよ?」と戸川くんに詰め寄る。


「いえいえ」


 近くに詰め寄られても全く臆する事ない様子で、戸川くんは軽く笑った後


「お兄さん達、あそこに停まってるバイクのオーナーさんですよね。良いバイクですね。その格好ともバッチリ合ってますもんね」


そう言って窓の外を指差す戸川くん。


 窓越しに指さした方を見てみると……いわゆる暴走族の様なオートバイが停まっていた。


「救急車と警察、呼んでも全然良いですけど折角のツーリングなのに、直管やら何やらでバイク没収されたら勿体無いと思うんですけど。このまま普通にすみませんでしたで終われば、お兄さん達はツーリングを楽しめ、僕らはデートを楽しめる。それが一番良い解決策だと思いますけど?」


と笑顔で言う。


 戸川くんに笑顔でそう言われた男性は「ぐぬぬぬぬ」となりつつ睨んでいると、グループの中から1人の男性が出てきた。


「あー、わかったわかった。別にこっちは揉めるつもりも無いし、ちょっと悪ふざけしただけだから。な、お前もそうだろ?」


顔を真赤にしている男性に話しかける。


 そう話しかけられた男性は軽く頭を下げ、「チッ」と小さく舌打ちして後ろに引っ込む。
 どうやら後から出てきた男性はこのグループの中でも中心人物なのだろう。


「はいはい。じゃこれでお仕舞。さ、解散解散」


そう手をパンッと叩き仲間内に声をかける。


スッとグループが動き出した後、中心人物らしい人が戸川くんに声をかける。


「うちの仲間が悪かったね。そっちの彼女もごめんね。この後のデート楽しんでよ……で、1つ聞きたいんだけど君、元族?」


笑顔で戸川くんに聞いてくる。


「そんなんじゃ無いですよ。ごく普通の一般人ですよ」


戸川くんも笑顔で答える。


「ふーん。一般人はこんな対応出来ないんだけどね。まぁ良いや、じゃあね」


そう言って手を振って去っていく。


「はい。それでは。事故に気をつけて良きツーリングを」


そう言って頭を下げる。


 中心人物らしき男性は後ろ向きに手をヒラヒラとさせて、グループの方に戻っていった。




「鈴音さん、大丈夫だった?」


「あっ、うん。大丈夫。ごめんね戸川くん私のせいで怖い思いをさせて」


そう言う私にケラケラ笑いながら


「あはは、大丈夫大丈夫。別に向こうも本気じゃ無い感じだったし。後から出てきた男の人が言ってた様に、ちょっと悪ふざけしたくなったんでしょ?鈴音さんが可愛いから。僕も鈴音さんが絡まれている所を丁度見ちゃって、相手の人にちょっとイラッとしたから少し挑発しちゃったんでお互い様だけど」


「この前の文化祭準備の時もそうだったけど、鈴音さんは可愛いから変な虫が寄ってくるなー。今度からは目を離さない様にしよっと」


そう言ってニコッと笑いかけ、手をギュッと掴む。


「さっ、行こっか」


手を繋ぎながら車の方へ歩いて行く。


その最中、ぼそっと戸川くんが小さくつぶやいた。


「僕、意外と嫉妬深い、かも知れないね」


えっ、戸川くんが嫉妬?私に?


 怖い思いをしたばかりだと言うのにそんな思いはどこかへ吹っ飛んでしまい、じっと戸川くんを見つめた。

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