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sideユリウス
03.
※若干の残虐表現(ざまぁ展開)有
イネスが襲われた。
応接室で揶揄ってくる母に嫌々と付き合っていた時だ。薄汚れた糸目の男が「イネスを助けて下さい!」と飛び込んできたのは。
追いかけてきた学園長がそいつを追い出そうとするのを止め、俺は話を聞くことにした。どうやら、ルベルとやらが人を雇い、イネスを痛めつけようとしているらしい。
最近、何度も聞いた名前だ。
あのピンク頭……懲りない奴め。
つい先日も、俺が医務室に報告へ行っていた隙を狙って、イネスに暴力を振るおうとした所を止めたばかりだぞ。何度も拒絶し、俺はイネスだけを愛していると伝えたのに、全く理解していなかったようだ。
思えば、こいつは何度もイネスへ突っかかっていた。……早く処分してしまうべきだったか。
舌打ちをして立ち上がる俺に、母は「殺しはするなよ」と一言だけ告げた。再び舌打ちをし、糸目に「騙していたらただじゃおかない」と釘を刺してから、告げられた旧倉庫へ瞬間移動した。
そこで目にしたのは、二人の男に押さえつけられ、半裸にされているイネスの姿だった。媚薬でも盛られたのか、虚ろな目で荒い息をしている。
怒りで視界が赤く染まった。
汚ならしい手でイネスに触るな、クソモブ共が!
瞬時に奴らを吹き飛ばし、イネスに駆け寄る。俺の顔を見ると安堵の笑みを浮かべ、謝罪の言葉を残して意識を失った。イネスは何も悪くないというのに。
抱き寄せれば、意識がないのにも関わらず、びくびくと体を震わせていた。媚薬の効果の所為で、辛そうだ。すぐに解毒魔法と洗浄魔法をかけ、制服の上着をかけてやる。そして、俺のベッドへと移動させた。これで、イネスに何かされることはないだろう。
「……イネスに手を出すとは、よほど死にたいようだな」
ひとまず、床に転がっていた男二人の両腕を潰す。イネスに触れた手など、こいつらには不要だろ? 本当は灰に変えてやりたい所だが、殺すなと釘を刺されたから仕方ない。応接室へ転移させてやったので、後の処分は学園長にでも任せよう。
後は──こいつだ。扉付近で座り込むピンク頭を、睨み付ける。
「ひっ! 私は、何もしてません……! 男たちと倉庫で楽しもうとしていたあいつを、たまたま目撃して……」
「嘘を吐くな。お前が何を企んでいたかは、既に聞いている」
「なっ……! まさか、あの糸目……私を裏切ったのか! あんなに言い聞かせたのに!」
気付けば、そいつの首を右手で締め上げ、吊るし上げていた。苦しげに足をバタつかせ、暴れている。
「ゆ、ユリウスさ……ま。くる……し……! 何故……こんな、こと……」
「何故だと? 本当に分からないのか」
「だって……貴方は、私を……あい、して……」
「何度も言うが、俺はお前を愛してない。それと──」
いなくなる相手に隠す必要はないか。
殺しはしないが、俺はこいつを消すことを決めた。
掴んでいた手を放すと、ソレは床へと崩れ落ち、咳き込む。
「俺は元から記憶を失っていない。愛しいイネスを手に入れるため、あの状況を利用しただけだ」
「……嘘。嘘だ! ユリウス様が愛しているのはあいつじゃなく、私でしょう?!」
「何を根拠にそこまで妄想できるんだ? 俺はお前の名前すら、ろくに覚えてないのに」
「そ、そんな……。私の気を引くために、からかってます? だって、私たちあんなに仲が良かったじゃないですか!」
「……ああ、それは悪かったな」
「っ! 良かった、やはり冗談だったんですね……」
「モブ共が隣で何をしていようと、気に留めなかったのだから」
「……モブ?」
「お前は俺にとって、その他大勢の一人に過ぎない」
「嘘、嘘、嘘だ!! ユリウス様がこんなこと言う訳ない! その言葉はあの平凡に向けられる言葉なのに、どうして? だって私はユリウス様の恋人で、卒業したら都会で幸せになる筈なんだ!!」
錯乱し、髪をかきむしりながら叫ぶ姿は、滑稽でしかない。
「授業や食事を共にしていたのは……私と一緒にいる時間が楽しかったからでしょう!?」
「お前の姿を認知してなかった。どうせ勝手に隣の席へ座っていただけだろ?」
「わ、私の瞳が好きだと言った癖に!!」
「お前の瞳?」
「そうだ!!」
「……ああ。日に照らされたイネスの髪を思い出す色だったからな。好ましいと言ったのは事実だが、お前が好きとは一言も言ってない」
「あ、あぁ! そんなの、嘘だぁ!!」
俺は深く溜め息を吐いた。不用意な一言でここまで勘違いさせてしまったのは、確かに俺の落ち度だろう。
だからと言って、イネスに手を出した以上、こいつを許すつもりは毛頭ない。
「イネスの顔に免じて一度は見逃したが、危害を加えた以上、もう我慢する気はない」
そう言いきる俺に、ソレは体を震わせながら見上げてくる。
「都会で幸せになりたいと言ったな。その夢だけは、叶えてやる」
ソレ共々、俺は瞬間移動する。薄暗いとある酒場へと。
「店主はいるか?」
「はい、ここに」
暗がりから、モノクルをかけた男が姿を現す。こいつは冒険者ギルドで知り合った裏商人で、何度か世話になっている。
「おや、ユリウス様ではないですか。お久しゅうございます。本日はどのようなご用件で?」
「以前、ハーブデ男爵の件で少し困っていると言っていただろ。こいつを売ってやれ」
俺の言葉に、今まで黙って様子を窺っていたソレが顔を真っ青にする。
「……だ、だんしゃく? 売る?!」
「おお、それは助かります。何分、男爵様は一年と持たずに奥方様を壊されて……代わりを求めて何度もいらっしゃいますので」
「ユリウス様……一体、何の話を……」
「喜べ。お前が都会で幸せになれるよう、旦那を見つけてやった。絶倫の乱暴者でデブハゲといった醜い容姿だが、金はある。まあ、嫁に金を使う気があるかは知らんが」
「い、や……嫌ぁぁぁ!!」
逃げようと、ソレは扉へ走るが開かない。逃亡防止の魔法がかかっていることにも気付かず、必死に叫びながらドアノブを捻っている。
「なんで開かないんだ! 開けろよ! 今すぐここから出せっ!! ふざけるな、誰がそんな男と結婚なんてするものか!! 性奴隷になるのもごめんだ!! なんで私がこんな目にぃ!!」
「……黙れ」
耳障りな叫び声を、指を鳴らして封じた。声を失った喉を押さえ、混乱しているソレを無視し、店主に渡された契約書に署名をする。男は嬉々として受け取った。
「では、ありがたく」
「後は好きにしろ」
「毎度ありがとうございます」
足にすがりついてくるソレを蹴り飛ばし、俺は一人、学園へと戻る。
改めて学園長たちは事態を確認し、ピンク頭は学園から追放処分を下された。俺にバレて外へ逃げ出したと伝えれば、本人不在のまま粛々と決まり、イネスを襲っていた男二人も奴隷に落とされることになった。奴らの売り先は、俺が幾つか候補を挙げて良いことになっている。さて、どこに飛ばしてやろうか。
学園長は優秀な俺が卒業し、この学園の名を高めてくれることを期待している。辞められたら困るから、俺の機嫌を損ねないよう便宜を図ってくれているのだろう。
結果的に放置されていた母は、最後まで話を聞き届けてから帰った。落ち着いたらまた来ると告げて。正直、揶揄いに来るだけなら、もう来ないで欲しい。
俺は深く溜め息を吐いた。本来なら、この後イネスにご褒美をもらえる筈だったのに。
……だが、邪魔者は消えた。口元に笑みを浮かべ、俺はイネスの元へ移動した。
イネスが襲われた。
応接室で揶揄ってくる母に嫌々と付き合っていた時だ。薄汚れた糸目の男が「イネスを助けて下さい!」と飛び込んできたのは。
追いかけてきた学園長がそいつを追い出そうとするのを止め、俺は話を聞くことにした。どうやら、ルベルとやらが人を雇い、イネスを痛めつけようとしているらしい。
最近、何度も聞いた名前だ。
あのピンク頭……懲りない奴め。
つい先日も、俺が医務室に報告へ行っていた隙を狙って、イネスに暴力を振るおうとした所を止めたばかりだぞ。何度も拒絶し、俺はイネスだけを愛していると伝えたのに、全く理解していなかったようだ。
思えば、こいつは何度もイネスへ突っかかっていた。……早く処分してしまうべきだったか。
舌打ちをして立ち上がる俺に、母は「殺しはするなよ」と一言だけ告げた。再び舌打ちをし、糸目に「騙していたらただじゃおかない」と釘を刺してから、告げられた旧倉庫へ瞬間移動した。
そこで目にしたのは、二人の男に押さえつけられ、半裸にされているイネスの姿だった。媚薬でも盛られたのか、虚ろな目で荒い息をしている。
怒りで視界が赤く染まった。
汚ならしい手でイネスに触るな、クソモブ共が!
瞬時に奴らを吹き飛ばし、イネスに駆け寄る。俺の顔を見ると安堵の笑みを浮かべ、謝罪の言葉を残して意識を失った。イネスは何も悪くないというのに。
抱き寄せれば、意識がないのにも関わらず、びくびくと体を震わせていた。媚薬の効果の所為で、辛そうだ。すぐに解毒魔法と洗浄魔法をかけ、制服の上着をかけてやる。そして、俺のベッドへと移動させた。これで、イネスに何かされることはないだろう。
「……イネスに手を出すとは、よほど死にたいようだな」
ひとまず、床に転がっていた男二人の両腕を潰す。イネスに触れた手など、こいつらには不要だろ? 本当は灰に変えてやりたい所だが、殺すなと釘を刺されたから仕方ない。応接室へ転移させてやったので、後の処分は学園長にでも任せよう。
後は──こいつだ。扉付近で座り込むピンク頭を、睨み付ける。
「ひっ! 私は、何もしてません……! 男たちと倉庫で楽しもうとしていたあいつを、たまたま目撃して……」
「嘘を吐くな。お前が何を企んでいたかは、既に聞いている」
「なっ……! まさか、あの糸目……私を裏切ったのか! あんなに言い聞かせたのに!」
気付けば、そいつの首を右手で締め上げ、吊るし上げていた。苦しげに足をバタつかせ、暴れている。
「ゆ、ユリウスさ……ま。くる……し……! 何故……こんな、こと……」
「何故だと? 本当に分からないのか」
「だって……貴方は、私を……あい、して……」
「何度も言うが、俺はお前を愛してない。それと──」
いなくなる相手に隠す必要はないか。
殺しはしないが、俺はこいつを消すことを決めた。
掴んでいた手を放すと、ソレは床へと崩れ落ち、咳き込む。
「俺は元から記憶を失っていない。愛しいイネスを手に入れるため、あの状況を利用しただけだ」
「……嘘。嘘だ! ユリウス様が愛しているのはあいつじゃなく、私でしょう?!」
「何を根拠にそこまで妄想できるんだ? 俺はお前の名前すら、ろくに覚えてないのに」
「そ、そんな……。私の気を引くために、からかってます? だって、私たちあんなに仲が良かったじゃないですか!」
「……ああ、それは悪かったな」
「っ! 良かった、やはり冗談だったんですね……」
「モブ共が隣で何をしていようと、気に留めなかったのだから」
「……モブ?」
「お前は俺にとって、その他大勢の一人に過ぎない」
「嘘、嘘、嘘だ!! ユリウス様がこんなこと言う訳ない! その言葉はあの平凡に向けられる言葉なのに、どうして? だって私はユリウス様の恋人で、卒業したら都会で幸せになる筈なんだ!!」
錯乱し、髪をかきむしりながら叫ぶ姿は、滑稽でしかない。
「授業や食事を共にしていたのは……私と一緒にいる時間が楽しかったからでしょう!?」
「お前の姿を認知してなかった。どうせ勝手に隣の席へ座っていただけだろ?」
「わ、私の瞳が好きだと言った癖に!!」
「お前の瞳?」
「そうだ!!」
「……ああ。日に照らされたイネスの髪を思い出す色だったからな。好ましいと言ったのは事実だが、お前が好きとは一言も言ってない」
「あ、あぁ! そんなの、嘘だぁ!!」
俺は深く溜め息を吐いた。不用意な一言でここまで勘違いさせてしまったのは、確かに俺の落ち度だろう。
だからと言って、イネスに手を出した以上、こいつを許すつもりは毛頭ない。
「イネスの顔に免じて一度は見逃したが、危害を加えた以上、もう我慢する気はない」
そう言いきる俺に、ソレは体を震わせながら見上げてくる。
「都会で幸せになりたいと言ったな。その夢だけは、叶えてやる」
ソレ共々、俺は瞬間移動する。薄暗いとある酒場へと。
「店主はいるか?」
「はい、ここに」
暗がりから、モノクルをかけた男が姿を現す。こいつは冒険者ギルドで知り合った裏商人で、何度か世話になっている。
「おや、ユリウス様ではないですか。お久しゅうございます。本日はどのようなご用件で?」
「以前、ハーブデ男爵の件で少し困っていると言っていただろ。こいつを売ってやれ」
俺の言葉に、今まで黙って様子を窺っていたソレが顔を真っ青にする。
「……だ、だんしゃく? 売る?!」
「おお、それは助かります。何分、男爵様は一年と持たずに奥方様を壊されて……代わりを求めて何度もいらっしゃいますので」
「ユリウス様……一体、何の話を……」
「喜べ。お前が都会で幸せになれるよう、旦那を見つけてやった。絶倫の乱暴者でデブハゲといった醜い容姿だが、金はある。まあ、嫁に金を使う気があるかは知らんが」
「い、や……嫌ぁぁぁ!!」
逃げようと、ソレは扉へ走るが開かない。逃亡防止の魔法がかかっていることにも気付かず、必死に叫びながらドアノブを捻っている。
「なんで開かないんだ! 開けろよ! 今すぐここから出せっ!! ふざけるな、誰がそんな男と結婚なんてするものか!! 性奴隷になるのもごめんだ!! なんで私がこんな目にぃ!!」
「……黙れ」
耳障りな叫び声を、指を鳴らして封じた。声を失った喉を押さえ、混乱しているソレを無視し、店主に渡された契約書に署名をする。男は嬉々として受け取った。
「では、ありがたく」
「後は好きにしろ」
「毎度ありがとうございます」
足にすがりついてくるソレを蹴り飛ばし、俺は一人、学園へと戻る。
改めて学園長たちは事態を確認し、ピンク頭は学園から追放処分を下された。俺にバレて外へ逃げ出したと伝えれば、本人不在のまま粛々と決まり、イネスを襲っていた男二人も奴隷に落とされることになった。奴らの売り先は、俺が幾つか候補を挙げて良いことになっている。さて、どこに飛ばしてやろうか。
学園長は優秀な俺が卒業し、この学園の名を高めてくれることを期待している。辞められたら困るから、俺の機嫌を損ねないよう便宜を図ってくれているのだろう。
結果的に放置されていた母は、最後まで話を聞き届けてから帰った。落ち着いたらまた来ると告げて。正直、揶揄いに来るだけなら、もう来ないで欲しい。
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